D+S FF-D New!夢物語


70 腹を括れ



 魔導船が静かに止まった。物音一つしない静かさが、無事に月へ着陸した事を物語る。

「行くぞ」

 セシルとカイン、そしてエッジは互いに頷き合う。いよいよ決着をつける時である。3人が出入り口へ向かおうと階段を降り始めている時だった。既に船から降りたはずのローザが、3人の目の前に躍り出る。

「ローザ!」

 カインは驚いて声を上げた。ローザは通路を塞ぎ、誰も通すまいと立ちはだかる。しばらくローザとセシルの睨み合いが続いた。

「ローザ、そこを退くんだ」

 セシルは静かに告げた。しかしローザは眉ひとつ動かさずに睨み返した。

「いやよ! 私も連れてってくれなきゃ、ここを退かないわ」
「何を…」

 相変わらず言い出したら聞かない幼馴染に、セシルとカインは困惑した。危ないから遠ざけたのに、これでは意味がない。

「この中の誰もまともに回復できないくせに、わたしを置いて行くつもり?」

 ローザはそう言い放つと腕を組んだ。これまでローザが回復の要であった。ぐうの音も出ないセシルに、エッジがトドメを刺した。

「確かに、セシルのケアルはちょっとばかししょっぺーもんなあ」
「しょ、しょっぱい…」
 
 セシルはがっくりと項垂れた。確かに、セシルも多少の白魔法は使えるものの、その効力は今ひとつである。本職のローザは元より、今や魔法剣までも使いこなすようになったアンにすら及ばなかった。

「セシルさん」
「アン?!」

 仁王立ちするローザの後ろから、アンが顔を出す。セシルはまた驚いて、アンの名を呼んだ。

「わたし、バロンからここまでずっと、セシルさんのお供してきました。なのに最後だけ留守番なんてできません。それに…」

 アンはじいとセシルを見つめた。意を決して、セシルの前に歩み寄る。

「危険ならなおさら、わたしも行きます。あなたが居ない事の方が、耐えられない」

 アンはそう言うと、セシルを見つめた。

「仕方ないな、セシル」
「羨ましいねえ」

 カインがそう言うと、エッジはひゅうと口笛を吹いた。ニヤニヤしながら肘でセシルを小突く。
 セシルは目を瞑り、ふうと息を吐いた。そして、手のひらを自身の胸に当てる。
 セシルはバロンを出奔した後ミストで絶望し、海を漂流して、ミシディアでは恥と惨めさで潰れそうになった。再び空とバロンを取り戻した時も、地底でも月でも、ずっとアンがそばに居た。ただの部下であった筈なのに、アンがいないと腑抜けているとまで言われる始末である。もはやアンが居ないなど、セシルこそ耐えられない。だからこそ置いて来たつもりなのだが、彼はもう降参するしかなかった。

「魔法もちゃんと使えるようになりました。もう、守られるばかりじゃありませんよ」

 アンかそう言い終わるかどうか、という所で、セシルがアンに駆け寄った。

「分った、アン。ありがとう。でも、それでも僕は、君を守りたい。守ってみせる」

 そう言って、セシルはアンを抱きしめた。手加減も忘れるほど、ぎゅうぎゅうに抱きしめる。セシルは人目も憚らず、たまらず口付けようとした。しかしその時、

「上手く言ったね!」

 と、言ってリディアがぴょん、とアンの後ろから飛び出した。

「おめー!」

 口をぱくぱくさせているエッジに、リディアは盛大なあかんベーで応えた。

「いつか言ったでしょ。これはみんなの戦いだって。それに幻獣たちを呼べるのは私だけよ」

 どんなもんだ、とリディアはどんと胸を張った。男共は、これもまた何ひとつ言い返せない。完敗である。

「リディアまで…」

 セシルはアンをそっと離すと、彼女の肩を抱き直した。口付けはしそびれたが、もうそれどころではない。仕切り直しである。

「行こう! 僕らの戦いに」

2024/12/12
男だけで行こうとするのは、結局戦力として認めてないよなあ、なんて。ローザに言ってもらったけど、お前らまともにケアル系できへんやん?召喚獣は何のために集めて来たんじゃい!アホか!と、ツッコミを入れながらやっていた。笑



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