18 闇の中へ
アベルもセシルも皆目した。ミストではぐれた彼に、こんなところで再会するとは想像もしなかった。
「カイン! 無事だったのか」
セシルはただ親友との再会を喜んでいる。だが、アベルにはどうしても素直に受け止めることが出来なかった。自分でも理解し難い不安感と不信感に溺れそうなほどだが、セシルはカインとの話に夢中だ。
「ああ」
強く望んでいたカインとの再会に、知らず知らず熱くなっていくセシル。しかし、対するカインはアベルにはむしろ冷めているようにすら見えた。
アベルにはそれが違和感でしかない。ますます焦燥感は増していくのに、上手く伝える方法を思い付かない。それなのに、セシルは全く気づかない。
「一緒に戦ってくれ」
「無論、そのつもりだ。だが――」
セシルはカインに頼んだ。また以前のように共に進めると信じて疑わない。彼の中で、カインへの信頼は他にないほど絶大だった。
「だがセシル。戦うのは、お前とだ! 」
カインはそう言うなり、長い槍を振り回す。切っ先をセシルに突きつけると、敵対心を露にした。
「カイン!? 」
「一騎打ちだ、セシル! 」
セシルは完全に油断していた。だが、カインは容赦なく斬りかかる。セシルは慌てて飛び退いて槍を避けるが、混乱する頭ではどうにも動きが鈍い。まるでセシルを真底恨んでいるかのような激しい攻撃に、セシルには驚きしかなかった。
「何故だっ! カイン! 何があったんだ! 」
「問答無用! 」
セシルの混乱は深まる。突然の展開に、彼は迷いを捨てられない。どうにか剣を抜くことはできたが、とても渡り合えている状態ではなかった。けれど躊躇なくカインは激しい攻撃を繰り返し、セシルを一方的に攻め立てている。
防戦一方のセシルだったが、遂に体勢を崩した。カインの槍に脚を払われてしまったために、重力に従って床へ倒れ込む。その隙をカインはすかさず狙って飛びかかった。
「とどめだ──」
「セシルさん!!! 」
セシルが手も足も出せないでいるところへアベルが割って入った。大声でセシルの名前を叫び、一瞬で剣を抜く。アベルはカインの槍から繰り出される重い一撃を受け止めた。
「うっ……」
アベルは思わず呻き声を漏らす。剣ごと潰されるかと思うほどの衝撃だったが、自分とセシルを守ることはできた。
カインは目を見開いてアベルを見た。「まさか」といった表情だったが、それを一瞬で消して撃ち合わせていた槍を一旦離した。そしてすぐさま次の攻撃へ移行する。
「アベル……! 無茶を、するな……」
セシルもまた、アベルがカインの渾身の攻撃を受け止めたことに驚いていた。しかし、次のカインの一撃で、アベルは敢えなく吹っ飛ばされ、クリスタルルームの壁に身体を強く打ち付けた。
セシルはようやく迷いを消した。絶え間なく槍を突きつけるカインに応戦しながら立ち上がり、今度は対等に剣を交えた。
カインは今、味方ではない――信じたくない現実を、セシルは無意識に受け止める準備を始めていた。
「まさか、お前もゴルベーザの手の内か! 」
「今、楽にしてやろう」
噛み合わない会話と激しい斬り合いが続く。
ヤンはギルバートと共に状況を窺っていた。初めはセシルの知り合いかと思ったが、どうも事情が複雑そうだと踏んだ彼は、そろそろ助太刀すべきだろうかと考えていた。
そんな時、突然クリスタルルームの扉がバンと開いた。思わず皆が振り向いた先には、心配そうにしているリディアと、悲鳴のような金切り声を上げたローザが立っていた。
「やめて!! 」
鶴の一声、とはよく言ったものだ。繰り広げられていた戦闘は瞬時に終わった。
「ローザ! 」
セシルとカインの声が重なる。ローザはカインの姿を確認すると、泣きそうな顔をした。
「カイン、あなたまで! 」
「う……ううッ! 」
ローザの一言で、突然カインが頭を押さえてうめき声を上げた。彼はよろよろとその場にへたり込んでしまう。
「俺を……見るな……! 」
そう言うカインは急に弱々しくなった。先程までの勢いは完全に失われている。
すると、どこからともなく低く、不気味な声が降ってきた。男であろうその声は、カインを責めるように部屋中に響き渡る。
「何を血迷っているのだ、カイン」
ぐにゃりと空間が歪んだ瞬間、黒ずくめの鎧とマントの大男が現れた。
「ゴルベーザ! 」
ギルバートが顔をひきつらせて叫ぶと、セシルの顔つきがより厳しいものに変わった。
「きさまがゴルベーザ……」
「お前がセシルか。 会えたばかりで残念だが、これが私の挨拶だ! 」
そういうなり、ゴルベーザは腕を大きく払った。その瞬間、風を切るような衝撃波がセシルを襲った。
20190516
D+S FF-D New!夢物語
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