22 扉の向こう側
「これが、魔封壁。この奥に、幻獣が……」
ロックがゴクリと唾を飲み込んだ。
飲まれてしまうのではないかと思うほど大きく広い壁が一面に広がり、今まで感じたことのない不思議な雰囲気が漂っている。
「後は、ティナに任せるしかない」
エドガーがティナに声をかけると、マッシュも彼女の肩にポンと手を置く。にっと笑ってはいるが、その表情も声も緊張している。
「頼んだぞ。ティナ」
ティナも緊張していた。堅い顔をして、眼前の魔封壁とその中央にそびえる重厚な扉を見つめている。
そんな折、場違いなほどの素っ頓狂な大声が辺りに響いた。一行が揃って振り向くと、そこには今、最も会いたくない人物が仁王立ちで構えていた。
「ヒョッヒョッヒョヒョ……ガストラ皇帝の仰った通りだ! 」
「ケフカ! 」
ロックが叫び、エルは思わず身を堅くした。ケフカはそんなエルを横目に見ながら、さも得意げに演説を始める。
「ティナを帝国に刃向かう者に渡し泳がせれば、必ず魔封壁を開く」
「なんだと……! 」
エルをマントで隠しながら、エドガーはギリ、と奥歯を噛み締める。
「つまり! 我々の手の内で踊っていたに過ぎないのだよ! 」
ケフカは意地悪く笑う。下品な声が魔封壁に反響して、イヤミなほど高く響いた。
「ヒッヒッヒッ。君たちに用はありません。私達に用意された、の栄光の道が開けるのです!! 」
「そうは行かないぜ! ケフカ! 」
勝ち誇った笑みを浮かべるケフカの前に、マッシュが躍り出る。ティナにもエルにも魔封壁にも、一歩も近づかせないと、ケフカやその配下たちに鋭い眼光を光らせた。
「おや。私とやり合うおつもりですか。そんなおつもりは、いけませんねえ」
マッシュの気迫をもろともせず、ケフカはさも可笑しそうにニヤニヤといやらしく笑っている。
「ティナが扉に入るまで、ケフカをくい止めるんだ! 」
エドガーの号令で、皆一斉に飛び出した。
帝国兵も臨戦態勢を見せ、戦闘開始かと思われた。しかし、両者がにらみ合う中、事態は急変する。
「あ! 扉が開きますですよ! 」
一行も帝国兵も、ケフカの声で思わず扉に注目した。扉が動いている。ゆっくりと、静かに。扉には僅かに隙間が出来ていた。
「幻獣たち……わたしを、受け入れて……! 」
ティナが扉の真正面に立ち、ゆっくりと近づく。緊張なのか恐怖なのか、はたまた両方か。引き締まった顔つきで、扉の向こうまで見据えているかのようだった。
「開きましたよ! 開きましたよ! 」
徐々に扉が開いてくると、ケフカは一層騒ぎたてる。しかし、彼はすぐに動きをピタリと止めた。あざ笑うかのような薄ら笑いはなりを潜め、俄かに真剣味を帯びた表情に変わる。ケフカは扉の方へ神経を集中し始めた。
「むむむむむむむむ胸騒ぎががが、な、な、何かが来る! 」
ケフカは叫んだ。エルもぎょっとして空を見上げて声を上げた。多数の幻獣たちが一斉に扉から飛び出して、一行の頭上をとてつもないスピードで移動している。
「すすす凄いエネルギー! 」
ケフカは興奮を隠せない。けれど、同時に怯んでいた。
エルはエドガーに引っ張られて岩陰に飛び込んだが、ケフカは幻獣たちの勢いに呑まれてしまった。絶叫しながら、あっという間にはじき飛ばされる。
「ティナ! 大丈夫!? 」
エルが岩陰で伏せながら大声で彼女を呼ぶものの、ティナは扉の前に立っまま押し黙っている。彼女の背中越しに、意志を感じた気がした。
「扉が………」
ティナのいる場所を挟んで向の岩陰にいたマッシュが、扉の動きの変化に気付いた。彼の言葉で、皆も扉に注目する。僅かに開いていたはずの魔封壁の扉は、今にも閉じようとしていた。
あれよあれよと言う間に、遂にぴったりと閉じてしまった。
「さっきの幻獣は……」
ロックがティナに問いかける。他の皆も、ティナの周りに集まった。けれど、誰も何が起こったのかよくわからない。
ティナはロックの問には答えず、ただ静かに言った。
「兎に角、飛空艇に戻りましょう」
「何が起こったんだ? 幻獣が群をなして飛んで行ってしまった。その後、帝国の人間も、怯えるように逃げて行った」
