【満たされてしまったら】乙女百合
私の体は何でできているのかしら
昨日バレンタインの記事のために食べた高級なデパートのチョコレートかしら。それと一緒に食べたワインかしら
見た目にそぐわないほど大食いと言われるの。あんなにチョコレートをたらふく食べても私はまだ満たされていない。だからもちろん、ステーキも食べてしまった。500gなのだけども本当に食べ過ぎね
人間が取らなければならない一日の摂取カロリーが女でだいたい2000kcal。チョコレートのカロリーってけっこう高いわよね?これは自戒をこめているからあなたは食べたいものを食べればいいわ。私の食生活は真似しない方がいいけども。私の食べたものを見てみればわかる通り相当食べてるって思ったでしょ?
人間の衣食住がしっかりしていれば満たされてるとされている。あと趣味、生きるための活力さえあれば頭からつま先まで
だから今日もこの体に食べ物をいれるのだけども。レタスのしゃきしゃきという音が聞こえて喉から飲み込む音が聞こえる
味覚が死んでいなくてよかったと常々思うわ。
私の体は何でできているのかしら、常々不思議に思うの。人魚の肉とくだんの肉を食った私の体の細胞は果たして人間なのか…論文のテーマにするにはいい命題じゃないかしら。あなたもどう?いい題材になるかもしれないわ
人間は人間同士を共食いしないけれども、動物の肉を食べている。その場合たんぱく質やら様々な物質が人間の体を構成するわけよね?妖怪の肉にビタミンとかそれこそたんぱく質があるのかしら。妖怪の肉のサンプルを用意して研究すればわかるかもしれないけれどもそれは別にしなくていいわね、私はこの体に満足しているし
健全な精神は健全な肉体に宿るとどこかの哲学者が残した言葉があるわね。もちろんアニメや漫画が好きな人は聞き覚えがある台詞じゃないかしら、死神がテーマのね。話がそれてしまったわ
「だからとっても頭がおかしいと思ってないから、私は健全であると自分に説き伏せたのよ。九十九さん。」
「確かに理にはかなっているか。精神の方を先に指すのであれば。けどその言葉は逆も言える。健全な肉体に健全な精神は宿ると。」
「なら反対意見ということね。この言葉は絶対を指していないから例外があってもいいのだと思うのだけども。」
「君の話は呪霊にしては中々興味深いと思うよ。」
「酷いわ、私は自分のこと一度だって呪霊なんて言わなかったのに。」
呪霊とかそういうのは誰かが勝手につけたものであって私を指し示すには足りない
「機嫌をそこねてしまったかな。君のようなモデルケースは少ないからもっと慎重にならなければいけないか。」
「機嫌以前の問題だわ。」
この特級呪術師とかいう彼女は全人類のためだとかなんとかで私に協力してほしいらしい。食べ物の話はどこ行ったかって言われてもなるべく長い話をしてあきれてもらおうと思っていたのよ。だけどもやっぱり効果がなかったのね
「呪いなんて永久不変よ。だってどんな時代でもついて回ったはず。エビデンス、データが、証拠がないだとか言うかもしれないけれどもこれは感情の話。あなたが例え全人類の調査をしても手に入らない答えがあって、究極の問いに手をつけようとしているのよ。」
この目で、この体で、魂で感じたもの。それは満たされていないときに感じる不安、悲しみ色んな感情が転じて呪う。食べていれば不安を感じない満たされているのならば人類が手をつけるのは食料問題であると言えるかもしれない。でも…人間は人間同士で感情のやり取りをする。呪ってやると思って丑の刻参りが伝わっているんでしょう
私たちは呪いと言葉をつけなくても魂で刻み付けられているそれがなんなのかわかっている。
どんな哲学者が論じたって、どんな心理学者がデータを裏付けたって明確な問いが出ない。心からでる感情…私も江戸あたりから生きていた気もするけどもわからないわ。全人類を納得させるだけの答えを持ってないもの。説得力がついても納得するかどうかは個々の判断
「さすがにそう簡単には応じてくれないか。君にもフラれてしまうね。」
「モテそうなのに?きっとあなたの魅力がわからないのね、残念な人達ね。でもきっといい人が見つかるわ。人外が人間と結ばれるケースも見てきたもの。」
「随分と嫌味を言う。」
「あら、嫌味じゃないわ。いつの時代だって種族も性別も関係ないのよ。恋と愛は成立するもの。そういえば昔話を聞いたのだけども…純朴な青年に余計な情報で揺らしたのってあなたがそうって。」
「随分と個人的な話を知っているんだね。」
「噂が好きなの。食べることと噂、怪奇や妖怪で私は満たされているから。」
「君は高専に協力していないのに?」
「さぁ、どうかしら。推測してみて。お喋りは好きだけども私は基本的に情報は必要情報しか教えないの。女の人は噂好きなのよ。三人もいれば噂だらけでランチタイムが騒ぐわ。」
「それは賑やかだね。」
「そうね。」
多分、彼女と私は相容れない。文系の私に理系ぽい彼女。物語を愛する私に対しての論文や随筆を読みそうな彼女。きっと彼女がやろうとしていることは悪いことではないのだろう。でも私は呪いも含めてこの世界が好きなのだ。物語を構成する負の感情をこの世の人間が忘れてしまったらなくなってしまったら…面白くなくなってしまう!
ああ、実にこれは私が悪だろう。特級呪術師とか彼女は名乗ったがもしこれが私の聞く呪術師と同じならその片鱗を見せればはらわれてしまう。それはいけないわ、大変よ
「応援しているわ。多くの人間がその先にある高みを目指したり、謎を解明しようとしてひとつずつこの世界を紐解いていたように。私も可能性のひとつとしてあなたの答えを見てみたいわね。」
次に彼女に会うときは私の体は何でできているのかしら
答えを得て満足してしまったこの体も魂もどうなっているかは想像がつかないまま
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