13 無粋な結婚願望
一行は、ゾゾからジドールに戻った。帝国に侵入するための手立てはないかと情報を探すためだ。
帝国は、今一行がいる大陸とは別の大陸に位置している。これまでのように徒歩やチョコボで行くのは無理だ。
船で海を渡る事はできるが、何ヶ月もかかってしまう。できれば今すぐにでも乗り込みたい今、もっと速く行ける手段が欲しい。
ティナはまだ目覚める気配はなく、今もゾゾで眠っている。無理に起こすことも憚られ、そのまましばらく寝かせておくことになった。
ジドールに着くと、先ずはアウザーの屋敷に寄った。
アウザーの屋敷では丁度来客中で、何でもオペラ座から人が来ているという。その客はダンチョーといった。彼は今、かなり深く悩んでいる。
悩みすぎて酒に溺れ、昼間だと言うのに近寄るだけで酒臭い。相当な量を飲んでいる事は見て取れた。困り果てたダンチョーは、いくら飲んでも酔った気がしないほど悩んでいるらしいと、街では専らの噂だった。
一行が屋敷に入ると、丁度帰ろうとしていたダンチョーとすれ違った。
「あ! ……マリア? 」
ダンチョーは、すれ違いざまにセリスを呼び止めた。彼女を見て心底驚いたような顔をしているが、彼はセリスをマリアと呼んだ。そして、通り過ぎる足を止めて、セリスの前へ出る。
「え? わ、わたし? 」
状況を飲み込めないセリスは困惑している。けれどダンチョーはセリスの様子は意に解さないようで、詰め寄るように近づいて行く。
セリスが人違いだと分かると、ダンチョーはセリスが彼の楽団の女優に似ていたと弁解した。ダンチョーはセリスに謝ルト、困った困ったとため息を零しながら去って行った。
ダンチョーの背中を見送った後、ロックがふと足元を見ると封筒が落ちていた。彼はすかさず拾い上げる。
「ん? 何だ、これは」
見るからに上質なそれは白地の紙に金色で縁取られていて、貴族が好んで使うような華美なものだった。
既に開封してあるが、封蝋が綺麗に残っている。その封蝋は「S」に蔓草模様でアレンジを加えられた洒落たものだった。
ロックは封筒を開けて、中を確認する。
「手紙……? これ、ダンチョーさんのかしら」
エルとマッシュがロックの脇から手紙を眺めていると、アウザーが彼らに声を掛けてきた。
アウザーによると、セッツァーという男ががダンチョーにその手紙を寄越してからというもの、彼の悩みは日に日に深まっているということだ。ダンチョーは困り果ててた末に、毎夜酔い潰れるようになってしまった。
一行は顔を見合わせ、ダンチョーの様子を思い返す。尋常でない様子を心配し、ロックは手紙を開いて読み始めた。
「どれどれ……」
『お宅のマリア
嫁さんにするからさらいに行くぜ
さすらいのギャンブラー』
「……なんだ? このさすらいとかいう奴は」
「結婚の申し込みにしては無粋だな」
ロックとエドガーは大げさに肩を竦める。
「世界で唯一の飛空挺を持ってるセッツァーさ。知らないの? 」
アウザーはロックとエドガーのセリフに「信じられない」といった顔で、セッツァーについて解説する。
セッツァーという男は正義や悪などというものとは関係のない世界に生きる男だ。ギャンブル場の入った世界で唯一の飛空艇・ブラックジャック号のオーナーでもある。ジドール界隈ではそれなりに名の知れた人物だった。
「飛空挺なら、帝国に乗り込める」
セリスが呟くと、ロックも頷いた。
「会いにいこう、セッツァーに」
「よし、じゃあ次はオペラ座だな! 」
マッシュがニッと笑った。
◇
煌びやかなインテリアやふかふかの絨毯に、エルは心踊るような気分だ。初めて足を踏み入れたその場所は、何処へ入っても美しく、豪奢な装飾品で溢れていた。
ダンチョーは直ぐに見つかった。入り口付近でぶつぶつ言いながらウロウロ落ち着かない。エドガーが、右往左往するダンチョーを呼び止めた。
