9 ノクターン
大戦艦の爆破には太陽の炎が有効だ。それはカシュオーン城の奥深くにあると言われている。
しかし帝国に侵略された際、スコットさまはお城を封印なさった。城の封印を解くには、女神のベルが必要だ。そして、その炎の在処はカシュオーン王家の方しか知らないという。
けれど、生憎スコットさまはまだ十分に回復していない。本人の意思に反して、現地へ行けるとはまるで思えなかった。また、弟君のゴードンさまに至っては、未だ行方不明のままだ。
スコットさまは気の毒なほど落ち込まれ、「申し訳ない」とずっと繰り返している。フリオニールたちは、先ずは女神のベルを探すべく、再びサラマンドへ旅立って行った。
ミンウさまは、先日お帰りになってからはアルテアに残り、陛下をはじめ傷付いた民衆の治療に当たられている。しかし、陛下の容態は思わしくない。ミンウさまも手を尽くしておられるが、今度ばかりはどうにもならないようだ。
そんな折、わたしはミンウさまとの同居を再開した。大戦艦の襲撃後、アルテアの人達がアジトへ大勢非難してきていた。手狭になってきたこともあるが、お互いにそれを望んだからでもある。
不安な毎日ではあるけれど、わたしは幸せだ。ミンウさまもわたしも、こうして生きているのだから。
夜眠る前のひと時をお話しして過ごすことが、近頃の楽しみの一つになっている。
「ふふ、なんだか久しぶりですね。」
「そうだな。お前が家を出て以来か。何だか不思議な気分だ。」
暖かいお茶を飲みながら、のんびりお話しをする。忙しかった一日のご褒美の時間だ。
そういえば子供の頃は、ミンウさまの膝の上がわたしの指定席だった。今はソファに二人並んで座っている。
ミンウさまはマスクもターバンも外し、ゆったりとした格好で寛いでいる。
ろうそくの炎がミンウさまの横顔をゆらゆらと照らす。それがなんとも神秘的で、わたしは思わずじっと見つめてしまう。視線に気付かれたミンウさまと目が合って、わたしははっと我に返った。慌てて話題を探して、誤魔化すように話しかける。
「ミンウさま。陛下は、どうすれば助かるのでしょうか。これからどう処置をすべきなのでしょう……。」
「陛下は精神的なダメージが深刻なのだ。こればかりはどうしようもない。」
「ミンウさまでも、どうにもなりませんか。」
「難しいな。心まで癒すことができたなら、お救いできるのかもしれないが。」
ミンウさまは目を伏せて、マグカップに口をつけた。どうにも出来ないことが、やるせなかった。 思わずため息が漏れる。
手許のお茶に映る自分の顔を、じっと眺めた。
「リリー、そう気を落とすな。できる限り、手を尽くそう。」
「……はい。」
ミンウさまはそっとわたしの肩を抱いた。その手は暖かく、心地いい。わたしもミンウさまに寄りかかってみる。ミンウさまはふわりと微笑み、しっかりと受け止めてくれた。
わたしは唐突に、この人が好きだと思った。昔、ヒルダさまに聞かれて「ミンウさまのような方が好きです」と答えたことがあった。けれど、そうじゃない。わたしは、他の誰でもないミンウさまが好きなんだ。
自覚すると、何だか急に恥ずかしくなってきた。わたしは恥ずかしさを必死で隠すようにお茶を飲み、話題を変えた。
「そういえば。ヒルダさまがシドの飛行船でフリオニール達を迎えに行きたいと仰ってましたね。」
「そうだったな。王女はいつも彼らにつらい任務を任せていることを気になさっているのだ。お優しい方だからね。」
戦いの真っ最中とはいえ、この平穏なひとときがわたしにはとても幸せだった。ミンウさまが側にいるだけで、わたしはこんなにも安心して過ごす事が出来る。ずっとこの時間が続けばいいと願った。
しかし、恐らく長くは続かないだろう。確信にもにた予感が、わたしの意識を支配する。いつからだろうか。ミンウさまを取り巻く気配の不穏さを、よりはっきりと感じるようになったのは。
ミンウさまは何も仰らない。だからわたしも言わない。けれど、大きな運命が動いているのは確かだった。
20140807
唐突に恋愛モード
もっと自然にしたかったけれど、わたしの技量ではできませんでした
あーらら
きっと主人公ちゃんは鈍い
そういうことにしておいてください
FF-D D+S m-ds New!夢物語
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