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11 貴族の街



 コーリンゲンで得た情報を元に、一行はジドールへと向かった。
 ジドールへは、山の麓をぐるりと回らならればならない。数日の間、ひたすら歩き続けている。エルは今にも根を上げそうだが、他の仲間たちはみんなピンピンしていた。

 切り株に腰かけて休憩している間も、エルは足が痛くて堪らない。なのに、他の仲間たちは実に健脚だった。
 エドガーは散歩と称して辺りを歩き回っているし、セリスはロックと剣の稽古を始めた。マッシュに至っては筋トレを初める始末だ。
 疲れきって動く気にもなれないエルは、それを信じられない思いで見ている。

 エルにとって、ここまでの旅で今が最もつらかった。足が棒のよう、とは良く言ったもので、既に膝が笑っている。足の裏も痛いし、マメも沢山できた。
 ようやく旅をすることに慣れたような気がしていたが、甘かった。こんなにも長く歩いたのは初めてだったし、装備も帝国から着てきた普段着のままだった。
 とにかく足が痛い。ケアルやポーションを使っても、痛みや小さな怪我は絶えない。

「おい、エル? 大丈夫か? 」

 マッシュが後ろからエルの肩をぽんと叩いた。心配そうにエルの顔を覗き込んで、隣にどっかりと腰をかけた。

「うん……」

 正直に辛いと言うべきか、もう少し頑張るべきか。エルが答え方に悩んでいると、何かの鳴き声が聞こえた。マッシュとエルは顔を見合わせる。
 二人が鳴き声の方を振り向くと、エドガーが黄色い多きな鳥に跨がって、颯爽と走って来た。

「あれは……チョコボじゃないか! 」

 そのチョコボは、ダチョウよりもふた回りほど大きかった。それが大柄なエドガーを乗せて軽やかに走っている。エドガーに首を撫でられると、気持ちよさそうに目を細めてクエっと鳴いた。
 エドガーがエルとマッシュの方へ近づいて来る。散歩の収穫があったので、エドガーはご機嫌だ。

「ちょうどモンスターから逃げていたのを見つけてね。気性も大人しそうだし、連れてきた」

 エドガーはチョコボからするりと降りると、今度はエルをひょいと担いだ。

「ひゃあっ。エ、エ、エドガー? 」

 エルをチョコボに乗せると、エドガーはウインクした。

「これで少しは楽になる。無理はせずに、一旦お休み、エル」

 そういうとエドガーはチョコボをうながして歩き始める。ロックとセリスにも声をかけ、一行はまた歩きだした。
 その後数日の野宿を経て、ようやくジドールに辿り着く事が出来た。

 世界で最も西に位置するジドールは、金持ちばかりが集まっている。住んでいる貴族達は階級意識が強く、自宅のあるエリアによっても優劣があった。街の北へ行くほど高級になり、それにつれて屋敷がだんだん大きく立派になっていく。

 聞き込みがてら、一行は街中を歩き回った。競売場に入ったのだが、今日は早仕舞いだと、早々に追い出されてしまった。
 競売を楽しむことはできなかったが、それなりの収穫はあった。魂を蘇らせる秘宝がベクタにあるらしい、という話を聞くことができたのだ。
 秘宝の話を聞いたとき、ロックはゴクリと唾を飲んだ。そして、それを見ていたセリスが不安そうな顔をするこを、エルはじっと見ていた。

 街の女性によると、光に包まれた女の子が北の山脈の方へ飛んで行ったのが見えたらしい。

「北の山脈といえば、ゾゾという街があったな」

 エドガーが腕組みをして言った。マッシュとロックももそれに答える。

「次はゾゾだな」
「ゾゾはならず者の街だって聴くぜ。ここで装備を整えておこうぜ」
「じゃあ、わたし、新しい服がほしい。この数日であちこち破れちゃって」

 エルは破れた袖を指差して言った。
 白いブラウスは袖が破れ、襟も少しほつれている。ピンク色のスカートも、本来なら足首近くまでの丈があったはずだった。だが、裾が所々切れている。右の膝においては丸見えになるくらいにボロボロだった。
 もともと、帝国からは着の身着のまま逃げてきていた。既に少し傷んではいたが、この旅で限界を迎えたようだ。

 一行は三組に別れて行動することにした。ロックとセリスは物資の調達、マッシュは宿の確保、そしてエドガーとエルは武器や防具の調達をしていた。
 それぞれ用事が済んだら街の一番北にあるアウザー家の屋敷で待ち合わせをしている。
 アウザーは芸術に目がない人物で、中でも絵画は一級品ばかりを揃えていた。下手な美術館よりも立派な品揃えなのに、無料で一般公開されている。それを見てから宿に入ろう、という算段だ。

「これはどうかな? エル、君によく似合うと思うが」
「ほんと?じゃあ、これにしようかな」
「よし。では、そちらのレディ、いいかな。これを頂こう。ここで着て帰るよから、包まなくてかまわないよ」

 エドガーが店員を呼び止め、代金を払った。エルは試着室でいそいそと着替えている。
 支払いが終わる頃、エルも着替えを終えて出てきた。
 エルは膝丈の白いワンピースに白いマントを羽織り、ふくらはぎまでの茶色いブーツの紐をキュッと締めた。

「エドガー、ありがとう。でも、本当に良かったの? 」
「もちろん。私は、レディの美しい姿と喜ぶ笑顔が見られればそれでいいんだよ」

 エドガーは爽やかにウインクをキメた。エルは、そういうものなの? と言い、もう一度お礼を言う。

「そういうものだよ。君さえ差し支えなければ、次はフィガロ一の仕立て屋で、純白のドレスを作ろう。ベールは長い方がいいだろうね。靴は……ん? 」

 ふと気が付くと、つい先ほどまで隣にいたエルがいない。どこに行ったかと回りを見回すと、前方の少し離れた場所から声がした。

「エドガー! ここ! チョコボ屋さんだって! 一頭250ギルらしいよ! 明日も乗っていい? むしろみんなで乗ろうよ! 」
「そ、そうだな、乗ろう。楽になるよ。は、はは……」

 口説きのテクニックはどうやら本格的に錆び付いたらしい、と若き国王は肩を落とす。そして、ひとりで喋っていた気恥ずかしさにじっと耐えた。

 エドガー達が屋敷に着くと、既に他の3人も着いていた。彼らが入り口に近づくと、セリスがそこにいた男性に声をかけられている。その男性によると、セリスはとある有名なオペラ女優にそっくりなのだそうだ。

 セリスとよく似た女優はマリアといった。彼女が出る演目は全てチケットが売り切れる。姿を表せば皆うっとりと注目し、歌えば大喝采を浴びるという、大人気女優である。
 セリスはほんのりと顔を赤らめ、照れたことを隠すように足早に奥へ入ってしまった。

 アウザー屋敷の中には、絵画以外の芸術品も多く飾られている。古い甲冑や時計などどれも価値のある素晴らしいものだった。
 エドガーとマッシュは、二人して品評に余念がない。中には独創的な抽象画もある。それを見たロックが「これなら、俺の方が上手いぜ。」などと言うと、セリスの鉄拳が彼にめり込んだ。
 エルは古い壺の絵を気に入り、引き込まれるように見つめている。奥へ進んで行くと、紫色のタコの絵を見つけた。それを見た双子達は、「どこかで見たような? 」と、首をひねっている。

 その日一行はジドールで一泊した。翌朝チョコボを借り、一行はソゾヘ向かう。


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