D+S FF-D New!夢物語


50 地面の下へ



 セシル一行は夜明けとともに飛空艇でバロンを飛び立った。真っ直ぐアガルトへ向かう。

 アンはセシルと同様に、飛空艇団にいた頃はよくアガルト周辺の上空を行き来していた。だが、見慣れた景色とは少し違っている。セシルから聞いた通りアガルト村のある島の北部にあったはずの山が消えて、代わりに大穴が空いていた。

「すごい。噴火の後、周辺への被害は無かったんでしょうか」

 甲板から外を見て唖然とするアンに、セシルは微笑んだ。

「爆発的な噴火だったが、溶岩が流れ出たり、噴石したりすることはなかったんだ。山の周囲に人里もない。だから、大丈夫だ」

 単純に、マグマの石の作用だろうとセシルは言うが、アンはこれだけの威力があった事にただ驚いた。

 甲板のセシルとアンの反対側では、ローザが顔を青くしていた。地底がどんな場所なのか、どんな環境なのか分からない。それに、おそらくまたゴルベーザとも対峙するだろう。
 ローザは不安に押しつぶされそうで、震える手で甲板の柵をぎゅっと握った。そして、そんなローザをカインは少し離れたところからチラチラと気にしていた。

「ローザ、顔色が悪い。大丈夫か? 」

 カインはローザの隣に立った。震えるローザの手に触れるべきか否かを迷っている。すると、ローザが彼を振り返った。もともと色の白いローザだが、今はさらに血の気が引いて青白い。

「大丈夫よ、ありがとう。ただ、緊張しちゃって」

 ローザは不安そうにカインを見上げる。

「俺も、みんなもいる。頼ってくれ」

 カインはローザの肩に手を置いた。彼の手も緊張で震えていたが、ローザの表情は少し和らいだ。

「そうね。ありがとう、カイン」

 ローザの微笑みに、カインは舞い上がりそうな心持ちだ。今なら何でも出来る気がした。
 
 飛空艇はいよいよ大穴に差し掛かった。シドはゆっくりと高度を落として、艇は穴の中へと入って行く。やがて完全に地底へ降りると、一行が考えていたよりもずっと広い空間が広がっていた。

 当然ながら、地底では地上のように空は見えない。時々出っ張っている岩や壁に気を付けなければならないが、意外なほど広かった。飛空艇を飛ばすには十分な高さと広さがある。陽の光が入らないので薄暗いが、川のように流れるマグマが灯りを点したように明るかった。
 しばらく飛空艇で周辺を飛んでいると、一行の前方に見覚えのある飛空艇が飛んでいた。彼らが見間違うはずもないそれは、ゴルベーザに奪われたままになっている赤い翼だ。

「あれは! 」

 セシルが息を飲んで指差した方向では、すでに戦いが始まっていた。

「あれは、戦車? でしょうか…?」

 まだ少し遠い戦場をアンは目を凝らして見つめた。赤い翼を相手に何台かの戦車が隊列を組んで、赤い翼を砲撃している。

「一足遅かったか! 」

 ヤンは悔しそうに、赤い翼を睨みつける。

「戦っているのは誰だろう」

 セシルは首を撚る。皆疑問に思うが、誰も分からない。

 地上では、恐らくどの国も戦車など持っていない。世界一の軍事国家の軍人、それも隊長であったセシルやカインですら戦車を見るのはこれが始めてだった。
 赤い翼と戦車部隊の攻防は激しさを増すばかりだ。だが、周りを岩で囲まれてしまった一行は激戦地を進むしか選択肢が無い。シドは意を決して叫んだ。

「ええい! 強行突破する! しっかり掴まっとれい! 」

 そう言って、シドは飛空艇で地底と交戦する赤い翼の近くを横切る航路を取った。戦車も赤い翼も攻撃は激しく、流れ弾がエンタープライズにも飛んでくる。無理な運転と爆撃の衝撃で、セシル一行は防御体制を取る間もなく甲板に叩きつけられた。

「痛いか? エンタープライズ! 辛抱してくれい! 」

 シドの叫びと爆撃音とが響き渡る。アンはまた気分が悪くなったが、それを察したセシルがアンを抱きしめた。セシルがアン背をさすってやると、アンの吐き気はだんだん遠ざかって行った。
 アンは少し落ち着いた。けれど、飛空艇の状況は最悪だ。機体のあちこちから黒煙が上がっている。みるみるうちに高度を下げる機体に、一行はいよいよ震え上がった。

「落ちる! 」

 セシルとアンはお互いにより強く抱き合った。
 カインは自身を振るい立たせて、床かに転がっていったローザ目掛けて一目散に走る。

「ローザ! 」

 カインはローザを庇うように覆いかぶさり、さらに床を転がってゆく。遂にエンタープライズは墜落した。

 セシルはゆっくりと身体を起こすと、胸に抱いていたアンを覗き込む。アンは目を白黒させているが、ひどい怪我はしていない。
 周りを見渡すと、自分たちはまだエンタープライズの甲板の上にいた。外に投げ出されていなかった事に、セシルはほっと息をつく。
 ヤンやシドもフラつきながらも身体を起こしているし、カインもローザを抱き起こそうとしていた。飛空艇は壊れてしまったようだが、幸い皆無事だ。落ちた所もマグマの無い場所で、その火が機体に燃え移る心配も無さそうだった。

「エンタープライズが いかれてしもうた。このまま飛ぶのは危険じゃな。せっかく整備したのに、トホホ」

 シドはがっくりと方を落とした。
 一行は飛空艇から脱出し、助けを求められる場所を探す事にした。

2020/05/15



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