D+S FF-D New!夢物語


56 大砲



 セシルとカインがドアを蹴破ると、ゴブリン3体が大砲を操作していた。
 小さな部屋の中央は大砲の操作パネルが占めている。パネルの上半分は大きな窓になっていて、窓の外には巨大な大砲が見える。照準がドワーフの城に合わせられているのが傍目にも分かった。
 ゴブリン達は突然セシル達が押し入った事に大げさなほど狼狽えている。大慌てでセシル達を追い出そうとするが、セシルは一人であっさり斬り伏せた。だが、ゴブリンのうち操作パネルに最も近くに倒れた一体が、大砲の操作パネルのボタンの一つを押した。すると、小部屋全体に緊急警報が鳴りだすと、パネルはめちゃくちゃに動き始めた。

「これで誰にも巨大砲は止められんぞ」

 ゴブリンは顔を持ち上げてニヤリと笑うと、今度こそ倒れて動かなくなった。
 セシルは操作パネルを動かそうと試みる。だが、大砲は既に制御できなくなっていて、勝手にエネルギーを充填し始めていた。照準をずらす事も、止める事もできない。

「何てこと! 」

 セシルの隣に来て同じようにパネルを触っていたアンにも、もちろんどうにもできなかった。悔しさからパネルを力いっぱいドンと殴ってみたが、やはり反応は全くない。他の仲間たちも部屋のあちこちを調べるが、何の糸口も見つからなかった。

「御免! 」

 ヤンの声でそう聞こえた瞬間、アンもセシルも他の仲間たちも、部屋の外へまとめて吹っ飛んでいた。アンは何か起きたのかと混乱しながら身体を起こして、部屋を振り返る。すると、ヤンが丁度蹴りを終えて着地した所だった。

「ヤン! 何のつもりだ!? 」

 セシルは悲壮な顔で叫んだ。着地して仲間を振り返ったヤンは、硬い決意に満ちた顔付きだった。
 セシルは嫌な予感がした。ヤンは一人で大砲を破壊するつもりなのではないか、と。

「ここは私が引き受ける! 皆は早く脱出を! 」

 セシルの予想通りのセリフに、仲間たちはさっと青くなる。リディアは泣き叫びながら立ち上がり、ヤンのいる部屋へ走った。

「いやー! 」
「暴発するぞ、ヤン! 」
「早く出てきて! 」

 セシルやローザもヤンを説得するが、ヤンも引かない。リディアが部屋に着く前に、ヤンはドアを閉めてしまった。

「ヤン! 開けるんだ! 」

 セシルは叫んだ。扉をドンドンと叩く。たが、ヤンは落ち着き払った静かな声で答える。

「妻に伝えてくれ。私の分も生きろと! 」

 皆でヤンを呼ぶが、ヤンは頑なに拒み続ける。

「楽しい旅であった! 」
「開けろ、ヤン! 」

 セシルは叫ぶ。再度カインとドアを蹴破ろうとした。だが一度目の衝撃で歪んだのか、ドアが開くことはなかった。
 やがてヤンの気合と覚悟の篭った雄叫びが聞こえると、部屋の中から幾つもの爆発音がし始めた。ヤンは大砲を操作パネルもろとも破壊している。

「ヤンーー! 」

 セシル達はヤンを呼び続けた。ドアの隙間から黒煙が漏れ出ている。

 爆発が終わっても、部屋の向こうからは何の応答も無かった。
 リディアは泣き崩れ、アンは呆然とその場にぺたりと座り込んでしまった。


2020/06/03



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