20 空を取り戻すためには
戦いを終えたセシル一行は宿屋へと通された。傷だらけの身体を癒さなければ、とても旅を続けることは出来ない。それほど彼らはボロボロだった。
結果として、クリスタルは守れなかった。けれど、それでもバロンとの勝ち目のない戦いで最前線に立ったセシル達を、ファブールの民は歓待した。町の者の厚意でふかふかのベッドや食べ物などを提供され、何一つ不自由しなかった。
「ゴルベーザに対抗するには、飛空艇が必要だ。……しかし、飛空艇はバロンでしか造れない」
セシルはベッドの縁に座り、アベルによって包帯を巻かれたばかりの腕を眺めながら思案する。順調に回復してはいるが、セシルは特に怪我が多かった。
飛空挺の技術はバロン独自の物だ。彼は幼少からよく知る陽気で豪快なバロンの飛空挺技師長の顔を思い浮かべる。今や魔物まで兵力にしているバロンで、彼は無事に過ごしているだろうかとセシルはため息をついた。
「はて、バロンに侵入できる方法はないものか……」
ヤンは彼の妻から預かった差し入れの菓子を部屋の隅にある棚へ置くと、セシルが座っているベッドの側へ移動した。
「バロンの主力は赤い翼だ」
あごひげを撫でながら頭を捻るヤンに、セシルが答えた。
「比較的、海兵部隊が手薄だ。侵入するなら海からが良いだろう」
セシルの言葉に、彼の向かいに座るアベルも頷く。アベルは巻き終えた包帯の端を、残りの束へ折り込んでいる。
バロンはこれまで、空を征することに総力をかけていた。カインが率いていた竜騎士団もその一つだ。とりわけ飛空挺団は花方だった。
しかし、陸上部隊と特に海兵部隊は予算も兵員も簡素な方だ。バロンは世界でもトップクラスの軍事国家だが、兵力の偏りが大きい。
「問題は、船をどこで手に入れるか、か……」
アベルがそう言うと、ヤンは大丈夫だと自身の胸をどんと叩いた。
「ならば、私から王に頼んでみよう。そなたたちには世話になった。王も協力は惜しまぬはず」
「頼む……! 」
セシルは軋む身体を少し起こしてヤンの方へ向けた。どんと構えるヤンは頼もしい。
「ところで、あの竜騎士は一体……? 」
「カインと言って、僕の……親友だった。共にバロンを抜けようと誓ったのに……」
ヤンの問いに、セシルは暗い顔で答える。アベルはそれを、いたたまれない気持ちで見ていた。
「そうであったか……」
ヤンは申し訳なさそうに視線を落とした。
部屋の空気が一気に重くなる。深い悲しみに囚われたように、皆が黙りこくってしまった。
「ともかく、今日はゆっくり休もう」
暗い顔で肩を落とすセシルを気遣うように、ギルバートは皆に声をかけた。
重苦しい雰囲気とは対象的に、ベッドですーすーと寝息をたてるリディアの寝顔は天使のように穏やかだ。うっかりそれを覗き込んでしまったアベルは、思わず頬が緩むのを感じる。どうか、この子の未来が幸せであるように。アベルはそう願わないではいられなかった。
D+S FF-D New!夢物語
- 20 -
prev * next
しおりを挟む
MODORU