54 鬼の居ぬ間に
セシルはジオットの玉座の前で頭を垂れていた。クリスタルを巡る襲撃に抵抗した結果、ゴルベーザに奪われてしまった。セシルはその事を詫びているだが、ドワーフたちは彼らの代わりに戦ったセシルたちを責めることはしなかった。
ジオットが言うには、地底の南西にある封印の洞窟に最後のクリスタルがあるという。ジオットはゴルベーザがそこへ向かった事を確認しているようだが、封印を解く鍵が無ければその洞窟に入ることすら出来ない。今にも飛び出して行きそうなセシルを、ジオットは焦るなと諭した。
とはいえ、焦るなと言われてもセシルはいても立っても居られなかった。一度勝った事で油断した。そのせいで、またしてもクリスタルを守れなかった。飛空艇は修理中で遠出は出来ないものの、かといってのんびりしていられる気持ちでもない。
セシルはクリスタルを守れなかった事に責任に感じている。何もせずにはいられなかった。
「何か、僕達に力になれる事はありませんか?」
セシルの申し出を喜んだジオットは、バイブルの塔へ潜入する事を提案した。ゴルベーザが封印の洞窟に向かっている今、バブイルの塔が手薄になっているはずだとジオットは踏んでいる。その隙を狙って、既に奪われてしまった7つのクリスタルを取り返す算段だ。しかし、いくらゴルベーザが不在だとしても、敵地に入るなど容易な事ではない。
「敵の本拠地に潜入しろと
仰るか?! 」
ヤンが顔を引き攣らせてそう言うと、ジオットはドンと胸を張った。
「心配要らん! 我らの戦車隊が敵を引付ける! その隙に、お主らにクリスタルを奪還して欲しい。ゴルベーザのいない、今しかない 」
自信満々のジオットだが、一行は困惑していた。責任を感じているとはいえ、乗っても良いものだろうか。一行は円陣を組むように集まって、その場で緊急会議を開いた。
「どうする?」
カインは腕を組み、深い考え顔で皆に問う。リディアは不安そうに瞳を揺らすと、きゅっと拳を握りしめる。
「敵の基地なんでしょう? 」
「確かに危険ね」
ローザも困った顔で、どうしたものかとため息をついた。
「しかし、虎穴に入らずんば、虎児を得ず」
「ええ、クリスタルが7つもあるなら価値はあるかも。でも、危険だし……」
ヤンは慎重にいくべきか、それとも大胆に出るべきか、と悩み、難しい顔をして腕を組んでいる。アンはクリスタルを取りに行く事に概ね賛成だったが、心を決めるほどにはまだ考えあぐねていた。
セシルは黙って皆の意見を聞いている。だが、自身はどうしたいのかは決めかねていた。
「ゴルベーザのいない今しか、チャンスはあるまい」
カインは決意した。ゴルベーザの思惑を阻むにはこれしかないと、黙っているセシルにも意見を求める。
カインの迷いのない口調は仲間たちを勇気づけた。セシルは親友の決意を受け止め、彼も遂に腹を決めた。
「……よし、行こう。バイブルの塔へ」
セシルは凛とした表情でそう言うと、ジオットの前へ進み出る。申し出を受ける旨を伝え、出立の準備に取り掛かった。
2020/05/25
D+S FF-D New!夢物語
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