D+S FF-D New!夢物語


13 恋敵



 一行はホバー船でカイポへ向かっていた。アントリオンの洞窟で砂漠の光を手に入れ、早くローザの高熱病を治そうと急いでいるところだ。
 ギルバートは複雑な表情をしていた。ホバー船を運転しながらアントリオンの変貌を憂いている。
 本来アントリオンは 大人しく、人間には危害を加えないはずだった。けれど、先ほど洞窟でギルバートがアントリオンに近づくなり襲われた。セシル達がいなければ、彼は無事には済まなかった。もちろん、こんな事は過去に例のない事だ。

「何故、アントリオンが……」

 ギルバートは呟くと、セシルも苦い顔をして答える。

「最近、魔物の数が増えた。 今まで大人しかった獣たちまで襲って来る。 やはり何かの前触れか……」

 アベルとリディアは黙っていたが、考えることは同じだ。嫌な予感が当たらないように願うしかない。
 カイポに着くと、セシル達は急いでローザが世話になっている家を訪ねた。

 ローザは未だにうなされていた。彼女の汗を拭うおばあさんも、疲れているのが見て取れた。必死で看護してくれたのだろう。
 セシルは砂漠の光をローザにかざした。癒やしの光がローザに降り注ぎ、見る見るうちにローザの呼吸が穏やかになってゆく。血色の悪かった顔色も、幾分良くなった。
 ローザは目を開けた。一行やこの家のおじいさん、おばあさんに安堵が広がった。

「ううん……」

 目を覚ましたローザはまだ少しぼうっとしている。けれど、そばに立つセシルに気が付くと、ガバリと起き上がった。
 ローザはベッドに座ったまま勢い良くセシルに飛びつき、セシルは慌てて体勢を立て直す。

「セシル! 生きていたのね! よかった……」
「無茶だよ、君は……」

 再会を心底喜ぶローザだったが、セシルは渋い顔をしている。今のバロンにいても安全とは言い切れないが、かといってここで死にかけていたのでは同じ事だ。しかし、ローザはそんなセシルの胸中などまるで知らない。セシルは思わずため息をついた。

「ミストの地震で、あなたは死んだと聞いたわ。でも信じられなくて……」
「すまなかった……」

 セシルは飛び付いたローザをベッドに下ろしながら彼女に詫びた。心配をかけたのはお互い様だ。

「それより、ゴルベーザとは一体何者だ? 」

 セシルが問いかけると、ローザは顔を曇らせる。

「あなたに代わって赤い翼を指揮させる為、バロン王が呼んだの。 彼が来てから陛下は、益々おかしくなって……きっとゴルベーザが陛下を操り、クリスタルを集めてるんだわ」

 セシルとアベルは揃って厳しい顔をした。セシルの後釜に入ったゴルベーザが、事実上バロンを乗っ取ったことになる。更にローザは続ける。

「あなたが取ってきたミシディアの水のクリスタル、ダムシアンの火のクリスタル、ファブールの風のクリスタル、それにトロイアの土のクリスタル……」

 ギルバートが口を挟んだ。クリスタルの事となれば、彼とて無関係ではいられない。

「火のクリスタルは既に、彼の手の中です」

 「ギルバートの存在に初めて気が付いた」といった表情のローザに、セシルは仲間をひとりつづ紹介することにした。

「彼はギルバート。 ダムシアンの王子だ。 彼のお陰で君を治すことが出来たんだ」

 ギルバートは被っていた帽子をとると、ローザに一礼した。王族らしい優雅で美しい身のこなしで、一気に部屋の雰囲気が華やぐ。

「それから、僕の部下だったアベルと、この子はミストの……リディアだ」

 セシルが傍らにいたアベルとリディアを、ローザに見えるように前へやる。
 アベルがにっこり笑って少し頭を下げると、ローザも軽く会釈を返す。リディアは心配そうにローザを見上げて言った。

