63 2回目
クリスタルを手に入れたセシル一行は、洞窟の入り口まで戻ってきていた。あと一歩で外に出る、という時にカインが突然歩みを止めた。
「カイン?」
ぴたりと動かなくなったカインを、セシルは心配気に振り返った。カインと並んで歩いていたローザも、カインの顔を覗き込む。
──カイン…帰って来い。カイン…そのクリスタルを持ち、私の元へ──
ゴルベーザの声が狭い通路に響き渡った。途端にカインは蹲る。アンはぎょっとして辺りを見回すが、ゴルベーザの姿はどこにもなかった。
「カイン!」
セシルが呼ぶが、カインは蹲ったまま返事はない。ローザが悲痛の表情でカインの隣へしゃがみ込む。
「しっかりして、カイン」
「ローザ、大丈夫だ」
カインはそう言うとヨロヨロと立ち上がった。そして強い目線でセシルを睨みつける。
「俺は正気に戻った!」
そう言うや否や、カインはセシルにタックルを仕掛けた。その拍子に落ちたクリスタルを素早く拾うと、カインは仲間達から距離を取り始めた。
「カイン、何を?!」
ローザはの顔は真っ青だった。今にも崩れ落ちそうなのをアンは慌てて支えに入る。
──私の術を侮ってもらっては困る。 この時を待っていたのだ。これでバブイルの塔は完成する。 月へ行けるのだ──
再びゴルベーザの声が降ってきた。しかし、やはりどこにも本体はいない。
──来るのだ、カイン!──
ゴルベーザのひと声で、カインは纏う雰囲気をすっかり変えてしまった。ファブールで対峙した時のように、酷く残忍に見える。
「カイン!目を覚ませ!」
セシルは必死にカインを呼ぶが、カインにはまるで聞こえていないようだった。カインはセシルの言葉に、一切の反応を示さない。しかし、
「これで全てのクリスタルが揃った! 月への道が開かれる」
と言うと、カインは仲間たちを振り返りもせずに立ち去った。同時にゴルベーザの高笑いが聞こえるが、皆呆然と立ち尽くすよりなかった。
洞窟のほんの出入り口だと言うのに、セシルは外に出るまでがやたらと長く感じた。
親友に2度も裏切られてしまった。クリスタルも奪われた。大事な友を勝手に使うゴルベーザはもちろん、何より見抜けなかった自分が許せない。ため息をつくことすら億劫で、魂を抜かれたような気分だった。
「一旦、ドワーフ城へ戻ろう」
セシルが力無くそう言ったきり、以降誰も一言も話さなかった。
2023/10/13
D+S FF-D New!夢物語
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