D+S FF-D New!夢物語


65 魔導船



 せっかく久方ぶりに地上へ出たというのに、空模様は生憎の雨である。アンは静かに振り続ける雨をぼうっと眺めていた。
 セシルは雨に濡れるのも厭わずに、ずっと甲板にいる。一人で何も無いところを見つめてじっと動かない。

 シドは飛空挺を補強すると力尽きてまた眠ってしまった。命に別状は無いが、怪我した身体に鞭打って頑張ってくれた。そのおかげでようやくまた地上に戻って来れたわけである。

 地底のドワーフの王・ジオットからは、ミシディアへ急ぐようにと言われている。伝承によれば、月への道が開かれるという。誰もはっきりと分かってはいないものの、他に何か策があるわけでもない。次の目的地はミシディアと決まったのだが、舵を取るセシルの手は重くて鈍かった。カインの抜けた穴は、そう簡単に埋まるものではない。
 誰もが重い気持ちで、誰も何も話さない。ミシディアへの道のりも、いつもよりも長く感じた。

 ミシディアに着くと、すぐに祈りの塔に倒された。いつもの事ながら、誰とも連絡は取っていないのに、まるで申し合わせたようにするすると事が進んでゆく。

「祈るのじゃ、皆の者! 伝説が真の光となる時は、今において他に無い!」

 セシル一行が党の最上階に着いた時、長老が祈りを捧げるようにと村の魔導士たちに促していた。魔導士達も次々と集まって来ては、皆熱心に祈り始める。

 すると、何やら海の方がざわめいた。何やら大きな力のうねりが出願し、海の水が渦巻いている。魔法にはけっして明るくないセシルですら、何かを感じた程だ。

「何が、起こっているんだろう」

 セシルは塔から見えるミシディア近海が、見たこともない荒れ方をしている事に多いに驚いている。長年の空からいろんな表情を見て来たが、こんな海を見るのは初めてであった。

「セシルさん、あれ──」

 アンが指差した先に、何かが光った。セシルも目をやると、確かに何かがある。そこは海上の渦巻きの中心店だったのだが、徐々にその径を広げてゆく。これこそが、皆のいのりの通じた瞬間であった。

「あれこそ正しく…大いなる眩き船・魔導船じゃ」

 ひたすら驚くセシルたちに、長老はそう言った。

「祈りの最中、温かい声が聞こえた。 その声はこう言っていた。 月に参れと、月でそなたらを待っている者がいるようだ」

 セシルとアンは思わず顔を見合わせた。月に行けと言うのは簡単だが、飛空艇で行けるとは到底思えない。

「しかし、どうやって…」

 困惑するセシルに、長老は安心せよと言って、ポンと肩を叩いた。

「魔導船は月よりの船じゃ。ミシディアの記録によれば、通常飛行のスイッチとは別に、飛翔のクリスタルなるものがあり、語りかければ月との行き来が出来るそうじゃ」

 「それじゃあ」

 リディアが期待に満ちた声で言った。

「あれに乗って行くのね!」

 アンがそう応えると、リディアはぴょんと小さく跳ねた。

「やってみます!」

 セシル達に、光明が見えた。次への移動手段という、とんでもない物が手に入ったのだった。

2024/11/23




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