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51 内緒話しをしよう



 エルは目を覚ました。目の前の、空のような青い瞳と目が合うと、寝起きでぼんやりした頭も一瞬で覚醒した。

「おはよう、エル」

 エドガーの長い腕がエルの腰に乗っている。それに気づいたエルは途端に恥ずかしくなって、シーツに埋もれたくなった。
 けれど、エドガーはエルの顔にかかった彼女の黒い髪を払うと、そのまま手で梳き始めた。それがどうにも心地よくて、エルは昨晩同様、やはりされるがままになる。そんなエルの様子に、エドガーは幸せそうに微笑んだ。

「エル、昨晩はすっかり言いそびれてしまったんだが──」
「なあに?」
「王家の秘密をひとつ、君と共有したい」

 エドガーはそう言って、エルの頬にキスを落とした。一方、エルは皆目する。

「秘密? 秘密なのに、共有できるの? 」

 エルはまだ要領を得ない。どうもピンと来ないエルに、エドガーは「俺が共有したいのだから良いんだよ」と言って可笑しそうに笑った。

「俺達はね、秘密の名前を持っているんだ」
「じゃあ、エドガーはニックネームだったの? 」

 驚くエルに、エドガーは笑いながら首を横に振った。

「いや、俺の名はエドガーで合っている。そうではなくて、実はミドルネームがあってね。そいつが秘密の名前なのさ」

 ようやく合点がいったエルは、寝そべっていなければぽんと手を打っていただろう。

「俺のフルネーム、どうか覚えてくれ」
「うん。聞かせて」

 エドガーはエルの髪を梳く手を止めた。半身を起こして、彼の隣で寝転ぶエルの顔の両脇に肘を着いた。覆いかぶさるような格好で、エドガーの長い金髪が一束彼の肩からするりと落ちた。

「エドガー・ロニ・フィガロ。これが俺の本名だ。今の所、これを知っているのは、君とマッシュと俺だけさ」

 他言無用だよ、とエドガーはエルの唇に人差し指をそっと当てた。

「お城の方も知らないの? 」

 エルはエドガーを見上げた。エドガーのよく日に焼けた頬は、つやつやして健康的だ。

「もちろん。俺の家族だけしか知らない事だ」

 エドガーは、今度はエルの唇にキスをした。

 フィガロ城で食事を済ませ、いよいよ出立の時を迎える。武器、道具のチェックは万全だ。一行はファルコンに乗り込むと、瓦礫の塔を目指した。

 ロックとセリスはいつも以上に仲睦まじく、セッツァーを苛つかせた。ティナはモグを抱きながらマッシュとずっと話しをしているし、ウーマロは無言で骨を彫刻し、その隣ではリルムは無心で絵を描き続けている。
 ガウは壁に向かって唸り、カイエンとシャドウとゴゴは座禅を組んだままピクリとも動かない。ストラゴスは新作のきぐるみを着て何やら考え込んでいた。
 エドガーとエルは、甲板からひたすら外を眺めていた。おどろおどろしい異様な風景を、今日こそ見納めにしたい。
 エドガーのマントの陰で、二人の手はしっかり繋がれている。今度こそ、何があっても離れないように。


2020/05/08
と、思ったけどエドガーのミドルネームはリルムも知ってるんだよな、確か。
これは夢、これは夢、これは夢、と唱えてからお読みください。って遅いか。


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