21 大海原の主
雲ひとつない晴れ渡った空から、燦々と日差しが降り注ぐ。それを受けた揺れる水面は、煌めきながらその模様を様々に作り出す。どこを切り取っても美しい。壮大な風景が広がっている。
ギラギラとした直射日光も、それをもろに受けて暑い甲板も全く気に留めず、アベルとリディアはひたすら海を眺めていた。
リディアは海を見るのも、海に出るのも、船に乗るのも初めてだった。そしてアベルもまた、空から海を眺めることはあっても、船は初めてである。遠くまで、どこまでも続く海に、リディアと共にひとしきり驚き、感激していた。
「バロンに着いたら、どうされるおつもりで?」
はしゃぐリディアとアベルの姿を微笑ましく見守っていたヤンは、同じように彼らを眺めていたセシルに問いかけた。
「先ず、飛空艇技師のシドに会おう。 彼なら飛空艇に精通しているし、力になってくれるはずだ」
「その御仁が無事だとよいが……」
ヤンの返事に、セシルも頷く。まさに、彼もそれを心配していた。
「寒いの? 」
リディアがギルバートに声をかけた。アベルがつられて振り向くと、ギルバートは青い顔をして震えていた。
「いや、何でもないんだ……」
ギルバートはそう言うが、土のような色の顔をしている。完全な船酔いだ。
アベルはギルバートのために水を取って来ることにした。船室へ続く扉の方へ歩きだす。するとその時、船が大きくガタンと揺れた。大きな衝撃のためにリディアは尻餅をつき、そのまま甲板の上に転がって行ってしまった。
「何だ? 」
怪訝な顔をしたセシルが回りを見回す。船の故障なのか、それともモンスターに遭遇したのか。もし後者なら、闘わねばなるまい。
セシルは足を止めたアベルと共に、モンスターの気配を探し初めた。
「まさか……! 」
「ホントにいたのか」
程なくして、船乗りたちが騒然とし始めた。先程のギルバートよりもさらに青い顔をして、落ち着きなく船の上で逃げ惑っている。
「どうしたんだ!? 」
セシルが慌てる乗組員達に声をかけると、船長が蒼白の表情で答えた。
「リヴァイアサンだ……! 」
セシルがそれは何かと聞く前に、リディアの悲鳴が上がった。セシルとアベルが声のする方へ振り向くと、リディアがまさに船から投げ出されたところだった。
「リディア! 」
リディア以外の者は皆、彼女の名を叫んだ。間髪入れずに、ヤンがリディアを追って海へ飛び込む。
船は再び大きく揺れた。甲板が急な山道のような角度に傾いたまま、さらに揺れる。セシルは必死で近くの柱にしがみつく。同じ所にしがみついているものの既に振り落とされそうになっているアベルを支えてやり、何度も続く大揺れに耐えた。
「うわあ! 」
セシルたちとは離れた場所にいたギルバートが、甲板を滑っている。さらに船が大きく揺れ、遂に彼も海へ落ちて行く。セシルとアベルは彼の名を呼ぶが、遂に返事は聞こえなかった。
あんなに穏やかだった天候は、いつの間にか嵐に変わっていた。まるで嘘のように激しく海が荒れている。
あれよあれよという間に船は真っ二つに折れてしまった。折れた甲板の隙間から、青白いリヴァイアサンの顔が見える。アベルの意識はここで途切れた。
201805024
D+S FF-D New!夢物語
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