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8 新たな旅



 ナルシェは平穏を取り戻していた。
 もうすぐ朝を向かえるその街はだんだん白じみ始め、いつもの生活が始まろうとしている。そんな時、エルは目を覚ました

「うう、ん……」
「エル? 目覚めたか。身体は、痛いところはないかな? 」

 エルはジュンという老人の家に運ばれていた。彼もリターナーの一人だ。他の仲間もそこで一夜を過ごし、気を失ったエルはそこで看病されていた。
 ジュンがにこやかに微笑み、エルは頷いた。

「……ありがとう。大丈夫よ。少し、頭が痛いけれどこれくらいなら、平気」
「そうか。君も何処かへ飛んでいってしまうかと思ったと、皆心配していたよ。今、呼んでこよう」

 ジュンはそう言って部屋を出て行った。
 直ぐにバタバタと幾つもの足音が近づき、ドアの前でピタリと止まる。そっとドアが開き、マッシュが顔を出した。その脇からガウが飛び出し、エルに飛びついた。

「がうがう! エル! おきたのか! 」
「おいガウ!エルは病み上がりなんだぞ。」

 ガウはマッシュに窘められてシュンとした。そんなガウの頭を優しく撫でて、エルは微笑んだ。

「ふふ。大丈夫だよ。ありがとう。」

 続いてエドガーとロック、セリスも入って来た。
 ロックは少し顔色が悪い。彼も幻獣とティナの衝撃で吹き飛ばされ、しばらく気を失っていたということだった。
 エドガーが前に進み出て、少し屈んでエルと目線を合わせた。

「エル。もう、大丈夫なのかい? 」
「ありがとう。もう平気よ」
「あの時、何が起こったんだ? 君まで変身するのかと思ったよ」

 エドガーは、大きな手振りで肩をすくめた。カイエンもエルの顔を見に近づいた。

「幻獣が頭の中に直接話しかけてきたの。すごく怒ってた。でも、わたしにはよく分からなかったわ。それから、なにか強い力を感じたと思ったら、気を失ったみたい」
「そうであったか……。急に倒れたから驚いたでござる」

 カイエンはほっとした面もちでエドガーの影からひょいと顔を出した。エドガーはさらに続ける。

「ティナがフィガロの西へ、もの凄いスピードで飛んでいったらしい。何が起こったかはわからないが、彼女を助けなければ」
「早く行こう! 俺は、守ると約束したんだ! 」

 青いバンダナを額に巻き直しながら息巻くロックを、セリスは複雑そうな顔で見つめていた。

 セリスの切ない目は、僅かに色気を含んでいる。エルは、セリスのそのような表情を初めて見た。久しぶりに、彼女の人間らしさを感じたような気がした。

 一行は、ひとひとまずコーリンゲンを目指すこととなった。ナルシェの警護とバナンの護衛のため、カイエンとガウがナルシェに残る。他の者はフィガロ城へ向かう事となった。

 エルはティナと同じ位、氷漬けの幻獣のことが気がかりだった。けれど、同時に恐ろしくもある。早くこの場所から離れたかった。エルは迷わずティナを探すエドガー達に着いて行くことにした。

20140822


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