41 宛のない恋文
「行け! ケフカをぶちのめしてやるのじゃ! 」
ダンカンは豪快に笑い、一行を送り出した。
ファルコンでナルシェ上空を飛んでいる時だった。マッシュが地上に何かを見つけた。降ろしてくれと言うので近くに飛空挺を止めて散策すると、地形と共に場所を変えてはいたが、かつてマッシュが修業してい小屋があった。さらに、中からは彼の師匠・ダンカンが出てきたのだから、マッシュはじめ全員が驚いた。奥義継承権を巡って、ダンカンの息子でありマッシュの兄弟子であったバルガスに殺されていたものとばかり思っていたからだ。
感動の再会を果たした師弟は修業を再会し、マッシュは一年越しで奥義を伝授されたのだった。
奥義を継承したとはいえ、ケフカ倒すにはまだ戦力不足だった。やはり早く仲間たちを見つけなければと、一行は手当たり次第探そうとしている。そこで手始めに立ち寄ったマランダでとある人物と出会っていた。
「見て。この部屋にある花はみんなモブリズにいる彼が送ってきてくれたの」
ローラと名乗る女性は嬉しそうに花の一つを手に取り、エルに見せた。
「よーく見て、手作りの造花よ。草木が花をさかせなくなったこの時代に、彼がつくってくれた花……これが彼からの手紙……」
ローラは愛おしそうに、手紙や花を一つ一つを大事そうに撫でる。けれど、一行は解せない気持ちでいっぱいだった。モズリズは今、ティナと子ども達しかいない。
「モブリズはケフカの裁きの光で……? 」
マッシュがエドガーに耳打ちすると、エドガーもローラや彼女の手紙に向けていた視線と表情を崩さずに彼に応じる。
「誰かが、かわりに手紙を……? 」
ローラはこれが最近来た手紙だと、手紙の束から一通を取り出してセリスに寄越した。読んで良いものかと一瞬戸惑うが、エルがセリスの脇からひょいと顔を出す。他の面々ものぞき込むようにしてセリスの手元の手紙を見ている。読まないの? とエルの目が訴えていて、セリスは渡された手紙を開いた。
“ 愛するローラへ
村の再建もひと区切りついて、そろそろ国に帰ろうと思っていたところでござる…… ”
「……なんか、文が……」
マッシュが呟くと、エドガーもそれに答える。
「カイエンっぽいな……」
みんな同時に頷いた。ドマの習慣なのか、この独特の口調は他にない。書き言葉でもこうなるのかと、エルは妙に感心した。
「でも、どこから手紙を送っているんだ」
セッツァーは煙草の煙を吐き出しながら、仲間から話しに聞いたモズリズの現状を思い浮かべた。少なくとも、カイエンがいたとは聞いていないし、居なかったと仲間たちは言う。
「彼への返事、伝書鳥のところまでとどけてくださいませんか? 」
一行が首を傾げていると、ローラが口を開いた。彼女の手には新しくしたためられた手紙がある。一番近くにいたエルがそれを受け取ると、ローラは嬉しそうに礼を言った。
「ありがとうございます。彼の返事……早く来ないかしら? 」
楽しみだと笑うローラと別れ、一行は伝書鳥へ彼女の手紙を託した。そして、ファルコンでその鳥を追った。伝書鳥の向かう先に、きっとカイエンがいるはずだ。
鳥を追うこと数分。伝書鳥はゾゾ山頂へ降り立った。セッツァーもファルコンを着陸させ、彼らはゾゾ山を登った。
山頂に着くと、どうやら居住地らしく整えられた洞穴を見つけた。中へ入ると文机があり、その上で恐らくしたためられて間もないであろう手紙がインクの乾くのを待っていた。
“ ローラへ
これまで、嘘を書き続けてきたわしを許してほしい。もう真実から目をそらすのは終らせなければならぬと思い、今は筆を執っている。モブリズのあの若者はもう、この世にいない。拙者が代わりに手紙を書いていたのだ。すまない……。
過ぎ去ったことに縛られ、未来の時間を無駄にすることは容易い。だが、それは何も生み出さぬ。前に進むことができぬ。もう1度、前を見ることを思い出してほしい。愛するということを、思い出してほしい。
カイエン ”
「崩壊直前の世界……」
突然背後から聞こえた懐かしい声に、全員が振り向いた。
「だが夜明けの光は変らぬ。人の心も、決して変らぬ……」
「カイエン!! 」
声を揃えて彼の名を呼ぶと、カイエンは嬉しそうに目を細めた。
