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14 むかつくタコ野郎



 公演を間近に控えたセリスはらダンチョーとマリア本人による稽古に打ち込んだ。エドガーからも貴婦人たる振る舞いをみっちりと叩き込まれ、満を持して公演の日を迎えることとなった。
 劇場には大勢の客が押し寄せている。満員御礼と言ったところだ。パンフレットは今日の販売分は既に完売である。それだけでもマリアの人気ぶりが伺える。
 一行は客席に待機し、セッツァーの来襲を待つことにした。

 やがて幕が上がり、いよいよ芝居が始まった。歌声もオーケストラもよく響き、エドガーは久しぶりのオペラ鑑賞に浸り始めている。
 しかし、開演前にトイレに行ったエルは未だ戻らず、マッシュは欠伸をし、ロックは何故か大汗をかいていた。仲間達の自由な様子にエドガーは苦笑するが、同時に「彼ららしいな」と、親しみも感じている。
 いよいよセリスの出番が近づいてきたころ、ロックは更にそわそわして落ち着きがない。見かねたエドガーは、ロックに声をかけた。

「楽屋に行ってやりなよ。きっと、彼女も緊張しているだろうからね」
「お、おう。じゃあ、ちょっと行ってくるよ。ありがとな。エドガー」

 そう言って、ロックはそそくさと席を立ち、客席から出て行った。
 エドガーはクスリと笑い、楽しそうに隣の席のマッシュを振り返る。マッシュは「いい仕事したな」と言わんばかりに満面の笑みを浮かべ、親指を立ててエドガーに応えた。
 しかし、マッシュ自身はあまりオペラに興味がない。「なんでみんな歌っているんだ? 」などと言い、相変わらず眠そうな顔をしていた。

 一方、エルもセリスの楽屋へ向かっていた。
 エルは、本当は幕が上がる前にトイレを済ませようとしていた。けれど、初めての場所で勝手も分からず、結局出遅れてしまった。
 ようやくトイレに辿り着いたものの長蛇の列に並ぶことになり、開演には間に合わなかった。
 がっくりしたエルだが、どうせ遅れたのならセリスの楽屋に寄って彼女を元気付けて来ようと思いつく。
 楽屋の前に着き、エルはノブに手をかける。回そうとしたその時、中から声が聞こえて来た。

「わたしは、あの人の変わりなの? 」
「……似合ってるぜ、そのリボン」

 エルははっとしてノブをから手を離した。どうやら、楽屋訪問はロックに先を越されてしまったらしい。

 エルはドキドキし始めていた。会話の内容から、男女の会話だったことはエルにも分かる。まさか立ち聞きする事になるとは思いもせず、心臓が飛び出しそうな思いだ。
 これ以上聞いてはいけない。エルは慌てて踵を返し、客席に戻ろうと歩き始めた。

 エルがロビーに出ると、絨毯の上に何かが落ちている。そっと拾い上げると、それは封筒だった。
 あまり質のよい紙ではなく、ペラペラとして向こうが見えそうなほど薄い。扱いも粗雑だったようで、端が折れている上に所々にシワが出来ている。さらに封もきちんと出来ておらず、拾い上げた拍子に中から便箋が出てしまった。
 エルは不審がって、中を確認する。

『お前ら気にくわんからオペラ邪魔してやるけんね オルトロス』

 エルはその手紙を握りしめ、慌てて客席に走った。エルはオルトロスのことは直接知らないが、マッシュから話には聞いていた。
 ふと、セリスの歌声とそれに対する喝采が聞こえた。エルはオペラなど知らない。けれど、俄仕込みとは思えない程の完成度なのは分かる。エルはセリスを誇らしく思った。

「エドガー! マッシュ! 大変! 前に言ってたムカつくタコ野郎って、これじゃない? 」

 エルはヒソヒソと、けれどなるべく大声で報告し、一番近い場所にいたエドガーに手紙を渡した。それをマッシュも覗き込むと、二人の顔色が変わった。

「なんだって!? ああ、コイツだよ。あの野郎、また出やがったのか」
「全くだ。しかし、川といい、ここといい。ヤツはタコのくせに海でなくとも活動できるのか」

 マッシュは息巻いて拳を握りしめ、エドガーは呆れていた。そこへ、楽屋にいたロックも戻って来る。

「まずいぞ。ダンチョーに知らせないと! 」

 一行は急いでダンチョーに知らせ、オルトロスを探した。

 彼らが見つけたとき、オルトロスは屋根裏に潜んでいた。重い金属の塊を舞台に落とそうと躍起になっている。

「行くぞ。邪魔をさせるわけにはいかない」

 そう言ってロックはすいすいと屋根裏の梁を越えて行き、邪魔になるモンスターをどんどん倒してゆく。
 普段、率先してモンスターを蹴散らすのはマッシュの力技かエドガーの機械だ。ロックは敵を撹乱したり、盗んだり、後方支援に回る方が多かった。なのに、一人最前線に立ってサクサク進んでゆく。
 確かに屋根裏は狭い、しかしこの張り切り様も不思議だった。ロック以外の仲間は揃って首を傾げる。

