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27 山間の村



 マッシュはブラックジャックの壁のシミをじっと見つめていた。厳密に言えば、壁際でシミのある場所を向いているだけで、実のところ何も見ていない。
 マッシュはつい先ほどのエルとのやり取りを思い返してはため息をついていた。

 マッシュを悩ませることは二つ。
 ひとつは、マッシュはエルに言いたい事があった。それもひとつやふたつではなく、たくさんだ。
 この頃何かに悩んでいなかったか? 自分で良ければ吐き出して、すこしでも楽になってくれればいい。何かあったら言ってくれよ……。最近のエルの取り繕うような気丈さに違和感を覚えてから、ずっと声をかけようとしていた。だが、なかなかじっくり話しをする機会を得られないまま、ドタバタとここまで来ている。
 そんな中、先ほど甲板でやっと二人きりになった。なのに、いざ言おうとすると自分でも驚くほど躊躇した。もしも拒絶されたら、と思うと俄に怖くなってしまったのだ。
 言うか言うまいか迷っているうちに、エルが遠くの空に群をなして飛ぶ幻獣たちを見つけた。もともとベクタから逃げるつもりではあったが、さらに大慌てで離陸して、今は幻獣を追いかけている。結局、話すどころではなくなってしまった。

 マッシュは悶々としている。
 セッツァーがブラックジャックを操っている操縦桿の裏の壁には、ところどころシミがあった。マッシュはひたすらそれらのシミを見つめて、じっとしていた。

「幻獣たちはどこへ行くんだ……?」

 舵をとりながら、セッツァーはぼそりとこぼした。彼の銀髪が風になびく。ばらばらと揺れるセッツァーの髪を避けるように、エドガーは見ていた地図から目を離さずに少し移動した。
 エドガーは一点を見つめて動かないマッシュの様子を気にしているものの、地図の確認も手放しにはできないでいる。

「このあたりには村や町はないはずだが……」
「本当に、山しかないのね」

 エドガーの脇からエルがひょいと顔を出し、彼が眺めていた地図を覗いた。

「そうだな。さすがに、ここまで来たことはなかったよ」

 エドガーはエルにも見えやすいように地図をやや低く下げ、持ち直した。エルはエドガーにお礼を言うと、二人並んで地図を眺めている。そんな二人の様子をちらりと見ては、マッシュはそろそろとまた視線をシミに戻した。

 マッシュを悩ませることの二つ目は、ほかでもない彼の兄・エドガーだった。
 ここの所、エドガーは急にエルと親しくなった気がする。「仲睦まじい」とまでは言わないが、マッシュには何となく二人を包む空気感が変わったように感じられる。二人から何やら柔らかな雰囲気を感じるのだ。
 さらにエドガーは、まさにマッシュがエルと話そうとしていた事について既に何か知っているような気がしている。お互いにそれについて話したことはないが、恐らくそうだろうとマッシュは思っている。嫉妬でそう感じるのか、なんなのか。マッシュはこれまで兄に対する嫉妬など、覚えている限り一度たりとも抱いたことはなかった。
 マッシュはやり場のない感情を自分でも持て余している。マッシュは盛大にため息をもらした。

 エルとエドガーが地図を見ていると、そこへすかさずモグとカイエンもやってきた。特にモグは地形への造詣が深い。興味津々といった風で、エルの肩に上って地図を熱心に眺めている。

「何もござらぬならば、仮に戦闘になっても人的被害は少なく済むやもしれませぬな」
「クポポ……世間は広いのクポ」

 がやがやと賑やかな仲間たちを背に、マッシュはまだ壁と話している。けれど、ふと、どうも背中が暖かいことに気が付いた。
 「ああ、これは」とマッシュは後ろを振り向く。きっと、ガウだ。そう考えながら後ろを見ると、マッシュの予想通り、ガウがぴたりと彼に張り付いていた。

