D+S FF-D New!夢物語


51 ラリホー!



 セシル一行は地底を歩いた。風はほとんど無く、とにかく暑い。熱気は川のように流れるマグマと地熱による物だろう。額を流れる汗を拭い、セシルは辺りを見回した。
 薄暗い地底の大地は、マグマと岩に囲まれている。木や山などの植物は見当たらない。

「城のような建物が見えますぞ」

 ヤンが何か建物を見つけた。それは少し離れていたが、目標がある方が歩きやすい。一行はひとまずそこを目指す事にした。

 ヤンが遠くに見つけた建物は、やはり城だった。屋根の豪華な装飾や大きなバルコニーなど、近づくにつれはっきりと見えてくる。城高くそびえ立つ建物の正面には大きな門があり、門番が入り口を守っていた。
 2人いる門番達はどちらも背が低い。子供と同じくらいのサイズだ。だが、時々場所を交代するのに歩く足取りはしっかりしていて、とても子供のようには見えない。
 不思議に思ったセシル達だったが、とにかく協力を頼みたい。セシルが門番達に事情を話しに行こうとすると、彼らから話しかけてきた。

「ラリホー! 」

 門番の一人はそう言うと、セシルの返事を待った。けれど、セシルにはなんの事だか分からない。セシルはキョトンとした顔をして、仲間たちと顔を見合わせる。
 
「ら、らり、ほー……? 」

 アンが恐る恐る復唱してみると、もう一人の門番は喜んでラリホーと返して来た。セシル一行は、なるほどこれは挨拶らしいとようやく理解する。
 挨拶した事で気を許した門番達は、さらに機嫌よく喋り始めた。

「ここはジオット王が治める、ドワーフの城ー!」

 初めに挨拶した門番がそう言うと、彼の反対側の扉の前に立っている門番も同じように話す。

「ゴルベーザ悪い奴ー! でもあんたら、そうじゃないみたい! ジオット王に会うといいー! 」

 そう言うと、門番達はあっさり城門を開いた。
 あまりにも簡単に扉を開くので、セシルは却って心配した。けれど、門番達は人の良さそうな笑みを浮かべて早く入れと促すと、案内の兵士まで呼んできた。

「ラリホー! 」

 また背の低い兵士がやってきた。彼もまた、人懐っこそうな笑みでセシル達を迎える。

「ラリホーはドワーフの合い言葉ー! さあご一緒に!」

 門番に呼ばれて現れたのは近衛兵だと本人が言った。彼もまたラリホーを要求し、セシル達もそれに応じる。一行は完全に押されていた。

「せーのー! 」

 近衛兵の掛け声で、セシル達は一斉に息を吸い込んだ。そして、声を揃えて発声する。

「ラリホー! 」

 カインは言い終わるとさっと顔を背けた。彼の顔はほとんどマスクで隠れているが、出ている部分が赤くなっている。そしてそれを隣で眺めていたローザは、肩を震わせて笑いを噛み殺す。それに気づいたアンはローザと目が合うと、お互いにクスリと笑い合った。
 当のカインは皆に気付かれまいと必死になっている。アンとローザはカインの沽券の為に彼の赤い顔を見なかった事にし、視線を近衛兵に戻した。

 セシル達のラリホーに満足した近衛兵は、セシル達を城の中を案内し始めた。

「何だろう、ここの人達は」
「悪い人では無さそうだが、なんというか、」

 セシルとカインは顔を見合わせた。
 セシル一行はドワーフに会うのはもちろんこれが初めてだ。彼らはここの兵士達の、のんびりした雰囲気に戸惑っている。すれ違う兵士や城の者は皆、自分たちを警戒するどころか完全に気を許したかのように振る舞う。セシル達にドワーフに襲いかかる意図はないにせよ、あまりにも無防備だ。

「ジオット王がお待ちかねー! 」
「ラリホー! 無事で良かったー」

 誰かと会う度に気さくに話しかけてくるドワーフ達に、セシルは拍子抜けした。自分たちは余所者で、さらに種族も違う。もっと警戒されたり、冷たくされるものと思っていた。
 ドワーフ達から敵意や殺気は全く感じられない。セシルやカインがなかなか警戒を解けないのは一種の職業病のようなものだが、一行は大人しく案内に付いていくことにした。

 しばらく歩くと、だんだん部屋の装飾が豪華になってきた。先導するドワーフが重厚な扉を開くと、その部屋の奥に玉座に座るドワーフが見える。冠を被って、他のドワーフよりも見るからに身なりが良い。
 ドワーフに促され玉座の前へ歩くと、セシル達は並んで一礼した。
 
「ご無事であったか。私はこの地底を治めるドワーフ王、ジオット。よく来なさった」
「ありがとうございます。地上から来たセシルです。闇のクリスタルは、どうなっていますか」

 セシルが尋ねると、ジオットは片手で自らの顔を覆った。

「やはり、その事で来なすったか。 奴らの仲間にしては、砲撃を受けておったから不思議での。 我々も危うく撃ち落すところじゃった」

 すまなんだの、とジオットは謝罪する。

「地底のクリスタルは、まだ無事でしょうか」

 カインが聞くとジオットは力なく項垂れ、首を横に振った。

「残念じゃが、4つの内2つは奴らの手に渡ってしまった」
「やはり間に合わなんだか」

 ヤンは悔しそうに拳を握りしめ、俯いた。他の仲間たちも同じ気持ちで、重い雰囲気が漂う。

「しかし、この城のクリスタルはまだ無事じゃ。 ドワーフ戦車隊がなんとか追い返した」
「さっき飛空艇と戦っていた戦車ですね」

 ローザがそう言うと、ジオットは目を瞬かせる。溢れる好奇心でいっぱい、といった感じだ。

「ほう、あれは飛空艇と申すか。上の世界にはあの様なものがあるとは」

 ジオットはなるほどと一人頷き、何かに納得した様子でそう言った。けれど、その表情はすぐに曇ってしまう。

「自慢の戦車隊も 空から攻撃されては、ちと苦しい。そうじゃ、そなたたちの飛空艇とやらで援護してはくれぬか? 」

 ジオットは共闘を申し出た。だが、飛空艇は故障してしまっている。

「それが、さっきの砲撃と不時着のせいで、ちとばかりいかれちまったんですわい」

 シドがしょんぼりと肩を落とす。自慢の最新鋭も、このままではガラクタになってしまう。そんなシドに、ジオットは協力を約束した。

「修理に必要な物なら用意させるぞ」

 それを聞いたシドの目がキラリと光った。

「応急処置くらいは出来るじゃろうが、地底の溶岩の熱には船体が保たん。 地上に戻り、ミスリルで装甲を施さんとな! よっしゃ、ひとっ走り行って来るかの! 」

 修理が出来るとわかった途端に、シドは急に元気を取り戻した。やる気に漲る表情にはハリがあり、それまでの萎れ具合が嘘のようだ。
 今にも飛び上がりそうなシドに、セシルは逆に心配になった。無茶をしないかとソワソワしていると、シドはガハハと、笑ってセシルの背をどんと叩く。

「なーに、すぐ戻るわい! パワーアップして帰って来るから、良い子で待っとるんじゃぞ! 」

 そう言って、シドは意気揚々と部屋を出て行こうと踵を返す。

「お、お気を付けて……」
「おう。ワシに惚れるなよ! 」

 アンは去ってゆくシドを見送った。彼の頭は既に飛空艇でいっぱいだ。根っからの職人である。アンは頼もしく思った。

2020/05/16



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