「大丈夫? 」 
「ありがとう、リディア。それに、ギルバートと、アベルね」

 ローザは一行の顔と名前を確かめるようにして見回した。彼女は改めて礼を言い、ベッドを降りる。

「ダムシアンは既に襲われたのなら、次はファブール! こうしては……ゴホゴホッ! 」

 勇ましく言ったものの、ローザは激しくむせかえった。治ったとはいえ、完治するわけでもないのだなとアベルは思った。
 セシルは激しく咳き込むローザを、再度ベッドへ座らせた。

「ローザ、無理をするな。ファブールへは僕らが行く」
「でも、ファブールへ行くホブスの山は厚い氷で覆われている」

 ギルバートそう言うと、セシルはハッとして彼を振り返った。
 セシルはリディアがファイアを使っているところは見たことがなかったし、アベルは声を失っていて魔法を使えない。このままでは現地まで行っても通れない。
 セシルは済まなさそうにしているアベルの肩にポンと手を置いた。「気にするな」と言ったものの、どうしたものかと頭を悩ませ始めた。すると、ローザがリディアに話しかけた。

「リディア。あなた、ファイアを使える? 」
「……ううん、使えない……」

 リディアは一瞬、ギクリとしたように顔を強ばらせてから否定した。しかし、ローザはそれを見逃さなかった。

「召喚士のあなたが、黒魔法の初歩とも言えるファイアを使えないはずは……うっ……ゴホッ」

 咳き込むローザに、セシルは更に渋い顔をした。

「ローザ。やはり君は待ってなきゃ駄目だ」
「私なら大丈夫。 それに、私も白魔道士。足手まといにはならないはずよ」
「しかし……」

 セシルは難しい顔をして、何としてもローザを止めようとしている。けれどローザも折れない。折り合いの付かない二人に、アベルはオロオロしはじめた。
 しかし、セシルが根負けした。ローザが言い出したら聞かないのは今に始まった事ではないし、白魔導師がいるのは確かに心強い。

「わかったローザ……一緒に行こう。今日はもう夜だ。明日の朝立とう。とにかく、今夜はゆっくりお休み」

 みんなもそれでいいかとセシルが問えば、仲間達は揃って頷いた。

「セシル…わかったわ」

 ローザは満足そうににっこり笑うと、仲間達とよろしくと握手を交わした。

 その夜、ローザは同じ家にもう一泊させてもらうことになり、他の仲間たちは宿へ入った。

 皆が寝静まった頃、アベルはひとり起きていた。疲れから一旦寝たものの、一度目が覚めると眠れなくなってしまった。リディアの小さな寝息を聞きながら再度寝ようと試みるが、却って目が冴えてしまった。
 ベッドから身体を起こしたアベルは隣のベッドをちらと見る。セシルが長いまつげを伏せて、静かに眠っていた。
 月明かりに照らされたセシルの顔は、まるで彫刻のように美しかった。思わず見惚れてしまったことに気づいたアベルは、慌てて頬を押さえる。
 ふと、ギルバートのベッドを見る。彼のベッドは空っぽだ。ギルバートはどこへ行ったのだろうとアベルは首を捻った。けれど考えても分からない。アベルは思考をセシルに戻した。

 アベルは憂鬱だった。
 アベルには、どう見てもローザはセシルが好きだと思った。そしてセシルはローザにされるがままに振り回されている。
 けれど、セシルは寝込むローザを「恋人」ではなく「幼なじみ」だとアベルに紹介した。アベルには彼の心がわからない。
 セシルは確かに黒髪の娘に恋をしているとは言っていた。けれど、二人の距離は黒髪の娘アベルとのそれよりも、ずっと近い。むしろ自分は男で通しているのだから、まるで適わないとすら思った。
 思わぬ恋敵の出現に、アベルはまたため息をついた。


20171124
ローザさんが目覚めました
しかし、ゲームしてる時は何とも思ってなかったけど、ローザさんカインのことは気にならなかったのかしらん
出発前にセシルは「カインも一緒さ」って言ってたのに、そこにはいないわけです
セシルしか眼中にないのは知ってるけど、カインも幼なじみなんだよなあと思うと薄情だななんて笑
と、言いつつ反映してませんが←
さて、アンチじゃないので彼女を変な扱いにはしないつもりですが、夢としてどうするかなーといったところです



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