16 秘密
アリーはロザリスやイーストプールでのことをマーサとシドに話した。外にいる兵士に聞かれないように、こそこそと最低限の大きさの声でやり取りをする。
アリーはできるものならロザリアで生きる人たちへ何か支援がしたい。だが、アリーは今や皇家の人間である。アナベラが圧政を敷く以上、表立った活動は出来ない。それに、かつてロザリス城で仕えていたベアラー達の処遇も気掛かりである。
アリーが彼等を公式にザンブレクへ連れ帰る事自体は可能である。しかし、それが彼等の未来をより暗くするのは間違いなく、それはアリーの望むところではない。
聞けばシドは各地でベアラーを保護しているという。虐待されているベアラーを見つけ出しては助け出し、シドの隠れ家へ連れ帰っている。そして、マーサは裏でそれに協力しているのだ。
また、最近はマーサ自身も宿の事業の傍ら、石化の進んだベアラーを買い取る事を始めた。近くの修道院へ預けて彼等の最期を看取ってもらうようにしている。
マーサとシドの大喧嘩はまさにその保護を巡っての事だった。どのルートで帰るのが良いか、と言う話で互いに白熱してしまったと言った。
「イーストプールにそんなベアラーがいたのか。ならば、彼等も保護が必要だな」
「そうだね、特にあそこは太公派として目をつけられちまってる」
シドがマーサにそう言うと、マーサも賛成した。
「ぜひお願いします。申し訳ないけれど、今のわたしの立場ではどうにもできなくて」
アリーは話がまとまってほっとしている。マーサは頼もしくドンと胸を張った。
「もちろんです、アリー様。頼んだよ、シド」
マーサがそう言うと、シドはよしと頷いた。
「さあ、アリー様。そろそろお休みください。明日も長旅になるのでしょう」
「ええ、そうするわ。感謝します。マーサ、シド」
アリーは二人に頭を下げた。マーサは恐縮しきりだが、アリーはとてもありがたかった。
「恐らく、アリー様にはいずれロストウイング経由でお知らせできるでしょう。あの村では、ホワイトウィルム城にワインを卸しているはずですから」
そう言って、マーサはアリーに小さなブローチを見せた。
「明日、ご出立までにこれと同じ物を差し上げます。これを目印になさってください」
「分かったわ。何から何までありがとう」
アリーが頷くと、マーサはシドと連れ立って彼等が元いた部屋へ帰って行った。
明るく朝、アリーはオリフレムに向けて宿を出た。いつものように、マーサを筆頭に宿の者が総出でアリー一行を見送る。だが、その中にシドはいなかった。
アリーが自分で何かするわけではないし、実行するのはシドだ。だが、手配はできた。後はうまく行くように祈るだけである。
イーストプールを出た時よりも、アリーは晴々とした気分だった。
2023/08/19
マーサの信頼の証を手に入れた!
一応殿下夢のはずなのに、ずっとその他大勢のターンだった。もうそろそろ来ます。
FF-D D+S New!夢物語
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