FF-D D+S m-ds New!夢物語


48 もしかして



 広い平原の端で、ガウが一軒家を見つけた。村でも街でもないところに、ぽつんと建っている。モンスターも蔓延っているし、生活面でも何かと不便だろう。住人が困ってはいないかと、一行はその家に寄って行く事にした。

 家には老人が一人で住んでいた。一見人の良さそうな爺さんだ。だが、彼に見覚えのあったマッシュは、「あちゃー」と片手で彼の顔を覆った。

「久しぶりじゃのう。やっぱり、あんたの修理が一番じゃ」

 爺さんの言葉にマッシュは嫌そうな顔をした。「もう関わりたくない」と顔にはっきり書いてある。

「だから、俺は──」

 マッシュは否定しようとするが、爺さんは彼の言葉を最後まで聞かずに喋り始めた。

「早いとこ、そこの椅子を直してくれんか。屋根の修理に使うからの」
「俺は修理屋じゃねえっつの」

 マッシュがそう言うと、爺さんはキョトンとした顔になった。たがそれも一瞬で、次の瞬間にはブツブツと何やら大きな独り言を話している。言葉がはっきりしないので内容はわからないが、それだけになんとも不気味に見えた。
 エルは一方的な遣り取りに、この老人は認知症でも始まっているのかと思った。何にせよ、まともな会話は期待できそうにない。

「……マッシュの、知り合い?」
「いや、そんなことはない。世界が変わる前からここに住んでる人なんだけどさ、相変わらずだよ」
「修理屋と思われてるんだね」

 エルの言葉に、マッシュは項垂れながら頷いた。
 ガウは爺さんが修理したいと言った椅子を眺めていた。だが、持ち上げても、ひっくり返しても、特に壊れているところはない。どういう事だと言わんばかりの顔でマッシュを見上げると、マッシュは黙って首を横に振る。それを見たガウは椅子から手を放した。

 ここには有益な情報はなさそうだと、一行は家を出ようとした。だがその時、マッシュは急にピンと来た。ガウの不思議そうな顔が、爺さんのキョトンととした顔にそっくりだった事に気付いたのだ。
 一行が家の外に出ると、マッシュは仲間たちをその場に集めて相談を持ちかけた。

「もしかして、ここの人がガウの親父じゃないのか? 」
「うう……」

 ガウはよく分からない、というような表紙で小さく唸った。

「なあガウ。きっとそうだろ? 」
「オヤジ……? 」
「そうだ。きっと、おまえの親父だよ」

 ガウの頭の中で、「親父」という言葉とイメージがようやく繋がった。まさか自分に親父がいるとは思ってもいなかったガウは、表情をぱっと輝かせる。

「…ガウの……オヤジ…!? 」
「よしっ! あのオヤジに教えてやろう。このガウが本当の息子だってことを」
「そうだね。分かってくれるといいな」

 エルはウキウキし始めた。明るいニュースなら大歓迎だ。

「待てよ……せっかくの親子の対面だ。おめかしでもさせるか」

 マッシュは頭の中で段取りを立て始めた。他の仲間たちも巻き込んで、皆に手伝ってもらったほうが良いだろうと考える。
 ジドールで準備して、ガウを一人前にしてやろうとマッシュは心に決めた。

 一行はジドール飛んだ。
 マッシュ達はガウを連れてレストランに入った。一行はガウにテーブルマナーを教えるのだ。
 だが、ガウはそもそとカトラリーの扱いをよく分かっていない。彼は基本的に何でも手で食べる。これまでまともに躾けられる機会を持てないまま十代を迎えてしまったのだから、仕方のないことだった。
 ガウは健気にもフォークと共にサラダと格闘するが、どうしても上手く行かない。結局、焦れたガウはトマトのスライスを指で摘んで口に放り込んだ。

