61 次の一手を
アンは飛空艇から外を眺めていた。生温いどころではない気温の中、アンは額を伝う汗をマントの端で拭った。
地下の世界にも風はある。とはいえ、溶岩による熱によって生まれる風は熱い。地上世界の空ならば風が冷たいことすらあるのに、ここでは甲板にいると場合によっては火傷しかねない。岩盤への衝突も危険だが、気流を良く読んで航行しなければならない。熱風にさらされると、そもそも飛空艇自体が故障する可能性もある。
溶岩が流れている場所では、その近くに何か物があればすぐに燃えてしまう。飛空艇すら例外ではなく、思うように移動できない。セシルはその歯痒さに頭を悩ませ、アンは火災でも起きたらどうしようかとヒヤヒヤしていた。
「熱っちいな。溶けちまうぜ」
エッジは滝のように流れる汗に、思わず目を拭った。既に全身が汗でびしょ濡れだった。カインやセシルは厚い鎧で固めている。軽装のエッジですらこうなのだから、鎧の中身はさぞドロドロに違いない。そもそも鎧も金属だ。暑くない訳がないのに、涼しい顔でいる。エッジはバロンの軍人達を少しだけ見直したのであった。
一行が乗っている飛空挺は、バイブルの塔でくすねてきた物だ。
やっとのことでクリスタルルーム辿り着き、そこに安置されていた地上のクリスタルを持ち帰ろうとした。すると突然足元の床が無くなってしまった。一行は落とし穴へ揃って落ちて行き、落ちた先がこの飛空挺だったわけだ。
クリスタルを取り返せるかと期待したが、見事に罠に嵌まった。しかし飛空挺が、それも新型が手に入ったのは幸運である。こうして脱出できたのだから、取り敢えずは御の字だ。
「ドワーフ城へ向かおう。ジオット王に一旦報告した方がいいだろう」
セシルは舵を切りながら遠くにそびえる城を目指した。
王の間に着くと、ジオット王がそわそわと一行の帰りを待っていた。
「おお、待ちわびたぞ。して、クリスタルの奪還は?」
期待に満ちたドワーフ達の視線が痛い。言いにくい事ではあるが、取り返せなかった事を伝えねばならない。セシルが事の次第を説明すると、一気に落胆の雰囲気に変わった。
「そうか……ゴルベーザは最後のクリスタルを手に入れんが為、封印の洞窟を強引に開けようとしておる。 こうなっては時間の問題だ」
ジオット王は渋い顔をして唸った。セシル一行もやる瀬ない気持ちで一杯だった。
「そこでお主らに、先にクリスタルを取ってきてもらえんか。ルカよ!」
「父上、何か?」
呼ばれたドワーフの姫君・ルカが玉座の前へ進み出た。だが、本人はなぜこのタイミングで呼ばれるのかがわからずに、困惑した表情をしている。
「首飾りをここへ」
「これですか?」
王のさしだされた手に、ルカは自身が身に着けていた首飾りを置いた。
「何を隠そう、この首飾りこそ封印の洞窟の入口を開ける鍵なのじゃ! これが無ければ洞窟は、何者も受け入れぬ! なんとしても、最後のクリスタルは守らねばならん!」
そういうと、王はセシルやその一行へ目くばせをする。クリスタルを取り返せなっかた責任を感じていたセシルは、やる気に満ちた目でうなずき返した。
「やってみます」
セシルは王よりルカの首飾りを受け取ると、仲間たちを振り返った。仲間たちも既にその意気だ。皆で確かめ合うと、ようやく少しまとまった気がした。
カインはようやく仲間として戻って来たもののまだ馴染み切ってはいない。事情を知らぬエッジは、それについて好奇心や疑心を隠そうともしなかった。
セシルは親友の事を信じているとは言え、やはりどこかぎこちないところがあった。それはカインも似たようなもので、これまでの引け目を感じずにはいられない。それにアンとローザが挟まれて、リディアとエッジはそれをどこか蚊帳の外で見ている。
「我々は敵の主力を食止める! そなたらは南西の封印の洞窟へ向かってくれ」
仲間達は顔を見合わせた。南西の方角は、溶岩が溜まっていてとても飛べそうになかったからだ。このまま飛べば、熱で船体が持たないだろう。
「恐れながら」
アンが一歩進み出た。ジオット王はどうしたのかと、アンへ向き直る。
「南西の方角は、今のままでは飛べません。溶岩を取り除くか、せめて減らせれば良いのですが」
「むう、それは困ったのう」
ジオット王も顎に手を当てて考え始めた。溶岩の熱の事までは気が回らなかったと、ほかのドワーフにも相談し始める。
すると、1人のドワーフがきょとんとした顔でこう言った。
「溶岩の上飛べないー? あの飛空艇のおっさんいれば、改造出来ないかー?」
セシルは暗い表情で頭を横に振る。ローザもカインもリディア、アン、そしてエッジまでが一様に悲しみの表情を浮かべた。
「ああ。シドは、もう…」
セシルが絞り出すように話すのを、一行は葬式のような気持ちで聞いていた。しかし、別のドワーフが割り込んでくる。
「こないだ地上への穴が崩れて、大変だったー! そん時、変なおっさん 助けたー! 今、救護室で寝てるー!」
「なんだって?」
セシルとアンは互いに顔を見合わせた。カインとローザは既に期待で顔を綻ばせている。
一同はそのドワーフの話もそこそこに、大急ぎで救護室へ走った。
2023/07/11
例によってゆっくりすぎる更新。お久しぶりです。気がついたら4サーチさんが無くなっていた。お世話になりました!
なんだかとても書きにくくて困っているうちに、書きかけのまま年単位で放置てした。最後に更新したんはいつやったっけ???
なのにうっかり16まで始めてしまって、ようし何とかするぞ!ということでよろしくお願いします。
D+S FF-D New!夢物語
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