42 生命にかえても
飛空艇を飛ばすと、すぐにカインが迎えに来た。彼の飛空艇に付いていくと、やがて高い塔にたどり着く。一行はその塔を登り、ようやくゴルベーザの居場所を突き止めた。
「ご苦労、諸君」
ゴルベーザは低いくぐもった声でそう言った。彼はカインを従え、セシル一行の前へ出る。
「ローザは何処だ」
セシルは張り裂けそうなほどの殺気に満ちた目でゴルベーザを睨みつけた。しかし、ゴルベーザはまるで堪えない。
「クリスタルが先だ」
「ローザは無事なんだろうな」
「無論、無事だ」
セシルの問いに、ゴルベーザは当たり前だと言わんばかりに軽くあしらう。
「さあ、クリスタルを貰おう」
ゴルベーザは、その大きな掌をセシルに差し出した。
セシルはクリスタルを手に取ると、ゴルベーザに手渡した。本当ならば渡したくないのが、ローザの命がかかっている。今の彼には選択肢など無かった。アンはそれを固唾を呑んで見守っている。
一方で、アンは少々複雑な心境でもあった。
アンとてローザの事は心配だったし、今となっては全く知らぬ仲でもない。無事である事を願っているのは皆と同じだ。
だが、どう見てもローザはセシルの事が好きだ。それも、長い間、幼い頃からずっとだったとアンは聞いている。それを分かっていて、彼女が居ない間にセシルと恋仲になってしまった。
もちろん、この結果はセシルとアンがお互いを選んだ結果で、そこに罪はない。だが間が悪すぎた。
果たして自分はどんな顔でローザを迎えるべきだろうかとアンは悩んでいるが、一向に答えは出なかった。
アンが悶々としているうちに、ゴルベーザは既にクリスタルを手にしていた。彼はそのままクリスタルを懐に収めると、くるりと踵を返す。部屋を出て行こうとするゴルベーザに、セシルは怪訝な顔をした。
「ローザを返せ」
「ローザ? 何の事だ」
「……何!? 」
ゴルベーザはあっさり裏切った。シラを切り、あくまでも取り合わないつもりだ。ゴルベーザはさっさと歩き去り、ドアを開けようとしている。
テラは顔を真っ赤にして、大声で怒鳴りつけた。
「どこまでも汚い奴! 」
「老いぼれに用は無い」
「きさまに無くても、私にはある! 」
テラは一人でゴルベーザを追った。走りながら魔力を練り上げ、追いつく頃には完成していた。
「思い知れ……! アンナの痛みを! 」
テラはバイオ、次いでファイガを唱えた。それぞれ高位魔法で、テラ自身の魔力も高い。さらに感情も
昂って、威力は爆発的だったはずだった。しかし、ゴルベーザには全く歯が立たず、かすり傷1つ付いていない。
「所詮老いぼれのお前に、私を倒す力など無い! 」
ゴルベーザは蔑むような目でテラを見下ろした。けれど、テラは攻撃を止めない。彼の募りに募った怒りと恨みは、そんなことでは揺るがなかった。
テラはゴルベーザにサンダガ、ブリザガと続けて浴びせたが、やはり全く効果がない。彼は攻撃を止め、深く息を吐いた。テラの纏う空気が変わった。
テラは、再度精神を集中し始めた。それまでとは比べ物にならないほどの魔力が、彼を中心に渦巻き始める。
「テラさん……、まさか……」
アンは愕然とした表情で、食い入るようにテラを見つめた。
テラは今、通常の魔法とは明らかに違う使い方で魔力を引き出している。それは命をも削ってしまう、暗黒剣にも似た危険なものだった。
アンは隣に立つセシルのマントをキュッと握って、彼を見上げた。既に泣きそうな顔をしているアンを見て、セシルもハッとした。
「メテオを使う時が来たか……」
テラはそう言うと、より魔力を強める。だが、年老いたテラの体力や魔力では、メテオを使うには脆弱過ぎた。彼をの生命力を大幅に消耗してでも魔力を引き出さなければ、発動させることすらできない。
テラが無理をしようとしているのは、セシルやヤンにも分かった。
「テラ、やめろ! そんな事したら……」
「無茶な、そなたの方がもたぬ! 」
セシルとヤンが驚いて声を上げるが、テラは既に覚悟を決めていた。彼にとって、愛娘の仇を取ることだけが、彼の生きる理由だった。もう誰の声も届かない。
「この命 全てを魔力に変えて、きさまを倒す!! 覚悟せい! ゴルベーザ! 」
テラは魔法を完成させた。彼の生命をかけた魔法は最後の呪文を残すのみで、発動の時を待っている。
「メテオ! 」
テラは最後の呪文を唱えた。その瞬間、無数の隕石が落下し、ゴルベーザに降り注ぐ。
「ば、馬鹿な、メテオ、だと……!」
ゴルベーザはうめき声を上げてその場に倒れた。だが、まだ息はある。
一行は一斉にテラに駆け寄った。だが、テラは既に虫の息だった。
2020/04/24
こちらもお久しぶりでございます。
夜中のテンションで書いたから、後から変なところが出てきたりして……!
D+S FF-D New!夢物語
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