D+S FF-D New!夢物語


40 竪琴



 洞窟の中は協力な磁力に満ちていた。鎧も盾も剣も、金属でできた物が異様に重くなる。身動きが取れなくなるので、セシルは鎧一式を早々に脱いで道具袋に入れてしまった。しかし、道具袋さえも持ち運びに苦労する始末で、一行は木製の荷車を引いて歩いている。

「噂に聞いた通りだったな……」

 金属製の武器は、防具でさえも使い物にならない。セシルは半信半疑でトロイアで買っておいた木の棒を手に、思わずため息をついた。

「案ずるな。私の魔法がついておる」

 テラはセシルの肩に大きな手のひらをぽんと乗せた。

「セシルさんっ! これ、いけそうです」

 アンが嬉々としてセシルを振り返り、弓と矢を掲げた。

 アンも剣が使えないので、初めはセシルと同じ棒を持っていた。だが、彼女の腕力では魔物相手に全く使い物にならない。そこで、たまたま落ちていた弓と矢を拾い、アンは戦線に復帰した。

「アン君の力では却って危険だ。無理はするな」

 セシルがそう言うが、アンは構わず魔力を込め始める。同時に、前方の岩影に魔物が見えた。

「アン」

 下がるんだ──セシルがそう言いかけた時、アンは呪文を完成させた。しかし、その魔力は魔物には向かわず、停滞している。

「ファイア! 」

 アンのファイアは矢尻に集まった。そして彼女の射た矢は魔物をめがけて飛んで行くと、魔物を爆破して仕留めた。
 セシルはぽかんとし、アンは目算通りに事が運んだことを喜んだ。ヤンは素晴らしいと言いながら拍手喝采である。

「ほう。これは」

 テラが感心したようにアンを見た。彼の瞳は好奇心に燃えている。

「どうしても力では劣るから、同時にやればいいんだと思って」

 アンはにっこり笑った。

「剣と合わせたら、もっと強くなれそうだ」

 セシルがそう言うと、アンも頷く。彼女の長年の悩みと弱点が多少解消されつつあった。

「なほるど。魔法剣じゃな! よし、これでまたゴルベーザ討伐に一歩近づいた! 」

 テラは興奮して、鼻息を荒くする。一行は洞窟の奥へとさらに歩を進めた。
 しかし、磁力を操るダークエルフには敵わなかった。魔力に長けている分、物理的な攻撃に弱いのはセシルも分かっている。だが、ダークエルフはそれを補うように磁力を持ってセシル一行の装備を制限していた。

 ダークエルフに魔法は効かなかった。そして、いくら攻撃しても木の棒ではダメージを与えられない。それなのにダークエルフの攻撃はまともに入る。勝ち目がない。

 撃たれ強いヤンが倒れた。テラもシドもぐったりと床に寝そべり、セシルも片ひざをついでに歯を食い縛っている。アンはセシルの背に庇われているが、魔法も木の矢も太刀打ちできなかった。

「剣さえ使えれば……くそ」

 セシルが悔しそうにつぶやいた時、ひそひ草からギルバートの竪琴の音が聞こえて来た。
穏やかで暖かな旋律が洞窟に響く。一行は癒された気分だったが、ダークエルフは急に苦しみ始めた。

「セシル! この音色が流れている間は、奴も磁力を操ることは出来ないはずだ! 剣を! 剣を装備するんだ! 」

 葉っぱからギルバートの声がした。セシルとアンは道具袋から剣を引っ張りだし、持ち代えた。
 磁力はいつの間にか消え失せ、金属製の武器も普通に扱えるようになった。

 剣さえ扱えれば、呆気ないほど早く決着が着いた。ダークエルフを倒し、セシルはひそひ草を通してギルバートに報告する。

「やったぞ、ギルバート! 君のお陰だ! 」
「クリスタル、取り返したよ」

 セシルの脇からアンも顔を出す。葉っぱの向こうでギルバートがほっとしているのがわかった。
 しかし、葉っぱの向こう側が俄に騒がしくなった。看護師の声が心なしか慌てているように聞こえる。

「……倒れてないといいけど」
「そうだな。トロイアに着いたらまた見舞いに行こう」

 アンが心配そうにセシルを見遣ると、セシルも表情を暗くする。無理をさせたかもしれない。けれど、ギルバートなくしては勝てない戦いだった。
 土のクリスタルを手に入れた一行は、トロイアに向かって歩き始めた。

20190809



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