52 人形劇
ドタバタと走り去って行くシドを見送ると、セシルはジオットに向き直った。
「ジオット王。 この城のクリスタルは、いったい何処に? 」
「何を隠そう、この玉座の裏の隠し部屋じゃ! ここならば、私の目の黒い内は安全と言うわけじゃ! 」
どんと胸を張ったジオット王だったが、ヤンの表情は厳しいものに変わった。彼は何かの気配を機敏に察知している。
「どうしたの? ヤン? 」
アンがヤンに聞くと、ヤンは部屋をぐるりと見渡しながら答えた。
「誰かが盗み聞きをしている!」
「何奴!?」
ジオット王は玉座から立ち上がった。緊張した面持ちでヤンと同じように辺りを見回す。キョロキョロと皆同じ様に探すが、怪しそうな者は見つからなかった。
「誰もいないぞ」
セシルがそう言うと、ヤンは玉座の奥へ走った。
「この先に気配を感じた!」
ヤンが玉座の奥に隠れていた扉を指差すと、皆の視線がそこに集まる。
「扉を開けい! 」
ジオットの命令に、ドワーフ達は「ラリ! 」と返事し、大急ぎでドアを開いた。セシル達がなだれ込む様に入室すると、そこはクリスタルムームだった。
何の変哲もない、クリスタルのある場所にならどこにでもありそうなクリスタルルームだ。だが、セシル達が部屋へ入った瞬間、扉が独りでにバタンと音を立てて閉まった。カインが走って扉をこじ開けようとするが、びくともしない。
「開かないぞ! 」
カインの叫びに皆が戦慄を覚えた時、甲高い笑い声が響き始めた。
「キャーホッホッホッ」
笑い声は直ぐに姿を表した。6体の人形が、くるくると不気味に踊りながら喋っている。
人形たちはカルコブリーナと名乗った。6体がそれぞれケラケラ笑いながら好き勝手に喋りまくる。
賑やかな人形達が口々に口走る事を繋ぎ合わせれば、要は自分たちはゴルベーザの刺客だという事だった。それを聞いたヤンは構えを取り、ローザは矢を弓に番えた。カインは槍の切っ先をカルコブリーナに向けて、臨戦態勢を取る。
「気持ち悪……」
剣を握りしめながらアンが思わずつぶやくと、セシルも頷きながらすらりと剣を抜いた。
「あの動きがどうにも不気味だ。スカルミョーネよりも見た目にはマシなはずなんだが」
おかげで躊躇せずに戦えるけれど、と付け足すと、セシルは踊る人形に斬りかかった。
人形達は倒した後も賑やかだった。命が尽きて崩れ去るまでの間、ほんの僅かな時間だというのに口々に恨み言やゴルベーザへの期待を喋り続けていた。
「でも、ゴルベーザ様にこの場所は報告済み!」
最後に残った人形が、ニヤリと笑いながら崩れ去る。セシルははっとした顔をするが、それと同時にどこからともなくゴルベーザがぬっと現れた。
「久しぶりだな」
「何!? 」
ゴルベーザは驚きを隠せないセシルやその仲間たちを一瞥すると、演説するようにゆっくり話し始めた。
「先日は世話になった。だが、あのメテオの使い手はもういまい。あの時の礼に私が何故クリスタルを集めるか教えてやろう」
ゴルベーザはゆっくりと歩き、セシル達の目の前へやって来た。
「光と闇、併せて8つのクリスタル。それは封印されし月への道、バブイルの塔を復活させる鍵なのだ。月には、我々の人知を超えた力が有ると言う」
セシルはカインからゴルベーザが月への道を探しているとは聞いた事を思い返していた。とはいえ、カインも詳しい事は分かっていなかったために、結局有耶無耶になっていた。
ゴルベーザの話が壮大過ぎて、セシル一行は困惑した。けれど、ゴルベーザは気にしない。元より説明する気などまったくないのだ。
「このクリスタルで7つ目。 残すところ、後一つとなったわけだ。 これも君たちのお陰だ。この礼もしなければ、失礼だな。受け取れい! これが、私からの最後の贈り物だ! 」
ゴルベーザは言い終わるや否や、セシル達に襲いかかった。応戦するセシル一行だが、やはりいつものようにゴルベーザの強い魔力には手も足も出ない。まともな抵抗もできないうちに、ゴルベーザの術に嵌ってゆく。あっという間に全員が身体の動きを封じられた。
「動けぬ体に残された瞳で、真の恐怖を味わうがいい! 参れ黒竜! 」
ゴルベーザの呼び声に呼応するように、漆黒の竜が現れた。その竜は黒い牙を剥き出しにして、セシル達を威嚇する。
「黒い牙を」
ゴルベーザが命令すると、黒竜は牙をヤンの首筋に立てた。牙が深々と刺さると、ヤンは崩れるように倒れた。
仲間たちはヤンの名前を呼ぼうとした。けれど、ゴルベーザの術は声までも奪っていた。ヤンはピクリとも動かない。
一行が恐怖する間、黒竜はゆっくりと泳ぐように飛びながら次の獲物を選んでいる。そして黒竜はローザ、カイン、そしてアンまでもその歯牙にかけた。
仲間が皆倒れてしまった。残されたセシルに、ゴルベーザは勝ちを確信したように笑った。
「セシル、次はお前だ」
2020/05/19
D+S FF-D New!夢物語
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