「みんな! 無事であったか! 」
カイエンはマッシュと堅く握手を交わす。他の仲間たちともそれぞれ言葉や握手を交わし、再会を喜んだ。
「儂も共に行こう。世界をこのまま、放っておくわけにはいかぬ! 」
もちろん、みんな大歓迎だ。しかし、次の瞬間、カイエンは不思議そうな顔をする。
「でもどうして、ここが……? 」
ますます不思議そうな顔をして、仲間たちの顔を見回した。そして、はっとしたように飛び退くと、青ざめた。
「ま、まさか 儂の書いた手紙を読んだでござるか?! 」
すっかり動揺したカイエンは、慌てて造花を隠す。しかし、みんな既にマランダで同じようなものをいくつもの見てきた。いまさらどうということもない。
しかし、当の本人はどうしても恥ずかしいらしく、今度は茹で蛸のように真っ赤な顔で必死で言い訳を考え始めていた。
「これは……いや、その……ちょっとした、趣味の1つでござるよ……」
「カイエン、この造花、結構上手いよ」
マッシュが笑いながら言うと、カイエンは目を白黒させ始めた。他のみんなもうんうんと頷く。
「むむっ!! お、お主ら……ほ、ほんとでござるか? 」
恥ずかしいような、嬉しいような復調な表情で、カイエンはポリポリと頭を掻いた。
「いつぞやの手紙を持っていた娘が気になってマランダに行ってみた。娘は、返事はもう来ないことを知っていながら、それでも毎日手紙を書いていた……それで、わしは見るに見かねて……」
カイエンはふと外を見た。仲間たちが視線を追うと、洞穴の隙間からマランダが見える。
「手紙を書きながら、自分でもあの娘と同じ事をしているのに気づいた。本当は、前を向いていないと。もう、目をそらすまい。そして前に……」
カイエンの濃い焦げ茶の瞳は凛と輝いた。
「マランダでガウ殿に会ったでござる。
『ケフカを倒すため強くなる』と言ってどこかへ。たぶんガウどのは獣ケ原に向かったのでござろうな」
次の行き先が決まった。一行はぞろぞろと山を降り始める。すると、エルは宝箱を見つけた。隣を歩いていたエドガーと共に宝物を開けると、本が4冊出てきた。
「こ、これは……」
エルが取り出した本を見て、エドガーがはヒュウと口笛を吹いた。
「誰にでもわかる機械」
「マンガでわかる機械」
「これで機械おんちがなおる!! 」
「機械のすべてがわかる本」
「気にしてたのね、カイエン」
「俺に相談してくれればいいのに」
機械は苦手だとカイエンが言っていたのを思い出し、エルとエドガーはふふっと微笑み合う。彼は人知れず努力していたのだろう。
ふと、エドガーはまだ宝物の底に何か入っていることに気が付いた。
「ん? ……まだ入ってるぞ」
エドガーは中身に手をかけるが、はっとして出すのをやめた。
「え? なになに? 」
エルが身を乗り出して見ようとするが、その前にエドガーは宝物を閉めてしまった。
「なんで? 閉めちゃうの? 」
「いや……気のせいだった。もう空だよ」
にっこり笑ってエルを宥める。エドガーはその場を立ち去ろうとするが、エルは怪訝そうな顔をしている。
「そうだ、エル。ジドールに新しくカフェができたそうだ。こんな世だからこそと華やかなメニューが出ているらしいよ。今度寄ってみないか? 」
「行く! 」
ふう、とエドガーはこっそり息を吐いた。エルがカフェに食いついてくれてよかったと、宝物を盗み見る。
本当は、宝物の中にはまだ本が入っていた。けれど、それは見るからにいかがわしい物で、それをエルに見せるのは憚られた。なんせ、カイエンが四冊の本の下に隠していたのだ。白昼の下に晒され、しかも女性に知られでもしたら彼の名誉と沽券に関わるだろう。
「あの堅物のカイエンが……いや、それは関係ないか」
ふふっと思わず笑うと、エルがどうしたと言わんばかりにエドガーを見上げている。
「いや、何でもないよ。カフェ、楽しみにしておいで」
エルはにっこり笑い、エドガーも優しく微笑む。仲間たちに遅れを取ったが、このままつかの間の二人の時間を楽しもうとエドガーは笑みを深めた。
201711210
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