FF-D D+S m-ds New!夢物語


5 そこに直れ



「兄貴! 」

 バン! と、勢い良く扉が開いた。部屋にいた者が一斉に、扉を開けたマッシュに注目する。
 帝国を巡り、あくまで中立姿勢を保ちたいナルシェの長老と、徹底抗戦を訴えるリターナーの指導者バナンによって、喧々囂々としたやり取りが続いていた。だが、それも1次中断され、張りつめた緊張感が一旦解けた。

「マッシュ! 無事だったか」

 マッシュとよく似た男が、彼と同じ金髪を靡かせてマッシュに駆け寄った。二人が再会を喜び合っていると、マッシュの後ろからさらに3人が続いて入ってきた。

「マッシュ。そちらは? 」
「おう、新しい仲間だ」

 マッシュが紹介する前に、ガウが部屋の中央へ躍り出た。部屋の雰囲気はさらに柔らかく変わった。

「がうがう! おいらガウ! 」

 ガウに続いて部屋へ入ったエルは、そこにいた人数にまず圧倒された。マッシュが勧めてくれたとはいえ、自分が本当にここにいてもよいものだろうかという不安は拭いきれない。

「……エル・ヘリングです」
「ドマの戦士、カイエンにござる。ドマも帝国により、毒で皆殺しに……」

 最後にカイエンが入室する。
 カイエンはドマについて言及すると、やりきれない表情でうつむいた。部屋には再びピリピリとした雰囲気が漂い始め、長老とバナンのやり取りはその報告により更に白熱する。

「ねえ、マッシュ。あの人、マッシュのお兄さんなの? 」

 話し合いを邪魔しないように、エルはこっそりマッシュのそっくりさんを差してマッシュに問いかけた。
 マッシュが兄貴と呼んでいた男は、確かに背格好が彼と良く似ている。だが、長いマントも、髪を結うリボンも、どれを取っても見るからに質が良い。身なりも雰囲気も貴族然としていた。エルには、彼とマッシュとでは全く異質に見えた。

「ああ、そうだよ。エドガーっていうんだ。自慢の兄貴さ」

 マッシュは胸を張り、にっこり笑った。兄弟どころか親のすら知らないエルには、マッシュが眩しく写る。

 リターナーとナルシェのやり取りは、だんだん激しくなってきた。人民の命がけかっているのだから、どちらも譲らない。話は平行線のまま、厳しさばかりが増してゆく。
 しかし、ここでもう一人、リターナーのメンバーが帰還したことで風向きが変わった。リターナーの一人であるロックと、ロックと共にやって来た元帝国将軍セリスである。二人はバタバタと部屋に入って来た。

「帝国がもう直ぐここに来る! 迎え撃つぞ! 」

 ロックは部屋に入るなりそう言い、皆に訴える。だが、話が急すぎて誰もピンと来ていない。エドガーは冷静に質問する。

「ロック、それはどこからの情報だ」
「セリスだ。帝国将軍だったんだ。帝国は氷漬けの幻獣を狙って、ナルシェすら攻め滅ぼすつもりで進軍しているらしい」

 ロックの後ろ控えていた女性が、ロックに促されて皆の前に出た。すると、それと同時にカイエンの顔つきが変わった。鋭い目で彼女を睨みつける。 

「何! 見た顔だと思えば、あの悪名高いセリス将軍でござるな! ガウ殿、そこをどきなされ! 」

 ガウを突き飛ばし、カイエンはセリスの前に躍り出た。彼はその腰に下げている刀をすらりと抜き、セリスと対峙する。

「ここで会うたも何かの縁。そこへ直れ! 成敗してくれる! 」

 今にも切りかからんとするカイエンと、まるで戦意のないセリス。ことの成り行きを、皆は息を詰めて見ているしかなかった。
 しかし、ロックはセリスを庇い、カイエンの前に出た。

「セリスは帝国とは切れたんだ。俺達に協力すると約束してくれた」
「信用できぬ! 」

 カイエンが今にも斬りかかろうというとき、彼の後ろから遠慮がちに、少女の声が聞こえてきた。

「……わたしも、帝国の兵士でした」
「何! 」

 カイエンは彼の後ろにいた少女を振り返る。淡い緑色をした翡翠のような髪の少女が、カイエンを見ていた。
 少女は恐る恐る一歩前に出た。俯き加減だが、目はしっかりと前を見ている。

「ティナ……!」

 少女の顔を見て思わず口を開いたエルに、全員の視線が集まった。呼ばれたティナは、記憶を辿るような顔でエルを見つめている。
 エルは拳を握りしめ、大きく息を吸った。

「わたしも帝国の魔導師でした。ティナのことも、セリスのことも、知っています」

 エルがそう言うと、バナンや長老たちの目が鋭くなる。エルは長老達の視線を感じ、居心地が悪そうに小さく縮まってしまった。

「エルは帝国から逃げて来たんだ。独りで獣ヶ原の洞窟で隠れ住んでいたから連れてきた。エルは味方だ。俺が保証する」

 マッシュは見かねてそう言ったが、バナンたちは尚もエルをじっと観察している。ティナは不思議そうにエルを見つめていた。

「……帝国は悪だ。しかし、帝国の人間全てが悪ではない」

 エドガーが場をとりなした。マッシュもカイエンの元へ行き、仲裁に入る。

「カイエン、ここは兄貴に免じて……な? 」
「……承知、仕った」
 
 不承不承、といった様子でカイエンは刀を収めた。けれど気持ちは収まらず、奥歯をギリギリと噛みしめている。やり場のない怒りと悲しみ、どうにも出来ない悔しや苛立ちが滲み出ていた。
 セリスもエルも複雑だった。だが、今は争うべきではない。
 帝国を迎え撃つべく、ナルシェの奥の谷へ向かうこととなった。

20140809


難儀しました
話しがまとまらなくて四苦八苦しました
立場の違う人が集まって意見交換するって難しい、と
改めて思ったのでした


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