55 白衣の男
「ルビカンテさま、お気をつけて」
「案ずるな。忍術とやらを使うエブラーナの城は既に落ちた。 留守は預けたぞ」
ルビカンテと呼ばれた大男は、まるで炎を纏うかのような出で立ちだった。赤い皮膚も、彼が羽織るマントも、揺らめく炎を彷彿とさせる。その男に、白衣を来た男がひざまずいていた。
白衣の男は一見人間のようだ。だが、ゴルベーザの配下である以上、
元人間の可能性も否めない。
セシル達は入り組んだ壁の影に隠れて、敵の様子を伺っている。どういう状況かはわからないものの、ルビカンテはどこかへ出掛けるようだ。
ルビカンテはワープ装置の上に乗ると、ふわりと消えてしまった。すると、白衣の男が急に大声で笑い始めた。
「ヒャヒャヒャ! ゴルベーザさまもルビカンテも居らん! ワシが最高責任者だ! 」
気の触れたように高笑いする男に、リディアは薄ら寒さを覚えた。あまりの気味悪さに思わず独り言が漏れてしまった。
「変なおじさん」
「しッ! 」
ローザは慌ててリディアの口を塞いだが、声はしっかり届いていた。白衣の男はくるりと背後のセシル一行を振り返ると、その姿を探し始めた。
「そこにいるのは誰だあ? 」
セシルの鎧が壁にぶつかった。がちゃんと音がするのを、白衣の男は聞き漏らさなかった。音の出処を早々に突き止めると、真っ直ぐにセシル達の潜む場所へ歩いてくる。
「しまった!」
セシルは隠れる事を諦めた。他の仲間たちと息を合わせて、一斉に飛び出した。
「貴様はセシル! いつの間に! 」
白衣の男はセシル達を見るや、あからさまにのけ反って驚いた。
「ふん。ルビカンテは居まい。お前に俺たちが倒せるかな」
カインが鼻で笑って見せると、男はヒステリーを起こして怒り始めた。顔を真っ赤にして地団駄を踏む姿が、さらに気味悪さを増幅する。
男は白衣を腕まくりすると、何かのリモコンと特大のスパナをポケットから取り出した。ブンブンとスパナを素振りして、戦う気満々だ。アンはまさかこの男が戦う気でいるとは思っていなかった。ただの学者だと思っていたのだ。
「えっ? この人戦闘員なの? 」
アンの素っ頓狂な声に男が噛み付いた。よけいに気分を害した男はギャンギャンと喚き散らしながらまた怒っている。
「馬鹿にするではないわ! 四天王には加われなかったとはいえ、ゴルベーザさまのブレインと言われるこのルゲイエ! このバブイルの塔は、ワシのメンツにかけて守るわ!」
「笑わせるな!」
カインは槍を握り直すとルゲイエを一喝した。大声で怒鳴っていたルゲイエだが、カインの低く唸るような鋭い声に肩をピクリと震わせて怯えたように「ヒッ」と呻いた。
だが、ルゲイエに引く気はない。ルゲイエが持っていたリモコンを押すと、壁だったはずの場所がスライドする。その中からフランケンシュタインのような姿をした大きなロボットがのそりと現れた。
「このルゲイエの生み出した最愛の息子が、きさまらの首を頂いてやるわ!」
ロボットはのっしのっしと歩いてセシル達の前に立ちふさがる。
「行け! バルナバ。こてんぱんにするのだ」
「ウガー! 」
バルナバは雄叫びを上げながらセシル達に向かって腕を振り上げた。
ルゲイエもまた、モンスターにその姿を変えてしまった元人間だった。最終的には機械が多足類になったようなおぞましいモンスターに変身して襲ってきた。
アンもリディアも攻撃どころか見るのも嫌で、無意識のうちに普段とは桁違いの力で魔法を使っていた。ようやく倒したと二人ががほっと胸を撫で下ろしていると、天井から声が降ってきた。
「このバブイルの塔は大地を貫き、地上と地底を結んでおる。クリスタルは既に、ルビカンテが地上へ移した! ドワーフはワシの造った巨大砲で全滅じゃー! 」
リディアとアンはゲッソリとしていた表情を引き締める。ゴルベーザの配下は、なぜいつも倒した後までしつこく絡んで来るのだろう。アンは辟易している。
「ドワーフさんたちがやられちゃう! 」
リディアは青い顔をして、悲鳴を上げるように叫ぶ。
「巨大砲とやらを! 」
「破壊せんと! 」
ヤンとカインは同時に叫ぶと、先程ルビカンテが消えたワープ装置へ走った。だが、装置は何の反応もない。全員で乗ってみても、結局何も起こらなかった。
「ワープ装置のようだが、僕たちには使えないようだ」
「自力で行くしかありませんね」
セシルは残念そうに呟いた。アンと顔を見合わせてがっかりしている。
あまり悠長な事をしている暇はない。一刻も早く大砲を止めなければ、ドワーフ達が狙われているのだ。それに、ドワーフの元で飛空艇を修理しているシドの事も心配だ。
セシルとアンは互いに頷き合った。他の仲間たちとも目を合わせると、それが次の目的地へ向かう合図になった。
一行は大砲を探しに走り始めた。
2020/05/31
D+S FF-D New!夢物語
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