41 声
一行が扉を開けると、神官たちが一斉に振り向いた。神官の間は俄に華やいだ雰囲気に包まれる。
8人の神官たちは、セシルたちの表情だけでクリスタルの無事を確信し、彼らを取り囲んだ。そして、セシルがクリスタルを見せると、わっと歓声が上がった。しかし、歓喜する神官たちに水をさすように、男の声が響き渡る。
「クリスタルを手に入れたようだな」
聞き慣れた声だ。低い、落ち着いた声に、セシルは幾度となく彼の存在を感じ、時には安堵することさえあった。だが、今その声はただ冷たい。セシルの表情が悲しく曇る。
アンは思わずセシルのマントを背後からきゅっと掴んだ。そのまま天井を見上げるが、そこには誰もいない。
「この声は…! 」
シドがはっとした顔でキョロキョロと辺りを見回している。竜騎士の姿をさがすが、やはり本人は見当たらない。
「カイン、」
何か言いかけたセシルを無視するように、カインの声が木霊する。
「表に出て飛空艇に乗れ。ローザの居場所まで連れてってやろう」
それだけ言うと、カインの声はあっさり消えてしまった。セシルは悔しそうな表情で、高い天井を仰いだ。
「セシルさん…」
アンがセシルの顔を見上げると、セシルも彼女の顔を覗き込む。不安そうなアンの瞳に、同じように不安そうな自分の顔が映っていた。
セシルはアンに向き直ると、そっと抱きしめた。彼よりも幾分背の低いアンの肩に顔を埋めると、セシルは深く息を吐き出す。
アンが「泣いているのだろうか」と思うほど、セシルは静かだった。身体をぎゅうと抱きしめられながら、アンもセシルの背をさすった。
神官たちは事情を知ると、セシルたちに快くクリスタルの持ち出しの許可を与えた。彼らは急いでギルバートの元へ顔を出し、飛空挺へと走る。バタバタと乗り込むや否や、シドは操縦席についた。
「お、落ち着くんじゃぞ! わ、わ、罠かもしれんしの! 」
シドは大きな声でそう言うと、震える手でレバーを引こうと手を伸ばす。だが、その手をセシルが慌てて止めた。
「シド! 待て! これは脱出装置だ」
「あ、あ、あら…? 」
青い顔をするシドの肩に、セシルは手のひらを置いた。地図を確認していたヤンも、驚いて彼らに近づいて来る。
「シド、落ち着くんだ。おそらく、まだローザは無事だ」
「交渉材料じゃからな」
テラの言葉に、セシルも頷く。
セシルは腰の道具袋に目を遣った。中には土のクリスタルが入っている。ローザとクリスタルとを交換する、というのがカインとの約束だ。
「そうじゃな。だが、ローザは昔からよく知っとる。それだけに気が気ではないわい」
シドはドンと操縦桿の台に拳を叩きつけた。
「セシルさん! シドさん! こっちは整いました! 」
飛空挺の後方でエンジンの様子をチェックしていたアンの声が響いた。セシルとヤン、親父2人は頷き合うと、遥か上空を見据えた。
20200103
D+S FF-D New!夢物語
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