世界が終わったとしても3


ど、どうしよう…

ボクはシェゾ先生がサタン先生と意味深なやり取りを交わしているところを二度も目撃してしまった。理由は分からないけどボクの名前が出てきて、記憶だと魔力だとかよく分からないことを言っていた。シェゾ先生は機嫌が悪そうだった。それで去り際にウィッチたちとごちゃごちゃとしていたらこうなった。

シェゾ先生と目が合ってしまった。
「…」
張り裂けそうな心音の裏で沈黙が続く。目でウィッチとルルーに助けを求めてみるが、隠れて身を寄せ合って震えている。言い逃れできない状況であった。
「そうか、お前なんだな」
暫くの沈黙の後やっとシェゾ先生が口を開いた。
「ボクが…どうかしたのですか」
どうかしたも何もない。ボクは尻餅ついた状態でシェゾ先生と顔を合わせている。シェゾ先生は一メートル程上からアイスブルーの瞳を覗かせている。ボクは冷静になって状況を見ると羞恥で顔を背けた。
「立てるか」
シェゾ先生は尻をついたボクに手を差し伸べてくれた。正直なところ力が抜けた。
「あ、ありがとうございます」
シェゾ先生の手を借りてボクは何とか立ち直った。白くてサラサラしていて、吸い付くような手触りだった。ついつい手を離すのが惜しく思った。

「じゃあな」
シェゾ先生は去っていった。物影ではウィッチとルルーが息を呑んでいた。
「びっくりしたなぁ」
嵐が過ぎた後のようにアルルは息を切らしていた。
「う、麗しい…」
「サタン様…」
二人はとっくに上の空だ。


ホームルームの前に教室に戻ってくると、二者面談の日程表が配られていた。ボクは明日の一番最後の時間だった。いつも通りサタン先生が近況について生徒一人一人に聞くのだろう。正直なところ成績のあまりよろしくないボクは悪い予感しかしない。
「やだ、アルルったらまた最後じゃないの。私と代わりなさいよ」
ルルーが物欲しそうに見ている。代わって欲しいのはこっちだ。
「ダメですわよルルーさん。アルルさんは成績下位の常習犯ですから」
前の席のラフィーナから横槍が入る。
「私やシグよりはいいけどね」
少し離れた場所でアミティとシグがのんびりと黄昏ている。
「それもそうね」

そこでサタン先生とシェゾ先生が教室に入る。シェゾ先生の顔を見た瞬間、ボクは昼間のことを思い出して顔を発火させた。
「アルル、大丈夫ですか」
隣の席のりんごが不思議そうに見ていた。
「う、うん…」
思い出しただけでも恥ずかしい。
「ホームルームを始めるぞ。明日からなのだが、私は研修期間に入るため二者面談は代わりにシェゾ先生としてもらうことになった」
その言葉に教室中が固まった。
「ちょっと、シェゾ先生と二人っきりでお話しするってことじゃない」
「やだ緊張しちゃう。ちょっと嬉しいけど」
女子たちがコソコソと盛り上がっている。まさかあのイケメンシェゾ先生と二人っきりで二者面談となれば女子たちは興奮せざるを得ないのだろう。だがボクは別のことを考えていた。

あの時サタン先生はシェゾ先生に「アルル・ナジャと接触する機会を与えよう」と言っていた。もしやこれはサタン先生の作為なのではないか。考えすぎだとすれば偶然か。よりによってボクは明日の一番最後だ。一番最後となれば面談が長引きやすい貧乏籤とも言えなくない。ボクは面談の日程表をぐしゃりと畳んだ。なんだか怖い。



ホームルーム終了後、ボクは廊下でサタン先生とすれ違った。
「もうすぐだからな。アルル・ナジャ」
サタン先生はすぐに去っていった。
「どういうことだよ」
頭の中がぐしゃぐしゃになりそうだ。


To be continued…

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