7 誰もいない部屋で
ミンウさまが出立なさってから、わたしは毎日忙しく過ごしていた。この頃は陛下の容態も安定しており、フリオニール達の活躍を喜んでいらっしゃる。
スコットさまも出歩ける程ではないけれど、なんとか起き上がれる程度には回復なさっていた。ご本人は早く戦線に復帰したいと仰るが、まだ当分無理だろう。
街の人たちも不安な日々を過ごしてはいるものの、少しずつ活気を取り戻しつつある。
ミンウ様か出立してから3週間ほどが過ぎた。けれど、未だお帰りにならない。
日中は溢れる仕事に追われ、嘆く暇などない。けれど夜になると急に寂しくてたまらなくなることがあった。
やり場のない思いを抱えているのはわたしだけではない。自分でしっかり立っていなければならないこともわかっている。何とかやし過ごせる日もあれば、どうにも落ち着かない時もある。
わたしはミンウさまのお部屋にいた。誰もいないのはわかっているけれど、ミンウさまの気配が残っているような気がしてほっとするのだ。そうして時折、自分の心を落ち着けている。掃除も兼ねて、と言い訳しながら。
わたしはミンウさまのベッドに腰掛けた。ふわりと舞うミンウさまの香りをすう、と吸い込み、胸に収める。
ミンウさまが好んで焚かれる香のに匂いかままだかすかに残っている。いつかフィンの街でたまたま見かけた舶来のその香は、ミシディアからはるばるやって来たものだった。迷わず買い求めるミンウ様が顔を綻ばせていたと、ふと思い出した。香りは記憶と繋がっている。
わたしは遂にベッドに身を預けて、目を閉じた。
思っていたよりも疲れていた。少し横になるだけのつもりが、寝転んでしまうともう動けない。わたしはあっさり眠ってしまった。
◇
「リリー、起きなさい。」
誰かに呼ばれて、わたしは目を覚ました。けれど、まだ夜だ。もう少し寝てもいいはずだ。夢だったのかと寝ようとしたら、また声が降ってきた。
「このままでは風邪をひいてしまう。せめて掛け布団も使いなさい。」
「んん、ん……? 」
「リリー。今、帰ったよ。」
「ミンウさま? あ、れ……? 」
いないはずだったミンウさまが、目の前でにっこり笑っている。わたしは状況を掴めずに混乱した。
「ふふっ。寝ぼけているな。」
「あ、ご、ごめんなさい。わたし、勝手に……。」
だんだん意識がはっきりしてきた。勝手に部屋にあがりこんだ上、寝床まで占領していたことを思い出す。恥ずかしさと罪悪感から、わたしはどうしていいかわからなくなった。
おろおろするわたしを見て、ミンウさまは声をあげて笑った。
「ははは、構わないよ。なかなか可愛いことをしてくれるではないか。それより、せっかく帰って来たというのに、お前は何も言ってくれないのかい? 」
それもそうだった。わたしは居住まいを正して、ミンウさまに向き直る。
「お帰りなさい。ミンウさま。」
「ああ、ただいま。変わりはないか。」
ミンウさまはあまり気にしていらっしゃらないようだけれど、わたしは全く気持ちが落ち着かなかった。
陛下とスコットさまのご容体や街の人たちの様子を報告し、今のところは心配ない旨を伝えた。ミンウ様はそうか、そうか、と満足そうにうなづいて、聞き終えると旅装を取り外し始めた。
お茶を入れようかとも思ったのだけれど、今日はもう遅いからと休むことになった。
ミンウさまが無事にお帰りになった。ミスリルも持ち帰れたそうだ。これで帝国に反撃できる。
わたしはすっかり目が冴えてしまったけれど、朝まではまだ長い。もう一度寝直そうと、わたしは自分の部屋に戻った。
この時、わたしにはまだわからなかった。ミンウさまが既にご自分の運命を、天命を知り、全うするお覚悟を決めていたなんて。
20140728
ミンウさまに優しく起こされたい願望をここに
ミンウさまって、寝起きよさそうな気がします
そして寝付きもよさそう
健康優良児だと思う
FF-D D+S m-ds New!夢物語
- 7 -
prev * next
しおりを挟む
MODORU