12 やっと見つけた
一行はゾゾにいた。雨の止むことのないこの街は、何時も薄暗くじめじめしている。
エルは不快で仕方がなかった。せっかくジドールで新しい服を買ってもらったのに、ドロドロに汚してしまいそうで気が気ではない。
ビルを登り、街をうろつく嘘つきどもを蹴散らす。ビルからビルへと飛び移り、ようやくティナと思しき少女を見つけることができた。
ティナはとある建物の最上階で、ベッドに寝かされていた。ナルシェで幻獣と対峙した姿のまま、ピンク色に淡く光っている。セリスが近寄ってティナの名前を呼んだ。
「ウ……クゥルルル……」
「ティナ? 」
まるで動物のような返事に驚きながらも、エドガーもティナに呼びかける。すると、どこからともなくどろんと人が現れて、皆に声をかけた。
「怯えているのじゃよ」
一行が振り返ると、ヒゲを長く伸ばした老人が立っていた。入り口とは反対方向にいるその人は何処から入ってきたのだろうかと、一同は首を傾げた。
エドガーが老人に問いかける。
「あなたは? 」
「お主等は、この娘の仲間か? 」
エドガーは老人の問いには答えず、更に問いかけた。
「ティナは大丈夫なのか? 」
「ティナと言う名じゃったか……ティナ? はて」
何か思い当たる節があるのか、老人は唸りながら首を捻った。彼が思い出そうとしていると、ティナは突然暴れ始める。部屋中を飛び回り、苦しそうにもがく。
「この娘は、慣れない力を使ったために戸惑っておるだけしゃ。命に別状はない。ただ、自分の存在に不安を抱きはじめておる。暴れているのを見つけ、ワシがここへ呼び寄せた。ワシの魔導の力の呼びかけに、この娘が反応したのだ」
「あなたは? 」
誰ともなしに問うた。
「わしはラムウ。幻獣ラムウ」
それを聞いたロックが驚いて聞き返す。
「幻獣だって? 別世界の生き物なんじゃなかったのか? 」
「昔は一緒に暮らしていた。しかし、それも魔大戦までのこと。幻獣と人間は、相容れぬ者」
「でも、あなたは今、ここで暮らしている」
エドガーがそう言うと、ラムウはさらに言った。
「わしはたまたま人間の姿に近かったから、と言うだけのことだ。幻獣だと知られずにすむしな」
「なぜ、隠すのです。幻獣であることを」
ラムウは、ここに移り住むまでの経緯を語った。そもそも魔大戦がどのような戦いであったか、というところから話は始まる。
魔大戦は、幻獣と、幻獣から力を取り出して魔導師となった人間との戦いだった。そこで幻獣たちは、再び力を取られることを恐れて幻獣界に結界を張り、移り住んだ。
しかし、20年前のある日、ガストラ帝国が幻獣狩りに幻獣界に乗り込んできた。その際、多くの幻獣が帝国に捕らわれ、今でもその幻獣は力を奪われ続けている。ラムウは危うく難を逃れ、ここで隠れていると言った。
「ねえ、マッシュ。ちょっと手伝って」
エルがマッシュに声をかけた。セリスと一緒にティナをベッドに戻そうとしたが、思いの外重かったのだ。彼は何なくティナを持ち上げ、ベッドに寝かせた。
「少し落ち着いたようだな」
ティナを見て、ラムウが言った。
「ティナは、幻獣なの? 」
エルは心配そうに、ラムウに聞いた。
「いや、我々とは少し違う」
「苦しそうね……」
セリスが、ティナの汗を拭ってやりながら呟いた。
「帝国の研究所にいる仲間なら、ティナを救ってやれるかもしれん」
「帝国、か」
ロックが神妙な顔で言った。
「この娘が自分のことをはっきりと悟ったとき、不安は消えるだろう」
「研究所……」
エルは不安そうに呟くと、ラムウがエルに近寄ってきた。エルははっとしてラムウを見て、顔を強ばらせる。ナルシェの時のように、急に襲われたりはしないだろうかと不安が過る。
「はて、お前さんは……? セイレーンとは、どういう繋がりかな? 」
エルはきょとんとして、ラムウに問い返す。
「セイレーン? 研究所で聞いた気がするような……? 」
「お前さん、研究所にいたのか。本当にセイレーンとは関係ないのか? 」
ラムウはずいと身を乗り出した。エルも思わず身を堅くする。
「知らない。どうして? 」
「セイレーンを、お前さんから感じるのだよ。我々ともティナとも少し違うが、確かにセイレーンだ」
ラムウは長い顎髭を撫でながら目を細めた。穏やかな表情で、エルを眺めている。
エルはナルシェの時のように攻撃されなかったことに安堵した。
「わたしにはわからないわ。でも、ナルシェにいた氷漬けの幻獣がわたしを見てすごく怒っていたの。もしかして、そのセイレーンに関係あるのかしら」
「もし、セイレーンに会うことがあればよろしく言っておいてくれ」
そう言うと、ラムウは眩い光を放ち始めた。
「この魔石は、帝国から逃げるときに犠牲になった仲間たちだ。お前たちに託そう」
石が3つふわりと浮いて、突然一行の前に現れた。
「これは……? 」
エドガーは息を飲んだ。目の前に浮いている石から放たれる何かが、何やら特別である事は彼にも分かる。魔法の心得はからきしでも、明らかな異質の力を感じていた。
「ガストラのやり方は間違っている。幻獣の力は無理やり取り出したところで本来の力は発揮されん。死した後、魔導の力のみを残したのがその魔石じゃ」
ラムウの体が更に強く光る。ロックは目を白黒させてラムウを見つめた。
「じいさん、何を……? 」
「幻獣の力は、魔石化してこそ発揮されるのだ。自ら魔石となり、お前たちの力になろう」
それまでよりも一層強く光った後、ラムウは魔石と化した。他の3つの魔石と共に、淡く光りを放ちながらふわふわと宙に浮いていた。
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