「ガウ? どうしたんだ? 」
「マッシュ、げんき、ない」
「え? 」

 ガウは顔を上げ、マッシュの顔をじっと見つめた。

「マッシュ、腹、痛いのか? ガウ、しんぱい……」

 今にも泣き出しそうなガウにマッシュは目を細め、ふっと笑った。もやもやして堅くささくれたようだった気持ちが、ふわっと柔らかくなった気がする。

「大丈夫だよ。ちょっと考え事してたんだ」
「かんがえごと? 」
「そう。考え事。だから痛くない。ありがとうな、ガウ」

 今度は「?」をたくさん浮かべたような顔をしたガウの髪を、マッシュはくしゃくしゃと撫でた。ガウは撫でられて気持ちがいい。にっこり笑った。
 その時、エルが声をあげた。どうやら幻獣たちが下降を始めたらしい。

「ここで降りるのかな……? 」

 幻獣たちを追うように、ブラックジャックも高度を下げ始めた。セッツァーは着陸するのに手頃な場所を探し始める。しかし、セッツァーは眉をひそめて目の前の景色に困惑していた。

「おい、こんな所に村なんかあったか? 」

 エドガーが地図を確認する。しかし、載っているのは山ばかりで、村の表記はない。地図上ではこの辺りは一面山が連なり、かなりの広範囲を占めることになっている。
 エドガーは村が無い事になっている事をエルにも確認し、互いに顔を見合わせた。

「いいや。どう見ても山が広がるばかりだな。何かあったのか? 」

 エドガーがそう言うと、エルも彼の隣でうんうんと頷いている。

「村だ、村。この先に、村がある」

 セッツァーは顎で前方を指す。甲板から下を見てこい、という事だ。それを見たカイエンとモグが、甲板の端へ向かった。

「その村に幻獣たちが集まってるクポ! 」
「おや、あれは……ロック殿でござるな。ティナ殿や、レオ将軍もおられますな」

 マッシュは壁から離れて外を見にやって来た。ガウと共にモグに並び、ひょいと身を乗り出す。

「なんだ、みんなここに揃ったんだな」


 一方、その村──サマサの村ではレオ将軍と幻獣たちが話をしていた。レオ将軍も、幻獣たちも、互いに自らの過ちを悔い、歩み寄ろうとしている。

「これで俺達の役目も終わる。本当の平和が訪れるかもしれないな」

 平和的な解決が望めそうだと、ロックは思わず顔を綻ばせる。近くにいるセリスにも、ニッと笑って見せた。

「戻りましょう、ベクタへ」

 セリスの晴れやかな表情に、ロックは図らずも釘付けになってしまった。
 これまでのわだかまりを早く解消したい。ロックは何を言うべきか最後まで迷いながら、しかし何か話したいと口をぱくぱくさせながら話始めようとした。

「セリス……あのさ、俺……」
「いいの。何も言わないで」

 凛としたセリスの声、佇まい。セリスの全てにロックは完全にノックアウトされた。二人のことは、取り敢えずこれで万事解決である。
 ロックは顔をほんのりと赤らめ、セリスの手をそっと握った。セリスも彼に答えるように優しく握り返す。すっかり二人の世界ができあがってしまった。

「お熱いね……」
「若さ、じゃのお」
「これも「愛」、かしら……? 」

 ロックとセリスの様子を見ていた村の女の子・リルムが、ぼそりと呟く。その隣にいる彼女の祖父・ストラゴスも、微笑ましそうに二人を見ている。ティナはさらにその隣で「愛とは何か」を考えていた。

 ティナは感情が戻りつつあるものの、こういった機微にはまだ理解が追いつかない。そのことを、彼女は気にし始めている。

 サマサの村へ来る途中、ティナは船の上でレオ将軍と愛について語り合った。その時の彼とのやり取りをティナは頭の中で反芻した。

「リルムの前でも平気なんだね」
「ぶっっ……! 」

 リルムの一言に、ロックは茹で蛸のように真っ赤になりながらゲホゲホと勢いよく咽せ返った。


20170208

マッシュが一人で悶々してます
マッシュらしくないかも?
ロクセリでセツセリで、ヒロインはフィガロさん二人に取り合って頂こうかなーなんて思った次第です
マシュティナも捨てがたいけど、レオティもいい!
けど、そうすると悲しい……なんて



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