25 彼の辿った道が
翌日、セフィロス一行は朝一番に村を出発した。ニブルの険しい山を歩いて魔晄炉に入る。そこにはモンスターがウヨウヨしていて、確かにこれでは作業員も無事には済まなかっただろうと一行は予測をつけた。
奥へ進むとやはりここにも伍番魔晄炉のように実験室が作られている。一通り調査しても魔晄炉そのものには異常は認められず、何かあるとするとここしか残っていなかった。
オリビアは実験室に繋がる扉を開けると、その重苦しい空気に押し潰されそうになった。淀んだ空気も魔晄特有の臭いもあまり好きになれないが、魔晄炉に併設される実験室特有の禍々しい雰囲気はもっと嫌だった。それぞれがオリビアを苛む度、嫌な予感がぐるぐると頭を過ぎってゆく。
オリビアよりも先に部屋に入っていたセフィロスは、既にザックスに指示を飛ばし始めている。オリビアは自分に「しっかりしろ」と発破をかけて、彼らに歩み寄った。
「ザックス。そのバルブを閉めてくれ」
「リョーカイ」
セフィロスに指示された通りに、ザックスはいくつかあるバルブのうち1つを閉めた。キュッキュッと小気味良い音を立ててバルブが閉まると、空気の臭いや雰囲気が少し軽くなる。そのバルブが緩んでいたために魔晄が外部へ漏れていて、魔晄炉のシステムエラーの原因になっていたのだ。
「だが、なぜ漏れた? 原因は何だ……?」
セフィロスはバルブを睨みつけるようにして考え始めた。オリビアも同じようにバルブを見つめる。
ふと、オリビアはバルブのある壁から視線を横にずらした。実験用のポッドがあり、そこに何かが中に入っていることに気付いたのだ。だが、視界の端に映っただけでは何だったかは分からない。オリビアは改めてポッドの中を覗くと、思わず息を飲んだ。
「何、これ……」
目を覆いたくなるような姿をした異型の何かが、ポッドの中で魔晄漬けになっていた。
ポッドの中身は生きているのか、そうでないのかもよく分からない。元は別の生き物であったはずだが、最早何だったかなど考えたくもなかった。
しかし、体型から推測することができた。そこへ思い至ると、オリビアは吐気すら催した。そして、そういうポッドがこの実験室にはいくつも並んでいる。その事に気が付くと、急に追い詰められたような気になってしまう。
「人、だったのだろうな」
セフィロスは狼狽えるオリビアに気付くと、彼女の肩にポンと手を置いた。オリビアがセフィロスを見上げると、彼は哀れみの眼差しでポッドを眺めていた。
もうモンスターと呼ばざるを得ないその姿を見てから、オリビアは初めて自分がタークスである事への疑問が湧き始めていた。
タークスであるが故に、これまで神羅がしてきたことが人に語れることばかりで無いことは嫌というほど知っている。特に、科学部門のしてきた事については、とても許容できないことばかりだ。それでも、タークスである事も、神羅の一員である事もオリビアには誇りだった。世界一の会社を支えている自負があった。けれど、それがグラグラと揺れているのを、俯瞰で見ているような感覚だ。
「大丈夫か、オリビア」
「ありがとう。もう、平気」
オリビアは慌てて表情を引き締めると、セフィロスはどこかホッとしたような顔をした。そして、今度は青い顔をしてポッドをのぞき込んでいるザックスに声をかける。
「おまえたち普通のソルジャーは魔晄を浴びた人間だ。一般人とは違うが、それでも人間なんだ」
セフィロスは他のポッドにも目をやった。やはりそほ中には、とても人間だったとは思えないほどの姿に成り果てた生き物が浮かんでいる。
「しかし、こいつらはなんだ? おまえたちとは比べものにならないほど高密度の魔晄に浸されている」
「これが、モンスター? 」
ザックスはポッドから顔を話してセフィロスへ視線を向けた。その硬い表情は、オリビアにはやや混乱しているように見えた。
セフィロスは静かに話を続ける。
「そうだ。モンスターを生みだしたのは神羅カンパニーの宝条だ」
オリビアは黙って聞いている。たが、もしも話しているのがセフィロスでなければ、その人物はオリビアによって口を封じられていただろう。タークスの権限を以て
黙らせる必要があるほどの、機密中の機密だった。
「魔晄のエネルギーが創りだす異形の生物
それがモンスターの正体」
「普通のソルジャーって? あんたは違うのか? 」
ピクリとセフィロスの肩が揺れた。今、最も彼の気にする所である。ザックスは無意識に、そして的確に核心を突いた。
「そうだな。そうかもしれない」
「……え? 」
あんぐりと口を開けたザックスは、「どういうことだ」と顔中で表現していた。
2020/08/24
ああ、ついにニブルヘイムの魔晄炉に来てしまった!でも救済するんだ!
情けないセフィロスになるかもしれないけど、そうしないと救われない気がする。
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