「あ! この間の! 」
ダンチョーはすぐに気づき、一行に向かって歩いて来る。彼が着くのも待ちきれず、ロックはうずうずした様子で話を切り出した。
「聞いたぜ。セッツァーが、マリアをさらいに来るんだろう? 」
「芝居が盛り上がった頃に来るだろう。奴は派手好きだからな」
「よし、出てきた所をとっ捕まえて……」
マッシュがパンと拳を打ち鳴らしながら言うが、ダンチョーはますます青ざめた。
「それはやめてくれ! 舞台を台無しにしたら、私の首が飛ぶんだ」
「じゃあ、お手上げじゃない! 」
ダンチョーは頭を抱えてため息をつき、セリスも思わず声を上げてしまった。
「さらわせればいいさ」
ロックはさも当然であるかのようにサラリと言った。ダンチョーはうんざりした顔でロックを見る。
「いや、だから……」
「ロック。なんて事を言うんだ」
ダンチョーはがっくりと肩を落とし、エドガーは眉をひそめる。
「囮さ。わざとさらわせてセッツァーの後を追い、あわよくば飛空挺をぶんどる」
「だめだ! マリアに何かあったらどうしてくれるんだ」
ダンチョーは思わず声を荒げた。顔を引き攣らせ、髭のあたりをピクピクさせている。
「だから囮だよ、囮。マリアさんはどこか安全な場所にでも隠れてて貰う。」
「し、しかし……」
自信満々のロックに、ダンチョーは頭を抱えた。けれどロックには違う考えがあった。
「ロック……もしかして……」
「そうだ、エル。よくわかったな」
ロックはエルに目配せしてニカッと笑い、ダンチョーにもう一押しする。
「似てるんだろう? セリスとマリアは」
一同の視線が、一気にセリスに集まった。セリスは、はっとした表情をして慌て始める。
「わ、わわわ、私? 」
「セリスを代わりにさらわせて、私たちが後を追いかける! そうでしょ? ロック! 」
「そりゃ名案だ! 」
ダンチョーは手を打って喜び、エルもロックの閃きに賞賛の眼差しを贈る。しかし、当のセリスは慌てふためき始めた。
「ななな何を言ってるの! わたしは元将軍よ! そんなチャラチャラしたこと、できるわけがないでしょ! 」
セリスは耳まで真っ赤に染めて近くの小部屋に隠れてしまった。セリスは否定は即座にしたものの、中から発声練習する声が聞こえ始める。
エルは扉に耳を着けて、セリスの声を確認すると、皆に微笑んだ。
「大丈夫。セリス、やる気みたい。かわいい人だね」
「よし、セリスを名女優に仕立て上げるぞ。そうだな、髪はジドールのあの美容師に頼んではとうかな。化粧品は……あの店がいいだろう。それから……」
「おお、いいですな。実は我々も行き着けで……」
エドガーの目がキラリと光り、ダンチョーもやる気に燃えている。公演まで数日間、セリスの猛特訓が始まるのであった。
20140919
それにしてもあの手紙、子供の頃はそんなに深く考えなかったからいいんだけど、今思うと相当横暴ですよね
さらわられる方はたまったもんじゃありません
セッツァーはいい男だからまだ救いはあるかも知れないけれど、荒くれには違いない
だからやっぱりまともな生活は期待出来なさそうです
ぶっ飛んでるなあ、セッツァー氏
考察にも書いたけど、彼には結婚生活が想像できない
同棲生活ならしょっちゅうやってそうだけど
でもお金持ちそうだから、なんとかなるかな?
お手伝いさん雇うとか・・・?
あれ、じゃあ結構いい暮らし?
やー、でもなー所帯染みたセッツァーって、丸くなったセッツァーって、セッツァーじゃない気がする
20年経っても、ワルいおじさんであってほしい
ちょいワルなんぞぬるいわ!
なんてね
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