「アイツ、どうしたんだろうな……? 」
 
 マッシュはエルにこっそりと声を掛ける。エルは、恐らく楽屋での事と関係あるだろうと思ったが、口にするのは憚られた。
 エドガーは理由が分かっているようで、機嫌よくロックの後を追っている。

 屋根裏を伝い、何体ものモンスターを倒した末、一行は遂にオルトロスを追い詰めた。
 しかし、オルトロスは最後まで抵抗し、揉み合いになった。重りを落とすことは阻止したものの、バランスを崩した。一行はオルトロスごと舞台に落ちてしまった。そしてその結果、セリス扮するマリアを取り合っていた俳優二人をのしてしまった。

「ラルスとドラクゥが伸びてしまった! マリアは一体誰の妃になったらいいのか! 」

 ダンチョーはすかさずナレーションを入れた。するとその時、ロックが勢いよく立ち上がる。腰に手を当て、もう一方の手は人差し指を立ててポーズを決めた。

「セリスを娶るのは、ラルスでもドラクゥでもない! 」

 ロックは舞台の中央に移動して、さらに続ける。

「世界一の冒険家。このロック様だァァァーーー! 」
「下手な芝居しよってからに……! 」

 ダンチョーはロックの取って付けたようなアドリブに舞台袖で頭を抱えた。

「『セリス』と呼んだな。全く、あの男は……」

 ぶつぶつ言いながら、エドガーが起き上がる。マッシュはそばに倒れているエルに呼びかけながら、彼女を揺さぶった。

「だまァ〜れェ〜われとてタコのはしくれ! お前なんかに負けはしないぞ!! お前としょーぶだ!! 」

 各人の思惑はともかく、何故かオルトロスまでマリアの嫁取りに参戦を表明した。ロックはそれを聞き、オルトロスに向き合う。彼は再び闘志を燃やし始めた。

「ええい! こうなったらもうどうにでもなれ! ミュージックスタート! 」

 ダンチョーの一声で、オーケストラが再び音楽を奏で始める。テンポの速い勇ましい曲が流れ、戦うロックはノリノリだ。そこへエドガーとマッシュも加勢する。臨場感溢れる戦いぶりに、観客は大いに湧いた。しかし、まさか芝居ではなく本当に戦っているなどとは、誰も疑っていない。

 激しい攻防の末、彼らはオルトロスを追い払うことに成功した。すると、今度は天井の方から男の声が響いた。

「待ちな! 」

 声と同時に縄はしごがするすると降りてきた。一行が見上げると、銀髪の男が勝ち誇ったような笑みを浮かべて、はしごに掴まっている。

「素晴らしいショーだったぜ」
「セッツァーだ! 」

 ダンチョーが叫んだとき、セッツァーは既にセリスを捕まえていた。

「約束どおり、マリアは頂いていく。あばよ」
「あーーれェェーーー! 」

 セッツァーがそう言うと、はしごもどんどん上昇し始める。ロックは慌ててはしごを掴み、エドガー、マッシュと続いた。マッシュは未だ気が付かないエルを抱えている。

「セリス、ノリノリだよなあ。すげえや」

 と、マッシュはぼそりと呟いた。

 一行は、セッツァーの飛空挺と共にオペラ座を飛び去った。

20141002

ロックとセリスの楽屋での会話、子供ながらにもドキドキしたものです
でも、「わたしはレイチェルの代わりなの?」に対して「リボンが似合ってるぜ」とごまかしたことが子供の理解能力を超えてて、何の話なのかよくわかりませんでした
でも、今ならわかる
ごまかしやがったなロック!笑
悪い男です笑
ロックも揺れてたのかな?

もう20年もしてないので、うろ覚えです
一応、動画見たりもしますが、各人の想いを図りきれないところはあるかもしれません
もう一度ゲームしたらきっとまた違う感想になるだろうな


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