エドガーが顎に手を遣り、考えこんでいる。側にいたマッシュにも意見を求めた。
「幻獣はどの方角へ行った? 」
「帝国首都の方へ」
「ベクタか……」
双子達は苦々しい顔で、幻獣たちが飛び去った空を見上げた。
もう幻獣たちは見当たらない。帝国兵たちも一目散に散っていった。辺りはしんとして、元の神秘的で穏やかな雰囲気に戻っていた。
◇
「もう少しでベクタだな」
セッツァーが舵を取りながら皆に告げた。一行はブラックジャックに戻り、帝国を目指している。
幻獣たちの行き先も、目的もわからない。一行は幻獣達が向かった方角へ追いかけて行き、手がかりを探そうとしていた。
「あっ! あれは……」
甲板の端で外を見ていたティナが、何かを見つけた。目を凝らして、遠くで動く何かを必死に目で追っている。隣に立っていたロックも、一緒に探そうと外を見た。
「どうしたんだい。ティナ? 」
「感じるの。……どんどん近づいてくるの……」
「感じるって? 」
ロックが聞くと、ティナはまた何かを見つけた。
「あっ、光った! 」
「何だろう? まさか……幻獣……? 」
ロックも見つけた。ティナとその何かを目で追う。程なくして、やはり彼女の言う通り、それがどうやらこちらに向かっていることに気付いた。
「こっちに来る! ティナ! 危ない! 」
ロックが叫んだのとほぼ同時に、幻獣が甲板へと飛び込んで来た。ロックは慌ててティナに飛びかかるようにして伏せさせ、難を逃れる。
「なんだ、今のは? 」
「セッツァー! 伏せろ! 」
次の瞬間、飛空艇を操縦するセッツァーの真上を幻獣が掠めた。セッツァーは慌ててその場を飛び退く。避けるのが精一杯だったセッツァーは、直ぐに操縦に戻る事ができない。近くにいた、エドガーが素早く操縦桿を握った。
「どこに行くんだろう……」
遠のいてゆく幻獣を見つめてマッシュが呟いた。
「怒ってた」
エルは遠くの幻獣を見つめながら言った。
急に飛空艇がガタガタと揺れ始め、エルは尻餅をつく。
「怒ってた……? 」
床に伏せたまロックが問い返すと、ティナも同じように答える。
「怒ってたわ……」
「どうして、エルにもわかるんだ? そんなこと」
ロックがじっとエルを見る。マッシュも不思議そうな、そして心配そうな視線を彼女に送る。
「わからない。わからないけど、そう感じるの。頭に勝手に入り込んで来るような.……そんな気がするの」
エルがゆっくりと、言葉を探すようにして話していると、ティナはっとしたように起き上がる。そして慌てたようにして飛空艇の欄干に駆け寄り、揺れに足を取られながらも懸命に進む。
「待って、行っちゃだめ。行かないで……お願い……! 」
ティナは揺れる甲板の手すりに掴まりながら、既に遠くの空を飛ぶ幻獣たちに訴えかけた。けれど、彼らには届いてはいない。そしてそれはティナにもわかっている。心配そうに、いつまでも幻獣たちが向かった先を見ていた。
「それより、この揺れはさっきの幻獣たちの……? 」
起き上がったセッツァーが苦い顔で言うと、エドガーの焦った声が響いた。
「セッツァー! 来てくれ! 早く! 」
セッツァーが彼を振り向けば、エドガーが必死で舵を抑えていた。だが、どう見ても舵がおかしな方を向いている。慌てて駆け寄るが、ふたり掛かりでもびくともしなかった。
「うわあああ! 舵が利かねえ!! 」
轟音がセッツァーの叫び声を飲み込む。
ブラックジャックは黒煙を吐きながら、地面に近づいていった。
20150531
どうも最近、ヒロインが空気です
うーんどうしたものか
でもなあ
この辺はやっぱりティナを中心に回ってると思うんですよね
夢としてはヒロインが主人公だけど、やっぱりティナがいないと6として成り立たないんじゃないかと思ってしまいます
2みたいに端折りまくるとすぐ終わりそうだしなあ、なんて
下手な考え休むに似たり
とはよく言ったものです
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