FF-D D+S New!夢物語

27 だが、彼を知る者の心には


 魔晄炉から脱出してからのセフィロスはどうも表情が虚ろだ。ニブルの山道を下りながら、オリビアはそれが気掛かりでならない。セフィロスから生気は感じられるが覇気がなく、いつもの堂々とした彼からは想像もつかないくらいだ。
 時折現れるモンスターは問題なく凪払いながら進んでいるものの、セフィロスは完全に心ここにあらずといった風だ。彼にしては珍しく、ぼんやりとしていた。
 オリビアの少し先を行く大きな背中も、深い悲しみと動揺が滲むように不思議と今は小さく見える。
 ニブル特有のどんよりと曇った空によって空気は重く、オリビアまで鬱々とした気分が増すようだった。

 セフィロスはふと足を止めた。同じように立ち止まったオリビアの髪が風でなびく。深い谷から吹き上げる風は冷たい。オリビアは思わずぶるりと震えた。
 来た道を戻るだけなのに、村までの道のりがやたらと長く感じた。

「俺は、何者なんだろう」

 セフィロスはオリビアを振り替えると、いつになく不安そうな表情をしていた。誰もが焦がれてやまない世界の英雄セフィロスが、こんな顔をするなんて。彼のファンが見たら卒倒するかもしれない。いつも自信と実力に満ち溢れた英雄の姿は、いまはすっかり影を潜めてしまった。

「何者って、セフィロスよ」

 オリビアの返答に、セフィロスは虚を突かれたような顔をした。

「そういうことではない」
「じゃあどういうこと? モンスターって言って欲しいの? 違うでしょ? 」

 オリビアがそう言うと、セフィロスは黙ってしまった。

「セフィロスはセフィロスだもの。たとえジェネシスの話が本当だったとしても、今までのあなたの歴史は変わらない」

 オリビアはにっこり笑った。彼女とて、とても笑える気分ではない。だが無理に笑ってでも、セフィロスをこのままにはしておけなかった。

「わたしが知ってるセフィロスは、勇敢で頭の切れる人格者、有能な上官。の割には我儘で大きな子供みたいなところもある人間臭い人ね」

 セフィロスはポカンとしている。

「お前にはそう見えていたのか」
「あら、何度か言ったわよ。大きな子供ね、って」

 何かを思い出すように苦虫を潰したような顔をしたセフィロスに、オリビアは今度こそ本当に笑ってしまった。

「もう、そんな顔してたら英雄も形無しよ」

 セフィロスはふっと表情を緩める。それまで纏っていた張り詰めた緊張感も幾らか和らぎ、オリビアは思わずほっと息を洩らした。

「……ありがとう」

 セフィロスはそう言ってふわりと笑った。オリビアに「行くぞ」と告げると、また進行方向を向き直る。
 再び歩き始めたセフィロスから悲しい影はまだ消えない。けれど足取りは少し軽くなった。オリビアは複雑な思いで彼の後を追って歩き始めた。


 村に戻ってからというもの、セフィロスは村外れの屋敷に入り浸るようになった。その屋敷は村人からは神羅屋敷と呼ばれていて、古くからその場所に佇んでいる。
 かつては神羅の研究者が住み込みで研究をしていたという屋敷だ。しかし、研究の内容は勿論、どんな人物がいたかすら詳しく知る者は誰もいない。セフィロスはその屋敷で資料室を見付けてから、神羅ビルでそうしていたように再び昼夜問わず資料を読み漁るようになっていた。
 そして、いつものようにオリビアはセフィロスによって資料室に呼び出されていた。オリビアが屋敷の奥へ進み資料室の扉を開けると、いつもに増して紙類が山を成している。紙が部屋中に散乱していた。

 オリビアはセフィロスに近づくと、彼の後ろから見上げた。セフィロスは手に分厚いファイルを手に取り、立ったまま一心不乱に読んでいる。
 セフィロスはオリビアの視線に気付くと、顔だけ振り返った。そして思い詰めたような暗い目でじっとオリビアを見つめると、いっそう悲しい顔をする。あまりの絶望感に、オリビアはごくりと唾を飲み込んだ。

「ねえ」
「なんだ」
「怖いよ、セフィロス。どうしたの? 」

 セフィロスは暗い顔したまま目を瞑ると、頭を軽く左右に振った。

「ジェネシスの言っていた事は本当だった。全てここに書いてある。いくら本社を探しても見つからなかった訳だ。こんなところに隠してあったのだからな」

 オリビアは部屋中に読んだまま放置された紙やファイルの山をぐるりと見渡す。ビルの資料室でも多少散らかしてはいたが、こんなにも荒れていたことはなかった。

「やはり、俺は……」
「わたしのこと、まだ好き? 」

 オリビアはセフィロスの言葉を遮るようにそう言うと、セフィロスの目をじっと見つめる。けれど、セフィロスはそっと目を伏せてオリビアから顔を背けた。

「忘れてくれ。モンスターの相手など、お前にさせられな……」
「本当にあなたがモンスターだったとしても、わたしはここにいるわ」

 オリビアはぎゅっとセフィロスの背にしがみついた。全体重をかけてもぐらりとも揺れないほど逞しいのに、今は消えそうな蝋燭のように儚げだった。


2020/11/30
とんでもなくお久しぶりです。またまた読み直さないと忘れるレベルで更新できず。ここから良いとこなのに!そして誤字だらけ!なんてこった!




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