12 最後の望み
私は小さな家の前に立っていた。ミシディアの村はずれにある、小高い丘の上。昔、私が住んでいた家だ。
ノックをしようと扉の前に移動すると、先に中から声をかけられた。
「ミンウだろう。久しいね。開いているからお入り。」
私は促されるままに、室内に入った。相変わらず散らかっている。部屋中のあちこちに本が散乱し、本が山のようにうず高く積み上げられた物が幾つもできている。部屋の端の方にある本の山の一つに、埋もれるようにして師匠は座っていた。
「お久しぶりです、師匠。」
「ああ。息災か。」
「ええ。師匠もお元気そうで、何よりです。」
「空いているところに座りな」と言い、師匠は台所に立った。きっとお茶を入れて下さるのだろう。空いている場所など見当たらないが、座れそうな場所が残っている椅子を見つけた。わたしはそこへ腰を下ろすことにした。
私のお茶好きは師匠の影響によるところが大きい。そして、リリーもまたその傾向にある。誰も血は繋がっていないのに、面白いこともあるものだ。
お茶を手に戻って来た師匠は、いきなり核心を突いた。
「それで、いつ登るんだい。」
「明日にでも。」
「そうかい。もうその時が来たんだね。早いもんだ。」
師匠はずず、と熱い茶を啜る。私から何も語らなくとも、全てはお見通しのようだ。
「覚悟はできています。」
「お前の弟子が追いかけて来ているようだね。もうすぐミシディアに着く頃だろう。」
「……はい。」
手の中のカップを覗く。茶に、リリーの顔が映った気がした。
「心残りなんだろう。その娘が。」
「……いいえ。別れは済ませてあります。それも覚悟のうちです。ただ……。」
私は話すのをためらった。来てしまったものの、果たしてこんな事まで師匠に頼っても良いものか。躊躇していると、師匠が先に切り出した。
「聞こう。お前はそのために来たんだろう。」
「もしも……いいえ、恐らく私は帰れません。ですから、リリーを、リリーを頼みます。彼女はまだ若いですが、腕は確かです。素直でいい娘です。私は、あの子を巻き込みたくはないのです。どうか、どうか、お願いしいたします。」
私は椅子から降り、一気に捲くし立てて深く頭を下げた。心残りも後悔もないが、リリーの事だけは気がかりだった。無理に眠らせてでも置いて来たつもりだが、少し前に彼女がアルテアを発った事は薄々感じていた。まさか、本当にここまでやって来るとは。
「仕方ないね。かわいい弟子の頼みだ、引き受けよう。お前は自分の役目だけを考えなさい。」
「ありがとう、ございます。」
私は再び、頭を下げた。
「……全く、お前といい、リリーとやらといい、どいつもこいつも世話が焼ける。師匠不孝な弟子だね。」
「すみません。」
「今に始まったことじゃないさね。すっかり慣れちまったよ。」
後は任せておきな、と師匠は笑った。
しばらく談笑して、私は師匠の家を辞した。外からもう一度、頭を下げた。師匠とも、これが今生の別れになるだろう。
全てが片付いた。あとは最期の役目を全うするだけだ。私は明日、ミシディアの塔へ向かう。全てを、懸けて。
20140820
師匠の存在は完全に捏造です
お茶の下りも捏造です
部屋が汚いのも捏造です
夢なのに、主人公が名前しか出てこない・・・・!
FF-D D+S m-ds New!夢物語
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