4 ザックス。
ツォンは眉間のシワを深くして、携帯電話を睨みつけていた。
先日、バノーラ村に派遣したオリビアとヘックからの定期連絡が途絶えている。ツォンが連絡しても、彼らからの反応はない。『たまたま連絡できなかった』の域を超え始めている事に、彼はジワジワと嫌な予兆を感じ始めていた。
ツォンはブリーフィングルームにいた。彼もまた、バノーラへ向かうのだ。だが彼と共に派遣される予定だったセフィロスが命令を拒否している。動こうとしない英雄のために、出発前から既に難航していた。
先にバノーラへ潜入した部下とも連絡が取れない事も重なり、ツォンは苛立ちと焦りとが混ざり合って胃に穴が開きそうな気分だった。
「ツォン、任務に関する資料は端末に送っておいたわよ……どうしたの? 」
イヴはパソコンからツォンに視線を移すと、ツォンは厳しい表情のまま彼女を振り向いた。彼は携帯をポケットにしまうと、並んで座るラザードとイヴのカウンターを挟んだ向かい側へ立つ。
「バノーラに派遣したスタッフから連絡が取れなくなった」
イヴは表情を強張らせ、じっとツォンを見つめた。バノーラで何かが起こっているのはほぼ間違いないだろうと唇を噛む。ラザードも腕を組んで少し考えると、ツォンを見上げた。
「そうか……予定を早めよう。セフィロスの説得はやめて、ザックスを投入する」
「ザックス? 」
ツォンは始めて聞く名に、また眉間にシワを寄せた。ここで名前が出るのだからソルジャーだろうとは思ったが、聞いても分からない程度の者でこの任務が務まるだろうかと疑念でいっぱいだ。
ツォンが口を何かを言おうとしたが、その前にイヴが喋り始めた。
「ほら、仔犬よ。前に話したでしょ。ウータイ戦争を終わらせたのはザックスなの。メディアも社内報も、セフィロス一色だったけどね」
イヴはニッコリ笑ってラザードに同意を求めた。
「まだセフィロスには及ばないものの、彼の実力は確かだ。安心して欲しい。それに、セフィロス本人がザックスを自分の代わりにと指名している」
ラザードもザックスに太鼓判を押した。それならばとツォンが納得すると、ラザードもホッと息をついた。
「イヴ、ザックスを呼んでくれないか。大至急だと言ってくれ」
「はい。承知しました」
イヴはデスクに備え付けられた電話でザックスを呼び出した。程なくして、ザックスがブリーフィングルームにやって来ると、彼は部屋に入るなりラザードに質問する。
「アンジールから何か? 」
「実家にも連絡はないそうだ」
ラザードの答えに、ザックスは分かりやすくガッカリした。彼に犬の耳としっぽが付いていたら、間違いなくしゅんと下がっているはずだ。
「な? 仔犬やろ?」
イヴがカウンターを挟んで隣に立っているツォンのスーツの裾を掴んで、クスクス笑いながら耳打ちする。
「なるほど」
ツォンはイヴの方へ身体を傾けつつ、ザックスのくるくると変わる表情を見ていた。
「おーい、聞こえてるぞ。誰が仔犬なんだよっ! 」
ザックスはイヴとツォンに腕組みをする。口調は怒った風だが、その実大して怒っているわけでもない。ただ、彼はアンジールを思い出してしょげていた。
「ごめんごめん。でも可愛いよ」
「可愛いって……せめてカッコイイとかないのかよー」
ザックスはがっくりと肩を落とした。だが、切り替えの早いザックスは、次の瞬間には呼ばれた理由が気になり始めている。
「あれ? んじゃ、何の用? 」
「新しい任務だ。今もって行方不明のソルジャー・クラス1stジェネシスの故郷へ行ってほしい」
「はい? 」
ザックスはぽかんとした顔になった。大きな目と口を開けたまま、じっとラザードを見ている。
「彼の両親から ジェネシスとは接触していないという報告を受けている。が、信用できない」
「なんで? 」
報告があるのに? と言いたげなザックスに、ラザードは補足してやる。
「親子だからな」
「ああ……」
そこまで言うと、ザックスもようやく理解した。
「念のためスタッフも派遣しておいたが、連絡が取れなくなった」
ラザードがさらに続けると、ザックスの表情がさっと変わった。事の大きさと任務の内容が、彼の中でようやく一致したのだ。
「何が起こっているのか調査してもらいたい。彼が同行する」
ラザードはイヴの隣に立っているツォンを紹介した。
「タークスのツォンだ」
ツォンは名乗ったが、ザックスは「タークス」の部分に反応した。それを聞いた瞬間にザックスの顔がまた変わった。困惑した表情で、ラザードとイヴ、ツォンを見比べる。
「これ、なんか暗ーい任務? 」
誰も返事をしなかった。ラザードは机に肘を付いて目を伏せ、イヴは既に別の仕事に取り掛かっている。
ツォンはさして気にもしない素振りでザックスの方へ歩み寄った。
「よろしくな」
ザックスはニッと笑った。
「単なる調査だろ? 楽勝」
ザックスは胸を張って応えた。だが、ツォンは涼しい顔でザックスに問いかける。
「どうかな。この任務は本来セフィロスが行くはずだった。つまり、それほど重要視されているということだ。甘く見ると失敗するぞ」
ザックスは「げ」と小さくもらし、急いで顔を引き締めた。けれど、同時に疑問も湧いた。
「セフィロスは? 」
「命令拒否、だそうだ」
ザックスは「えーっ!? 」と驚き、怒ったように唇を尖らせる。
「そんなのアリ? 甘やかしすぎなんじゃないの? 」
腰に手を当てて抗議するザックスに、ツォンは冷静に答えた。
「本人に言ってみるか? 」
「やめてっ! 」
拝むように手を合わせると、今度はツォンに上目遣いで縋るように頼んでいた。
2020/05/20
バノーラに派遣されたスタッフに便宜上めっちゃ適当に名前を付けたんだけど、どうもしっくりこない。
ま、タークスっぽくはないか……彼らのはコードネームなんかしら。
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