FF-D D+S New!夢物語

28 いつまでもその姿を


 セフィロスはゆるゆるとした緩慢な動きでオリビアの方へ向き直った。そして手にしていた部厚いファイルをオリビアに手渡す。オリビアはそれを受けとりながら読んでゆくと、そこにはかつてセフィロスに施された実験について事細かな記録が残されていた。

 かつて神羅は古代種と呼ばれる特殊な人間を「作り出す」為の研究をしていた。そして度重なる実験と相次ぐ失敗の末、ようやく生まれたのがセフィロスだった。
 実験は成功したと思われていた。しかし、後に大問題が発覚する。古代種だとされていた物が、実は彼らの住む星に害を成す未知の生物だった。彼らはそれを「厄災」と呼んでいた。つまりセフィロスは厄災の遺伝子を受け継いだということになる。

 セフィロスはジェノバと名付けられた「厄災」の細胞を胎児の頃に植え付けられた。その後細胞分裂を繰り返し、共生した状態で生まれている。
 セフィロスは古代種として生まれるはずが、実はとんでもないモンスターと融合させられた、ということになる。
 だが、セフィロスはその事を今日まで一切知らされずに生きてきた。かつてその実験の責任者であったガストに育てられていた時期もあったのにも関わらず、だ。

 項垂れて本棚に寄りかかると、セフィロスはじっと動かなくなってしまった。ぶつぶつと呟く言葉は聞き取りにくかったが、オリビアはそれを聞き漏らすまいと必死で拾った。

「なぜだ? ガスト博士……どうして教えてくれなかった? 何も言わずに居なくなったのはなぜだ……」
「ガスト博士……昔、失踪した博士だったわね。彼はあなたの実験の責任者。あなたは随分慕っていたのね……」

 セフィロスは何も答えない。今になって胎児期に非人道的な実験を施されていた真実を知った彼のショックは、オリビアには計り知れなかった。

「セフィロス」

 オリビアは堪らず、もう一度セフィロスを抱き締めようとした。だが、セフィロスはその手を咄嗟に払い除ける。
 オリビアが持っていたファイルは、ばさりと音を立てて床へ落ちた。古い紙の束が散ってゆくのを、オリビアは呆然と眺める。
 ファイルは落ち、先程までそこに収まっていた紙はほとんど床に散乱した。しかしそれを全く気にせずに、セフィロスはオリビアを引き剥がすようにして項垂れていた顔を上げた。

「止めておけと言っている」

 セフィロスは苦しげにそう言い、オリビアに詰め寄った。彼らの足元に落ちている資料だった紙は、既に踏まれて屑になっている。

「それが何を意味するのか分かって言っているのか」

 セフィロスは無表情でオリビアを見下ろした。

「どういう意味? セフィロスはセフィロスだと言ったでしょう」

 オリビアは負けるものかと視線をセフィロスの目に合わせる。敢えて逸らさずに、じっと目を見つめ返した。

「変わるさ。知ってしまったんだ」

 セフィロスは左手でオリビアの頬にかかった髪を一房掬い上げた。栗色の毛にちゅっと口づけると、セフィロスは切ない顔付きで髪から手を離した。

「俺はもう、神羅には居られない。忠犬は終わりだ」

 少しかがんだまま、セフィロスはオリビアを試すようにじっと見る。実は監視していたことすら見透かされているのではないかと思った程だ。

「お前に俺を殺せるのか? 俺の監視を命じられているんだろう」
「そんな、こと……」

 オリビアは既に息が詰まりそうだった。どこにも触られていないのに、目線だけで殺されると思ったのはジェネシス以来だ。

「いつから知っていたの」
「ふん。俺を誰だと思っている」

 驚くオリビアに、セフィロスは目もとを僅かに緩めた。してやったり、といった表情でオリビアを見下ろしている。

「タークス失格だな。だが、俺はそれも折り込み済みだった。好きだと言った気持ちも本当だったし、騙したわけでも泳がせていたわけでもない。安心しろ」

 何も言い返せずにワナワナと震えるオリビアを見て、セフィロスはさも可笑しそうに笑った。だがオリビアにしてみれば、ターゲットに恋をしたことで随分頭を悩ませたものだ。安心しろと言われても、それだけでは終われない。
 けれど、オリビアが何か言う前に、セフィロスは表情を消した。彼の纏う空気はさっと冷える。

「では、元気でな。ツォンには逃げられたとでも言っておけ。ソルジャー・クラス1stは、タークス一人で手に負える相手ではない」

 セフィロスは屈めていた腰を伸ばそうとした。だが、オリビアは咄嗟に彼の長い銀髪を掴む。そして、その勢いのまま自分の唇をセフィロスの唇に押し付けた。

「わたしも連れて行って」
「……何? 」

 セフィロスは信じられない思いでオリビアの瞳を覗き込む。エメラルドグリーンに映る自分は、困惑と期待の両方を隠しきれない顔をしていた。

「気持ち、本当なんでしょう? 任務は失敗。タークスも失格なんだし、責任取ってもらおうかしら」

 オリビアはそう言うと、携帯電話を取り出した。セフィロスはオリビアと携帯を見比べながら、張り詰めたような表情をする。

「これ、斬って。それか潰して。わたし、これでまた行方不明ね」

 オリビアはセフィロスに携帯を手渡すと、にっこり笑った。

2020/12/2
女は愛嬌なのか度胸なのか。わたしは男女もどっちも要ると思ってる。タークスならなおさら!笑 いや、度胸とはちょっと違うか。下調べとか入念にした上でのお仕事だろうしなあ。なんて。
命懸けの退社なんてどんなブラック企業やねん!!!



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