FF-D D+S m-ds New!夢物語


26 裏切り



 ティナとロック、そして帝国のレオ将軍ら一行はアルブルクから船で移動した。ブラックジャックを使う案もあったが、修理が必要であったために実際に駆り出されることはなかった。
 ロック一行は船でサマサの村に入り、ストラゴスという老魔導師に出会う。彼と一緒に幻獣を探し出し、サマサの村で対話することに成功した。ロックとセリスもようやく仲直りができて、何もかもが丸く収まりつつあった。
 これで世界は平和になる。そこにいた、誰もがそう思った。

 一方その頃──
 セッツァーが汗水垂らして働いている。それがエルにはとても新鮮に見えた。普段は不真面目を絵に描いたような男が、真剣な顔つきでひたすら仕事している。
 セッツァーはがやがやとうるさかった邪魔者エドガーとシドを追い払った今、ブラックジャックの修理に勤しんでいた。
 集中するセッツァーの作業は手際よく進む。修理はもうほとんど終わろうとしているところだ。

 エルはセッツァーのギャップがどうにも面白い。ニヤニヤしながら作業する彼を眺めていた。
 ふと、エルは視線を感じて顔を上げる。すると、凄みの効いた凶悪な顔をして、「じゃまだ」と言わんばかりの眼力で睨み付けるセッツァーと目が合った。
 エルが思わず怯んだその時、エンジンルームの外でバタバタと激しい靴音がした。何事だろうとセッツァーとエルは再度顔を見合わせる。

「セッツァー! 緊急事態だ! 」

 マッシュがバン!と音が立つのも気にせず、勢い良く扉を開けた。ひどく慌てた様子で、どこから走ってきたのかと思うほどの汗をかいている。彼の後ろから、エドガーもマッシュと同じように大急ぎで入って来た。
 エドガーはセッツァーによってシドと共に追い出された後、シドを帝国まで送り届けていた。

「修理はどうだ? 飛べるなら、早急に頼む」

 エドガーにしては珍しく、やや焦ったような表情だ。いつになく深刻な雰囲気に、セッツァーの顔つきは一瞬で険しいものに変わる。
 同時にカイエン、ガウ、モグが、狭いエンジンルームにどかどかとなだれ込んで来た。みんな慌てて帰って来たらしく、ぜいぜいと肩で息をしている。モグに至っては、必死の形相でカイエンの背中にしがみついていた。

「セッツァー殿! エル殿! 帝国が裏切りましたぞ! もはや一刻の猶予もござらん! 」

 カイエンは息を切らせながら一気に喋った。額に伝う汗を拭い、乱れた息を整える。セッツァーもそれに応え、壁に掛けていたコートを手に取った。

「まかせときな! 最後の微調整をしていたところだ。すぐに出すぞ! 」

 準備のためにとりあえず出て行ってくれと言うセッツァーに従い、皆それぞれ移動する。ブラックジャック内で一時解散となった。

 エルは甲板に出た。そこにはマッシュが先にいて、外を見ている。
 マッシュの目つきは険しくつり上がり、腕組をして空を睨みつけていた。纏う空気は殺気立っていたが、マッシュはエルに気付くとにこやかに微笑んだ。
 
「おう、エル。準備は良いか? 」
「うん。大丈夫。ねえ、何があったの? 帝国はアテにはならないだろうとは思っていたけど……」

 エルはマッシュを見上げた。背の高い彼の顔を見ようとすると、うんと上を向かなければならない。

「ああ、それは兄貴が……」
「あっ! ねえ……あれ!! 」

 マッシュの言葉を遮って、エルは素っ頓狂な声をあげた。彼女は上を向いたまま、口をパクパクさせて目を見開いている。エルの視線を追って後ろに広がる空を見上げると、マッシュも息を飲んだ。

「あれは……幻獣、だよな」
「あんなに沢山……」

 幻獣と思われる生き物が、遠くの空を飛んでいる。それも、一体やニ体ではない。見たこともない程たくさんいた。
 幻獣たちは群をなして、同じ方向へ向かって飛んでいる。

「どこへ行くんだ……? いや、こうしちゃいられないぞ! 」
「わ、わたし、みんなを呼んでくる! 」

 そう言うや否や、エルはバタバタとブラックジャックの船内を走って行った。

 マッシュは幻獣たちが向かっている方向を確認し、これから起こるであろう騒動に備えていた。

2016.11.29


6長編はそろそろわたしの同期が登場しそうですね(←コラ!)
サマサの村に同行しなかった仲間はこんな感じで帝国から退散してきたのかなー!なんて思った次第です
ロックとセリスの恋愛模様とか、ティナの愛の機微は一切無視してしまいましたが、これはヒロインの物語ということでひとつよろしくお願いします。


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