【二人分の命の重さ】凍霞 貂


「ふざけんなや!!!だいたい誰が俺のためにしろって頼んだ?俺は頼んでへん。」


やめろ、やめろや

それを背負い切れるほど覚悟は決まってへん。あいつらがなんのためにそうしてくれたのか俺はわかっとる。怖いもんしらずやったけども仲間が殺されて同時に怖いって気持ちもある

でもなぁ、二人の人生分がこの目にかけられとるのに仇討ちをせんっていう選択肢はあるか、ないやろ。だから

「決めたで、俺は。」





「君の義眼に仕込まれているのは術式だよ。その義眼は数年前に盗まれたと言われていた。でも彼らは特異な体質の君の目を治すものとして信じきっていた。本来であれば六眼を越えるものとして創られ、呪物なのだけどね。」

男から告げられたそれはあまりにも非情だった。あいつらが聞いたら何て言うかわからん。信じて手に入れた物に裏切られるってどういう仕打ちや。様々な感情が駆け巡る

「僕らの界隈では六眼というのが存在しているんだ。とてつもなく強い目なんだ…そうだなぁナルトの写輪眼とかわかるかい?特別な目なんだ。」

「なんやねん、それ。真面目な話しとったんちゃうんか!?」

「君、中学生だしそういう説明した方が分かりやすいかと思ったんだ。」

「台無しやっちゅうねん。」

「酷いな、一応気を使ったのに。」

男、野鶴と名乗った青年曰く俺の家はめんどくさい家らしい。世話になっているヤクザのジジイは俺の父親の兄である。親戚に世話になってもう随分経つ。俺の家族は実父ではない叔父と叔父の妻に叔父の組の人間に俺の弟。ちょっと世間的には複雑な家なだけや。いうてヤクザの家の息子それで特にややこしくはない

「ヤクザの息子の家が事情持ちっていう話ならなんも問題あらへんやろ。」

「そこは問題ないんだよ。君らは関西の呪術界は懇意にしている外部の窓みたいなものだからね。この家は問題ない。」

「…………クソ親のことか。」


心当たりはあった。まだ7歳ぐらいの頃。俺の弟がまだ5歳の頃。そして、自分がヤクザの息子ではなかった頃。父親に逃げられた母親は豹変して気が狂ってしまった。ただ父親に逃げられたのをきっかけに今でこそわかる…が。黒いモノは俺ら兄弟の世界を蝕んでいく。俺の片目は生まれた頃から見えてへん。先天性の目の病気とか言われとった。ただ小さい頃はまだ見えた気がする。光だけやったけどな

母親に悪気がないと判断されれば確かにそうかもしれん。おとぎ話の悪い魔女が母親をおかしくしてしとって魔法がとければ元に戻るんやったら…子供の頃であればそれで信じたかもしれへん

「父親はどうやらなにかしらの呪霊に殺されていたらしい。そしてそれがまた身内の縁を辿る強い呪霊だったんだ。」

「…んでそれがなんの関係があるんや。」

「関係は大いにある。君が一般人ならこの状況は俺では弁護しようにないからね。」

よく聞くんだよと俺に言う。ふざけてくれとった方がまだましかもしれん


「もしかすれば順当に継がせるつもりだったかもしれないけれども恐らくこの結果は父親と母親の一族が仕組んだものだ。」

「………は?」

「仕組まれたものだよ。偶然のようにみえる全てが事故のように呪霊にたまたま殺されたわけじゃない。君のお付きの二人が殺されたのは作為的で人為的なものだ。」


「……それを俺にいうてどないしろっていうんや。」


仕組まれたものだったらどうや、なにか変わったか。はじまりは俺の目の心配をしていた二人の話に希望を持ったことや。お付きの二人、年が近い男女の二人。血の繋がりがなくたって俺の思うには家族に近いって思っとった。そんな二人から聞いたウマイ話に喰いついたのは自分や。アホやなと思うわ。
眼帯をつけてまともに動かん目を抑えつける。意味なんてなんもないのにめばちこでもなんでもないのにな。眼帯を当たり前につけるような日々は日常に根付いとった。だから一回だけでもええから両目の視界を見てみたいと思った

『若、片目が治ったらなんかしたいことあります?』

『そうやな…思いっきりスポーツしてみるとか後は…色んなとこ歩くとか』

『いっつも暴れとるのにまだ暴れたりんのですか…フッ。』

『なにわろとんねん、お前!!!!普段しとることとスポーツしとるのとはまた別やろ。』

『若、待っててくださいね。』


待っとった。待っとくだけやったらあかんかったのにな



「…君が悪いわけじゃない。君から日常を奪ったのは非日常を力に変えようとした紛れもない老害のせいだ。後先考えずに足枷をつくったんだ。」


あいつらも俺が悪いわけじゃないって手紙に書いたらしい。見れてへん。どういう顔して見るのが正解かわからん。目の前で真剣な話をしてる男は赤の他人のはずや。あいつらを知っとったように話すのはムカついた

「俺はええ。あいつらは…あいつらは…巻き込まれたんか!!その言い方やとお前知っとたんやろ!!!!なんで止めんかったんや。」

胸ぐらを掴む。抵抗しない姿にムカつくねん。この男に殴ってもあいつらは死んだままなのだ

「止められた、間違いない。でも俺にはできなかった、力不足だったんだ。」

「俺一人だけに二人分の命かけてどないせぇって………。」

吐きようのない思いを口にする

あんまりにも釣り合わん。二人分の命が眼帯の中におさまっとる目ならわりに合わへん

「君にはその義眼の力を使うことができる。なにかあるならこの電話番号に連絡してくれ。」


手渡されたメモを握ったまま

「痛い、なんも感じんはずやのに眼帯の奥が痛い………。どうすりゃええんや。」






























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