「ガウ、だめだめ。手で食べるなと何度言ったらわかるんだ」
「ガウ……」

 何度挑戦しても上手くできない。ガウはしゅんとして下を向く。だがマッシュはスパルタだった。ガウの返事にも容赦がない。

「ガウじゃなくてハイでしょ!? 」
「はう! 」

 惜しい。あまりの惜しさにエドガーは笑いを噛み殺すのに必死だった。さらにロックに至っては盛大に吹き出している。マッシュはガウにも他の仲間達にも頭を抱えた。

 続いて一行はガウの洋服選びのためにブティックを訪れた。ティナやセリスが目を輝かせながら、いそいそと服を選んでいる。
 ティナが洋服を一揃い選んで持ってきた。上品な白地に紺のチェックシャツ、ベージュの綿のズボン、それと同じ生地のベスト。いかにも坊っちゃん然としているが、ガウの年齢にはピッタリだ。

「この服なんてどう? ガウにに似合いそうだわ。あら、あっちの服も捨て難いわ……」

 ティナの視線の先には、マネキンが海兵風のセーラー服を着ている。
 張り切るティナは頼もしく、また微笑ましい。だが、ティナの選ぶ服はマッシュの好みではなかった。あくまでも主体となるのは自分だ、と思っているマッシュは面白くない。
 マッシュは思わず呟いた。

「ボソッ、そんなに着られないよ…」
「なんか言った!? 」

 ティナは苛立った顔つきでマッシュを睨みつける。

「いっいや。なにも……」

 聞こえてしまった上に反撃されたマッシュは震え上がった。

 セリスが服を物色していた向かい側の棚で、エルも何か良いものはないかとウロウロしていた。白で縁取りされた紺のジャケットが目に止まると、ガウがこれを着ている姿を想像する。悪くないなと思いつつ、その隣にあったウケ狙いの面白Tシャツも気になった。カジュアル過ぎるだろうか。などと、考えるだけでも楽しい。
 Tシャツは二種あった。一枚目は黒地の生地に"I stil live with my parents." と胸の部分にデカデカと書かてれいる。「自分は未だに両親と暮らしている」という意味だ。これを子供が着ることで面白Tシャツとして成立するのだが、ガウの場合は全く洒落にならない。
 二枚目は紺色のシャツに竜騎士らしき全身シルエットをバックに、「俺は正気に戻った」と書いてある。
 エルはこれを気に入ったものの、見せる相手はあの爺さんだ。本人が気付くかどうかはともかく、まるで冗談にならない。エルは惜しみながらも、渋々勧めるのを止めた。

 今度はセリスが何か見つけたらしい。けれど、またしてもマッシュがケチを付けた。彼は怒ったセリスに手厳しく言い返され、常勝将軍の射抜くような鋭い目線で返り討ちにあった彼は、口ごもりながらションボリしている。
 自分で選びたいならそう言えば良いのに、とエルは可笑しくなってしまった。

 その後マッシュは拳法着をガウに着せた。本人は満足して自信満々だが、仲間たちからは受けが悪い。
 見兼ねたセッツァーが自分と同じ服をオーダーしようとし、エドガーがタキシードとシルクハットにバラを加えろなどと言う始末で散々だった。
 ロックに至ってはバンダナで解決しようとする。揉めに揉めた結果、男性陣による乱闘が始まった。

「あのー。これ、どう? 」

 そんな時、エルがジャケットを一着持ってきた。面白Tシャツの隣にあった縁取りの品だ。

「わあ、これ素敵ね」

 まず、ティナが食いついた。ガウとジャケットを見比べて、うんうんと頷いいている。
 
「ほう。これはまた上品だね。変に大人びていないところもまた良い」

 エドガーは殴りかかるロックの腕を掴んで避けながら、涼しい顔でエルとジャケットの方へ向けてウインクした。
 遠巻きに眺めていたセッツァーも満足気に葉巻きをくゆらせ、ロックと揉み合っていたマッシュも動きを止めた。図らずも羽交い締め状態のまま動けなくなったロックも、助けようとしているセリスもジャケットに関しては依存はない。
 一同の視線がガウに集まった。最終的に決めるのはガウだ。

「どう? ガウ、これ着てみる? 」

 リルムが問うと、ガウは嬉しそうに「がう! 」と返事した。

2020/04/29

TシャツのI'm stil live〜は実は我が家にあるやつです。
大した内容ではないと思うのだけど、何でか英語圏の人にはめちゃめちゃウケます。


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