24 双子の魔導師
アンは如何にしてセシルを止めようかと考え始めた。行ったきり誰も戻らない山など危険すぎる。それなのにセシルはやる気満々で、罠かもしれないなどとは微塵も思っていない様子だ。
アンが眉間にシワを寄せて困っていると、長老がアンにも一つ提案をした。
「そなたも、何か乗り越えなければならぬものがあるようじゃの」
「……え? 」
アンは長老を見た。長老は何やら難しい顔をして、アンに言う。
「自分を偽りなさるな」
長老は、何もかも見透かしているような視線でアンを見ている。
アンは思わずたじろいだ。生きるための手段とはいえ、自分や回りの者を欺き続けていた自覚はある。
「そなたも試練の山へ行きなされ。自分の本質を見いだせるじゃろう」
アンの顔がさっと青くなった。この老人は、自分達を処刑するつもりなのだろうか。アンは誰も帰ってこない山へなど行きたくない。
「しかし、主力が暗黒剣では辛かろう。 魔道士を伴に付けてやろうぞ」
長老はそう言うと、パンパンと手を叩いた。
「パロム! ポロム! 」
すると、一人の幼い女の子が部屋へ入ってきた。彼女の顔つきはしっかりしているが、リディアよりもさらに幼く見える。その女の子は茶色い長い髪を高い位置でひとつにくくり、ゆったりとした魔導師のローブに身を包んでいた。
「何か? 」
女の子が長老に一礼すると、長老は首をかしげた。
「ポロムよ、パロムはどうした? 」
「パロムったら、また! 」
ポロムが腕を組んでぷりぷり怒り出した瞬間、ぼわんと音を立てて突然白い煙が上がった。
「おめーがあの時のバロンの奴か。じーさんの命令だから仕方なく手を貸してやるんだから、ありがたく思えよ! 」
男の子はそういうと、腕を頭の後ろ手組んでふんぞり返るようにして立った。彼は女の子と同じような格好をしている。
「……この二人が? 」
思っていたよりも随分と若い助っ人に、セシルは目を丸くするばかりである。セシルもアンも、まさか幼児が出てくるとは思わなかった。
「さよう。 双子の魔道士、パロムとポロムじゃ。 修行中の身じゃが、助けになるじゃろう。 まだ幼いが、その資質はワシが保証する」
長老がそう言うと、パロムはますますふんぞり返る。いかにも生意気そうな顔つきで、チラリとセシルに流し目を寄越す。
「このミシディアの天才児、パロムさまがお伴してやるんだから、ありがたく思うんだな! 」
パロムが言い終わるかどうかというタイミングで、ポロムほ「生意気ですみません」と謝り、すかさずパロムの頭を殴りつけた。痛いと騒ぐパロムに、怒った長老が声を上げた。
「パロム!お主らの修行も兼ねておるんじゃ!」
少々叱られたところで全く気にしないパロムは、今度は胸の前で腕を組んだ。アンはこれは大物になるなと感心していたが、セシルの顔には「困ったな」とはっきり書いてある。セシルは目の前の双子のやり取りに、呆気に取られていた。
「セシルさんと、アンさんとおっしゃいましたね。 よろしくお願いしますわ。ほら、パロムも! 」
「よろしくな、あんちゃん! 姉ちゃん! 」
双子の登場で、重苦しい雰囲気がいつの間にか明るくなった。不安でしかなかったアンも、少し落ち着いた。
黒魔道士のパロムと白魔道士のポロム。そして、暗黒騎士のセシルと騎士のアン。
アンも多少の魔法は使えるものの、やはり本職がいると心強い。セシルはすうっと息を吸い、大きく吐き出した。
「行こう」
セシルがアンに声をかける。アンは歯切れよく返事をし、セシルと目を合わせた。二人は目配せをし、試練の山へ登ることを決意した。
20190531
D+S FF-D New!夢物語
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