26 日の目を見ることはきっとない。
「そう。おまえはモンスターだ」
セフィロスたち三人が声のした方を振り向くと、いつの間にかジェネシスがそこにいた。彼は相変わらずニヒルな笑みを浮かべながら、斜に構えるような表情をしている。けれど、その姿はやつれ、皮膚や髪の色が所々白く抜け落ちていた。一見すると一気に歳を取ったかのようだが姿は若く、通常の加齢とは違う不自然さが目立つ。
もぬけの殻となっていた研究室だたっが、俄に騒がしくなってきた。
「セフィロス。おまえはジェノバ・プロジェクトが生みだした最高のモンスターだ」
「生きていたのか」
ジェネシスの容赦のない物言いにザックスが複雑そうな顔でそう呟くと、ジェネシスはフンと鼻で笑った。
「この状態を生きているというのならばな」
ジェネシスは忌々しそうに色の抜けた前髪を払った。「また死にぞこないか」とオリビアを一瞥するが、今のジェネシスにはこれまでのような気迫や覇気を感じられない。
オリビアはソルジャーの「劣化」を間近で見るのは始めてだった。以前ならジェネシスの一睨みでオリビアは生命の危険すら感じたものだが、今やまたひとつ神羅やタークスへの疑問が増えてしまうほどの衰えようだ。
「ジェノバ・プロジェクトとはなんだ? 」
ジェネシスに睨みつけられるオリビアを庇うようにして、セフィロスはジェネシスの前に立ちはだかった。だが、セフィロスもジェネシスの異変は気がかりで、今すぐ戦闘するような雰囲気ではない。
「ジェノバ・プロジェクトは かつて行われた実験の総称だ。ジェノバの細胞を使った実験のな」
ジェネシスの言葉に、セフィロスは怪訝な顔をした。ジェノバというのは彼にとって特別な名前だ。
「母の、細胞を? 」
特別であるが故に、セフィロスは状況が飲み込めない。ジェネシスは哀れみの目を向けると、セフィロスは真っ直ぐにジェネシスを見て次の言葉を待っている。
「哀れなセフィロス。おまえは母親に会ったことなどないはずだ。名前を聞かされていただけだろう? 」
ジェネシスは段々饒舌になって来た。情感たっぷりにナレーションを入れるかのような語り口だが、オリビアには嫌味なほど悪い展開が読めてしまった。これ以上はセフィロスに聞かせたくないのに、ジェネシスの口は止まらない。
「どんな姿を思い描いていたんだか知らないが──」
「ジェネシス! 」「やめて! 」
気付けばオリビアはザックスと共に叫んでいた。だが、そのくらいで止めるほどジェネシスもヤワではない。結局最後まで、本人の気の済むまで終わらなかった。
「ジェノバは2000年前の地層から発見されたモンスターだ」
セフィロスは目を見開いた。いつもの仏頂面を貼り付けてはいるが、さすがに引きつっている。
オリビアは恐る恐るセフィロスを見上げた。だが彼は自分の感情を受け止めるのに忙しく、オリビアの姿は目に入っていない。彼もある程度予測はしていたものの、セフィロスとてまさか本物のモンスターの細胞を持っていたとは思わなかった。
一方オリビアも、タークスの情報網を以てしてもここまでは知らない。セフィロスの顔を見ようと見上げたものの、どんな言葉をかけるべきか皆目わからなかった。
ワナワナと震えるセフィロスの様子がいたたまれなくて、オリビアはセフィロスの正面に回り込むと彼の手を握った。
「セフィロス。大丈夫。貴方は人間よ」
セフィロスはオリビアを見下ろす。ようやく目が合ったことに、オリビアはほっと胸を撫で下ろす。
「心があるでしょ。理性もあるわね。モンスターに、そんなものあるかしら」
セフィロスはハッとしたようにオリビアの瞳を見つめる。不安に飲まれるあまり、自分を失いかけていた事に気が付いた。
動揺を隠せないほどショックを受けていたセフィロスを全く気にもせず、ジェネシスはまた口を開いた。
「セフィロス。力を貸してくれ。俺の劣化が止まらないんだ」
ジェネシスはセフィロスに手を伸ばした。縋るように、弱々しく衰えた腕が、何とも悲しく映る。セフィロスはオリビアの手をゆっくりと離すと、ジェネシスに向き直った。ジェネシスはまた口を開く。
「ソルジャー・クラス1st、セフィロス! ジェノバ・プロジェクト・Gはアンジールを生み──俺のようなモンスターを作りだした。ジェノバ・プロジェクト・Sは──」
「S──もしかして……」
ザックスとオリビアは顔を見合わせる。ジェネシスの話が本当なら、そしてSが頭文字なのだとしたら、それは。
「失敗したあまたのプロジェクトを踏み台に作りだされた完璧なるモンスター」
「俺に何ができる」
ジェネシスの話しを遮ってセフィロスが問うた。幾分冷静さを取り戻したセフィロスは、低く唸るようだった。
「おまえには他者へのコピー能力がない。情報が拡散しない。つまり劣化が起こらないということだ。おまえの細胞をわけてくれ」
ジェネシスはそう言うと、また前髪をかきあげた。名高いソルジャーとして名を馳せた頃、この仕草で幾人ものファンを魅力してきた。だが、今となってはそれさえももの悲しい。
「君よ希え。命はぐくむ女神の贈り物を」
ジェネシスはLovelessを暗唱し始めた。日に幾度も幾度も諳んじられた詩は相変わらず彼によく馴染む。むしろ、取り憑かれているのかもしれなかった。
「おまえの言葉が俺をまどわせるための戯言か、それとも俺が探し求めた真実なのか」
セフィロスはじろりとジェネシスを睨みつけた。彼の愛刀のように鋭い目線がジェネシスを突き刺す。
「どちらにせよ──朽ち果てろ」
セフィロスが言い終わる前にジェネシスは火の玉を放った。ファイガである。劣化が進んでも、その高い魔力は健在だった。セフィロスがそれを氷の魔法・ブリザガで即座に相殺すると、それが戦闘開始の合図となった。狭い研究室に殺気が充満する。
「なるほど。さすがは完璧なるモンスター。
『獣たちの戦いが世に終わりをもたらす時 冥き空より女神が舞い降りる──光と闇の翼を広げ 至福へと導く贈り物と共に』」
そう言いうと、ジェネシスはまた魔法を発動する。けれどそれはセフィロスに届く前にザックスによって打ち消された。
セフィロスはその隙にオリビアを連れて脱出を図る。それを追おうとするジェネシスにザックスが切り込んだ。
アンジールに託された剣がジェネシスのレイピアと打ち合って火花を散らす。どうしてこうなったのだろう。ザックスはやり切れない思いでいっぱいだった。
2020/08/29
この辺は無印本編とはちょっと違うとこですよね。ccff7をしてたのもかれこれ10年くらい前です。え?10年?ええええ?
と、今思った次第です。早い…怖い…
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