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47 真実



 ティナはモグをキュッと抱きしめている。抱かれているモグも心地よさそうだ。モグの子分だという雪男までもが仲間になり、ファルコンの中は随分賑やかになった。
 エルは目の前で繰り広げられているティナによるモグのふかふかにうっとりしつつ、頭の中では他のことも考えていた。

 一行はつい先日までナルシェを訪れていた。そこでエルとティナは再度氷漬けの幻獣と対峙した。
 ティナは暴走することなく、自分の力を完全にコントロールできていた。エルも落ち着いていて自我を失うことはなかったし、もう幻獣から敵意を向けられることもなかった。
 がけの上を凍てつく風が通り抜けると、エルはぶるりと震えた。氷漬けの幻獣は、以前と変わらぬ姿で静か佇んでいた。



──人が私の氷の封印を解いたというのか──

 氷漬けの幻獣が一行に語りかける。吹きすさぶ冷たい風に耐えながら、彼らは耳を傾けた。


──魔石を身につけ……おまえたちは一体何者だ──

 幻獣は以前ほどの敵意を向けては来なかった。一行が所持している魔石の殆どは、幻獣から託されたものだ。氷漬けの幻獣も、何らかの形で彼らの想いを受け取っているのかしれない。

──まあよい。だが、この世界に満ちている殺気は何だ? 1000年たった今も魔大戦は続いているというのか? 愚かな永久の戦いを……おまえたちはそれを終らせようというのか──

 そこまで言うと、幻獣はじろりとエルに視線をやった。エルに緊張が走る。

──エル、と言ったか……──

 エルは静かに頷いた。意識を向けられても尚幻獣からの激しい憎悪を感じない事にエルは内心ほっとした。


──やはりお前からは我々と似た何かを感じる。何故だ…──


「それは……」


 エルは意を決して、自分の生い立ちを話した。魔道研究所のことも、セイレーンのことも、世界が崩壊してから魔道の力が制限されているように感じることも、全て。
 エルは涙を溢すまいと必死になっていた。幻獣に話した事は、エドガー以外の仲間たちにも話していなかった事ばかりだ。いつか話そうとは思うものの、先延ばしにするうちにここまで来てしまった。受け入れられなかったら、と不安で仕方がなかった。

 全て聞いた幻獣は、唸り声を上げた。静かな怒りと悲しさを感じさせる声だった。
 仲間たちもまた、エルの経歴に驚きはするが、帝国への怒りや妥当ケフカへの思いを強くする。


──お前もまた、愚かな戦いの犠牲者だったか……──


 幻獣のエルを見る視線は、これまでに無いほど慈悲に溢れていた。或いは、エルに流れるセイレーンの血へ向けられたものかもしれない。


──三闘神の力のバランスが崩れている。力に制限がかかったのはそのせいだろう──


「三闘神の、バランス……」

 エルが反芻するように呟くと、エドガーが幻獣の前へ出てきた。


「その元凶はケフカだ。やはり、奴を倒さないとならないな」


 他の仲間は達も頷いた。心は1つだ。


──その心、信じてみるか……──


 そう言うと、幻獣は自らを魔石に変えた。


 ふとエルは部屋を見渡した。いつの間にか、モグもティナもウーマロもいなくなっていた。代わりに、エルの座るソファのサイドテーブルに温かい紅茶が置かれている。
 エルはカップを手に取った。ふんわり香る茶の香りが、憂鬱な気分を癒やしてくれる。


「エル」


 自分のカップを持ったエドガーが、エルの隣に腰掛けた。


「これ、エドガーが淹れてくれたの? 」

「いいや、ティナだよ。君が元気ないようだと心配していた」


 エドガーは紅茶を一口含んだ。エルも同じ様にカップに口をつける。


「ぼうっとしていたようだが、大丈夫か? 」

「うん。ありがとう。ナルシェでの事を、思い出してたの」


 エドガーは「そうか」と言うと、カップをテーブルに置いた。そしてその手でエルをぎゅっと抱きしめた。エルの不安や悲しみをも包み込むように。

20200421
お久しぶりです。
思い出しがてら始めから読み返して推敲してちょこちょこ書き直してました。
大きくは変わらないけど、細かいところでちょっとだけ変わってるところがあるくらいです。
より細かく書けてたらいいなー!なんて。


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