43 君しか見えない
テラが倒れた。ぜいぜいと息をしているものの、いつ絶えるともわからないほど弱々しい。
「退くぞ、カイン」
ゴルベーザはよろめきながらも立ち上がると、カインと共にその場を去ろうとする。しかし、カインは動かない。彼はそのままどさりと崩れるように倒れてしまった。
「今のメテオで術が解けたか…… まあよい、きさまは用済みだ。 この借りは必ず返す」
「逃すか! ゴルベーザ! 」
セシルは剣を抜いて飛び掛かった。ゴルベーザを追いかけて斬りつける。だが、ゴルベーザは魔力の壁を作り出してセシルの剣を弾いた。
「ぐ……なめるな! 」
ゴルベーザは続いてセシルをも払いのける。だが、セシルの顔を間近で見た瞬間、驚いたような素振りで素早く飛び退いた。
吹っ飛ばされたセシルは床にどさりと落ちて呻き声を上げた。
「ぐっ……何故、止めを刺さない……」
「お前は……? 」
セシルの質問には答えず、ゴルベーザは困惑したように片手で自身の顔を覆う。
「お前は、一体……う、ぐぐ……」
ゴルベーザは頭を抱えて苦しそうに呻き始めた。ヨロヨロとして、足元が覚束ない。
セシルは怪訝な表情で、床から半身を起こした。
「この勝負、一先ず預ける……!」
そういうと、ゴルベーザは今度こそ姿を消した。
ゴルベーザがいなくなると、アンは急に身体が軽くなった。ゴルベーザがそこにいるだけで、重苦しい重圧感を感じていたのだ。彼の強い魔力のせいで動けなかった。
ゴルベーザは高度な魔法を操る優れた魔道士だ。その力をもっと世の中のために使えば良いものを、とアンは残念でならない。
アンはケアルラの準備をしながらセシルの元へ向かった。
「セシル殿! 」
ヤンはテラを抱えながら、倒れているセシルを呼ぶ。心配そうな顔して、セシルの様子を伺う。シドは血相を変えてセシルのもとへ走った。
「大丈夫か!? 」
「ああ、さすぎさがにメテオが効いたらしい……まともに喰らえば危なかったが」
アンはケアルラを唱えた。セシルの傷が塞がってゆく。メテオの影響で、図らずも手加減される事となったのが幸運だった。
「ありがとう、#アン」
セシルは立ち上がると、アンとシドと共にテラの元へ走る。
テラはさらに息が苦しそうだ。
「倒せなんだか……」
「喋っちゃいかん! 」
悔しそうに呟くテラの手を、シドがぎゅっと握った。テラは目を開けているが、既に焦点が合っていない。
「これも……憎しみに囚われて戦った報いかもしれん……」
テラの目から涙が零れ落ちた。
「アンナの仇を、たの──」
テラはそれきり喋らなかった。腕も足もだらりと力なく垂れて、彼を抱えて座るヤンの腕から滑り出る。
ヤンは目を強く瞑ると、無念そうに俯いた。
「テラ」
セシルはテラを呼ぶ。けれど、いくら待っても返事はない。
アンは溢れる涙をそのままに、テラの顔を目に焼き付けるようにじっと見ていた。
部屋の隅で、カチャリと金属の擦れる音が聞こえた。セシルが振り向くと、カインが起き上がっていた。頭が痛むのか、彼は右手で頭を抑え、歯を食いしばっている。
「カイン……」
セシルの声に、カインははっとした顔で彼を振り返った。そして、互いに目が合うと、カインは愕然とした表情に変わる。
「セシル! す、すまん…… 俺は、なんという事を……」
セシルはそれは違うと左右に頭を振った。
「操られていたんだ。仕方ないさ」
「しかし……意識はあったのだ。 俺はローザを……」
セシルは瞠目した。ローザを助けに来たはずが、すっかり忘れていた。セシル一行はガバリと顔を上げた。
「ローザは!? 」
「この上だ、時間が無い! 」
そう言うと、カインはすっと立ち上がった。セシルたちを先導し、走り始める。
階段を駆け上がり、ローザが監禁されている部屋のドアをぶち破った。バロンの隊長二人とモンク僧長にかかれば、鍵のかかったた重厚なドアなどさしたる問題では無かった。
アンはカインについてはまだ複雑な心持ちではあるものの、久しぶりにセシルとカインの息の合った様子が見られて心が弾む思いだった。旅を始めた頃の、純粋な尊敬の念を思い出す。
「セシル!」
開放されたローザは、真っ先にセシルの胸へ飛び込んだ。涙でぐちゃぐちゃになってもこの人は美しい。アンは美しくしさを羨みつつ、チクリと胸が痛んだ。
とはいえ、さぞ怖い思いをしただろうと、思うとアンは何も言えなかった。セシルも大人しくされるがままになって、ローザを受け止めている。
「私、あなたが来てくれると信じていたわ……」
涙を拭いながら、ローザは微笑んだ。そしてまた、セシルの身体に腕を回す。
「すまなかった。怖い思いをさせて…」
セシルはローザの腕をやんわり外しながら言った。ローザに困惑の色が浮かぶ。
その時、カインが口を開いた。
「ローザ、すまなかった……」
「カイン!? 」
恐れと驚愕の混じった表情で、ローザは弾かれたようにはカインを振り返った。カインは辛そうに顔を背ける。ローザが「どういうことだ」とセシルに目で訴えた。
「正気に戻ったんだ。カインはゴルベーザに操られていた」
「許してくれ、ローザ。操られていたばかりじゃない! 俺は、君に側に、いて欲しかったんだ」
ずっと好きだった、とカインはローザの目を見る。いつも勇敢な彼も、このときばかりは震えていた。
04/24/2020
カインの一世一代の大告白ですよ!!!
ローザさんセシル大好きなのは知ってるけど、カインのことももうちょい見てあげて……!
なんて謎の親戚のおばちゃん目線で見てたもんです。
ローザがセシル好きすぎて、カインは辛かっただろうね……。
セシルもはじめはのらりくらりやってたし。
なのに仲良し三人組やってた。
そりゃつけ込まれるわ
D+S FF-D New!夢物語
- 43 -
prev * next
しおりを挟む
MODORU