29 空飛ぶ陸地
荒い鼻息をしながら崩れ落ちて行ったショッキングピンク色のモンスターと、それを大先生と呼びながら追うようにして落ちたオルトロスを後目に、一行は眼前に迫る大陸へとブラックジャックを進めていた。
オルトロスの悔しそうな表情を見下ろしながら、ロックはぼそりと呟いた。
「テュポーンだっけか? 大先生ってのは……」
ロックは欄干を背にすると頭の後ろで緩く手を組んだ。そして、少し面倒くさそうにため息をつく。
ロックの隣に立っていたマッシュが彼に同意するように頷き、モンスター達が落ちていった方を眺めた。
マッシュ達から少し離れたところで、ガウが鼻を膨らませている。「フンガー! 」と鼻息を出すのだが、それをモグの顔の前でするものだからモグは迷惑そうだ。そしてそれをストラゴスは興味津々で観察している。
マッシュは仲間達の様子に思わずクスリと笑うと、ロックに視線を戻した。
「あんなのどこで見つけて来るんだろうな」
「でも、何だか憎めないね」
さらにマッシュの隣にいたエルがそう言うと、二人は声をそろえて異を唱える。
「そうかー? 帝国軍だけでもやっかいなんだぜ。よけいな喧嘩売るなっての」
ロックが不満そうに唇を尖らせていると、いよいよ目的地に着いたらしい。エドガーがみんなを呼び集めている。
ブラックジャックを操縦していたセッツァーは、着陸の準備ににかかった。
不穏な雰囲気を漂わせながらぽっかりと空の上に浮かぶ大陸は、「島」と呼ぶには少々大きい。飛空挺からも地面が見えるが、地上では見たことのない色をしている。
禍々しさすら感じる宙に浮いた大陸を、彼らは「魔大陸」と呼んでいた。ここに魔法の力の源である三闘神が安置されているという。
「おや、おそろいだね」
優雅な靴音を響かせながらエドガーが近づいてきた。風になびく金髪はいつ見ても見事なもので、舞うように動く金色が日に晒されて一層輝いて見える。彼の纏う空気は、どんな場所でも高貴だ。
エルはそんなエドガーの様子に一瞬目を奪われた。そういう景色は何度も、それも毎日のように見ている。だが、この時だけは何やら特別ような感じがした。むしろ神々しさすら感じて、それがとても衝撃的だった。
「エル。今日はずいぶん熱心に見つめてくれるのだね」
エドガーはぼうっと自分を見ているエルに、にこやかに問いかけた。エルはエドガーの言葉にはっとして、勢いよく首を横に振る。そして、見つめていたことにも気付かないほど彼に見とれていた自分に驚いた。
エドガーは大陸を見据えた顔つきこそ神妙ではあるが、「
僥倖の極みだ」などと言い、嬉しそうにしている。しかし、それに気付いているのは彼の双子であるマッシュだけで、ほかの者はいつもの軽口くらいに捉えている。マッシュは心の中で苦笑した。
「ううん。ごめんね。何でもないの」
「そうかい? それは残念だが……さて、本題だ」
エドガーはより表情を引き締めた。エルたちも真剣な顔で、目の前に広がる大陸に目をやる。いよいよだ。
「魔大陸に着いた。行こう」
魔大陸に降り立つと、強い風が一行を迎えた。びゅうびゅうと吹き荒れる強い風は、この大陸が宙に浮いているのだと実感させる。そして、いかにも強い力が眠っているのだと言わんばかりの何ともいえない気配は、もともと魔法に関わりのなかった者にまでわかるほどだった。
特にガウは敏感だった。その地に足を着けるのにも躊躇して飛び上がり、その勢いでマッシュに飛びついたくらいだ。
「この先にガストラとケフカ、そして……三闘神がいる」
ロックが呟いた。セリスは「そうね」と言い、彼に続く。さらにエドガー、エル、マッシュとガウ、カイエン、ティナとぞろぞろと飛空挺から降りていく。
先へ進むのは始めの四人で行くことになったが、物珍しさから一旦全員で外に出た。
景色を見渡していると、リルムがわあと感嘆の声をあげた。風景を楽しむような場所でも場面でもないが、今のこの光景を描き留めるのだと夢中で筆を走らせる。彼女の側にいたインターセプターも、座り込んでリルムのキャンパスをじっと覗き込む。
「じゃあ、気を付けて行けよ。俺らはここで待機してる。いつでも飛ばせるようにしておくぜ」
セッツァーが葉巻に火を点け、ひらひらと手を振る。エルも手を振りながら、四人連れだって魔大陸へと入っていった。
20171006
FF-D D+S m-ds New!夢物語
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