60 見張りの間に
一行は塔の中で結界を張り、小休止を取っていた。地下から地上まで続く長い塔だ。ルピカンテを倒した後も続く激しい戦闘と、あまりの道のりの長さにみんなクタクタだった。
「しかしまあ、あの月へねえ」
エッジは呆れたように呟いた。相手のいない独り言は、何事もなかったように空気に溶けてゆく。一人で喋る滑稽さに、エッジはひとり口角を歪めた。
ゴルペーザは月へ行き、そこでさらなる力を手に入れようとしている。エッジはエブラーナだけの問題ではないと飛び出して来たものの、壮大な戦いに巻き込まれたものだと苦笑いした。
ごろりと寝返りを打って仰向けになり、後ろ手で腕を組む。ついでに足も組んだ。ここにコタツとみかんでもあればゆっくり寛げそうなものだが、今はそうもいかない。難儀な事だとまたひとり苦笑いしそうになったところで、頭上から超えがした。
「エッジ、そろそろ交代しよう」
結界の中に立てたテントの入り口がするりと開いた。そこからアンが顔を出している。
「お、もうそんな時間か」
エッジはそう言って起き上がると、小太刀を握った。
結界があるので本来見張りは必要ない。だが、テントには限りがあるし、敵地のど真ん中でもある。交代で仮眠を取り、有事に備えている。
テントから出てきたアンを、エッジはじいと見つめた。
「アン」
「何?」
エッジはアンをじいと見つめる。アンが思わずたじろぐが、エッジは至極まじめな顔つきで口を開いた。
「きれいだなって言ったのは、本気だ」
何を言い出すのだとアンがポカンとしていると、エッジはアンの耳元に唇を寄せた。
「もしも心変わりしたら、俺はいつでも歓迎するぜ」
そう言って、エッジはさっさとテントに入ってしまった。残されたアンは、まだ呆気にとられている。
「アン? どうした?」
アンが後を振り返ると、テントの脇に立ったセシルが不思議そうにしていた。セシルもアンと共に見張りをすることになっている。
「いえ、何でもありませんよ」
セシルは変な顔をしながらもテントの前に座り、アンに隣へ来るように促す。他の仲間はテントの中だ。旅の途中の貴重な二人の時間である。
アンを座らせると、背中を包み込むようにセシルはそっとアンを抱いた。アンは素直に身を委ね、下からセシルを見上げる。セシルの長いまつげが、普段よりもさらに長く見えた。
「まさかこの角度から、セシルさんを見上げる日が来るとは思いませんでした」
性別を偽っていた頃からすると信じられない光景だった。とても楽観視できない状況だが、セシルがそこにいるだけでアンは満たされる。疲れも恐れも、セシルが全てぬぐい去ってゆく。
「そうだなあ。でも、悪くないよ」
セシルは満足そうに笑って、そのままアンに口づけた。
2021/12/2
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