57 バロンへ
セシル一行はバイブルの塔の出口を目指していた。だが、あと一歩だと言うところで、ゴルベーザに見つかってしまった。
出口への桟橋がバラバラと崩れ、一行は足場を失う。そのまま溶岩の上へ放り出されてしまった。
落ちたら死ぬ。だが、そこへ飛空艇が現れた。成すすべもないセシル達を拾い上げると、一目散に飛び去って行く。
「ギリギリセーフじゃったの! 」
ガハハと響く豪快な笑い声とまだ生きていたことに驚いて、アンは慌てて身を起こした。甲板に投げ出されて体中が痛いが、生きているだけまだ良い。
キョロキョロと見回すと、飛空艇を修理していたはずのシドが操縦桿を握りながら得意げに笑っていた。
ローザも起き上がると、ほっとした顔で名前を呼んだ。
「シド! 」
シドは親指を立てて応えると、まだ床に転がる仲間たちの顔を見渡す。だが、ヤンが居ないことに気が付くと、シドは怪訝な表情をした。
セシルがヤンが居なくなった経緯を説明すると、シドはすっかり落ち込んでしまった。
リディアは起き上がると鼻をすすった。座り込んだまま涙をこぼす。アンはリディアの側へ行き、背中をそっと撫でてやった。その様子を見ていたシドは「はて」と首を捻る。見ない顔だと思った。
「そのねえちゃんは? 」
「ミストの生き残り。リディアだ」
セシルはアンの胸でおいおい泣くリディアを見つめながら、苦しげに答えた。
俄に周りの音が変わった。激しいエンジン音が近付いて来ている。皆で一斉に後を見ると、赤い翼が全速力で追いかけて来ていた。
「ちッ! 追って来おった! 」
「振り切れんのか!? 」
カインは焦りの表情でシドに詰め寄るが、シドは難しい顔をする。セシル達が乗るエンタープライズの方が最新型で、性能は上のはずだった。ゴルベーザは赤い翼を改造したようだとシドは分析する。
カインは今にも飛び出さん勢いで甲板を駆けた。今にも追い抜かれそうな程の勢いで追ってくる赤い翼を睨みつける。
「エンジンが保たん! 代れ!セシル! 」
そう言って無理やりセシルに操縦桿を握らせると、シドは甲板の端まで走っていった。
「何処へ行くんだ! 」
まだシドの行動を飲み込めないセシルは、大声でシドに問う。するとシドはいつの間にか手にしていた手榴弾を掲げると、いつもに増して大きな声で答えた。
「エンタープライズが地上に出た所で、この爆弾で穴を塞ぎ 食止める! お前たちはバロン城に向かい、ワシの弟子たちに会え! 」
一行はハッとしてシドに視線を向けた。だが、誰かが止めに入る間もなく、シドはすでに欄干を跨ぎきっている。
「おじいちゃん! 」
リディアが悲壮な声で呼んだ。今にも飛び降りようとしていたシドはくるりと振り返ると、リディアに怒鳴り返した。
「せめて、おじちゃんと呼べ! 」
リディアの涙は引っ込んだ。ポカンとして、隣のアンと顔を見合わせる。だが、そうしている間に、シドは今度こそさっさと飛び降りてしまった。
「いいな! バロン城へ急げ!」
ローザとカインが慌ててシドが消えた欄干に向かって走った。けれと、追いつくことは叶わない。手を伸ばしても、すでにシドはもっと低い所にいた。
「ゴルベーザ! 飛空艇技師シド、一世一代の見せ場じゃあ! 」
シドの声が木霊する。その後すぐに爆発音が聞こえると、エンタープライズは爆風に乗って弾き飛ばされるように地上へ出た。
「どいつも死に急ぎやがって……」
カインはそう言ったきり、黙り込んでしまった。
飛空艇は地上へ出た。しかし、葬式のような雰囲気だ。鳥のさえずりや青い空の爽やかさが、却って残酷に映るほどだった。
「バロンへ、向かう」
セシルはシドに任された操縦桿を握り直した。今や気力だけで立っているような状態だったが、仲間の命を預かっているのだと自分に喝を入れる。
セシルの操縦桿を握る手が震えている。気を抜けば涙がこぼれそうだった。心の中がぐちゃぐちゃなのに、悲しむことにも専念できない。
す、とセシルの前に白い袖が伸びてきた。すぐに背中が温かくなる。鎧越しでも、セシルはそれがアンだとわかると、ほんの少しささくれた気持ちが解れたような気がした。
アンは伸ばした手が操縦の邪魔にならないように気を配りながら、後ろからそっとセシルを抱きしめた。こうすれば、アンはセシルの悲しみを分かち合えるのではと思った。
2020/06/09
シドさんよ。わわざわざ飛空艇から飛び降りなくても爆弾だけ落としておけば良かったんとちゃうかな。きっとこの後エッジとフースーヤを入れるのに人員整理が必要だったんだろうけども。
なんて言いながら反映はしてませんけどね。
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