1番目の3
痛い、痛い
どうしてこんな目になったんだろう
「場所が悪いな。やっぱり八乙女さんのいってたとおりなのか…昔話。」
昔、昔。でもそんなに昔ではないのだけど、ここら辺の土地は地盤が緩くて土砂崩れがよく起きた。誰が言い出したのか山に祠をたてて神様をまつるようにした。神頼みだ
存在は誰一人視認できなかったけれども確かに土砂崩れは減ったらしい。それを知る人はもうほとんどいないし祠を掃除する人もいなくなった。だから、だからこそだろう
人間を恨んでいるのは確か
「土を操れるとか少年漫画みたいじゃん。」
肩で息をしている。何時間戦ったんだ?わからない、わからないけれどもここまできて引き下がるわけにはいかない
なんか喋ってるよ、なにいってるかわからないって
初めて不安を感じた
初めて
「あっ。」
下から崩れていく足。いいや、沈んでるんだ
死を自覚した
「形代ちゃんのお友達?」
時を戻すこと虎杖、釘崎視点。待ち合わせの喫茶店で情報収集をしようとした二人
「釘崎さ、ここはうんっていっとくべき?」
「逆に聞くけどそれ以外他に何て言うのよ。」
確かにそうだ。他に何を言えばと思う
「お父さん、この子達じゃない?形代ちゃんが電話してた子。」
「ああ、確かに特徴もそうだな。」
「電話?」
「待ち合わせに遅れるからっていっといてって言われたんだ。二人ぐらい、君たちみたいな子が来るからって。」
店長の男はそういうと虎杖と釘崎にコーヒーを出す
「閉店前なんでね、サービスだ。飲んで待ってるといいよ。」
出されたコーヒーからは湯気がでている
「ありがとう!」
とその好意に素直に答える虎杖とありがとうございますとコーヒーをもらう釘崎。虎杖からみて釘崎が悩んでいるようにみえる
「これだけ周りの人にも好かれてるっていうかそれなのに、なんで呪術師もどきみたいなことをしてるわけ。」
「あれじゃね、釘崎が思ってるほど難しい理由でもないんじゃない?多分さ、お金が必要だってそのまんまなんだよ。」
「本当に?」
「疑り深くない?」
「多分あの子まだなにか隠してるわよ。」
「じゃあ聞いてみたらいいんじゃない?だって俺ら一応聞き込みしろって言われてるしさ。」
少し考えた釘崎は店長をお父さんと呼んでいた店員の彼女に話しかける
「私たち最近形代さんと友達になったばかりで形代さんのこと知りたくて。」
「形代ちゃんはね、いい子よ。お父さんとお母さんはだいぶ早くに亡くなったらしくてここから近い隣町に元々住んでたみたいよ。だから詳しいことはそこまで知らないんだけど。私たちの喫茶店の手伝いもよくしてくれるのよ。」
本当にあの子はいい子よ、付け足すような言葉が念を押しているようにも感じる
「いつもよくメニューにあるクリームソーダを頼む。必ず決まって他のも頼むが月に一回は必ず頼む。小さな町だ、ここより行くところは他にもあるはずだけどな。こんな年いった夫婦と仲良くしてくれて…」
カランカラン
ドアの呼び鈴がなる
「あっ、伏黒じゃん!」
いらっしゃいませの店員の声よりも虎杖の方が先に声をかけた
自分達と別行動していた伏黒がいる。なにか進展があったのか、いい方向なのか悪い方向なのかは予測はつきづらいけども
「虎杖、釘崎…七海さんに連絡とってから山に向かうぞ。」
「山?またなんで急に?」
「そっちにあの形代って子がいったんでしょ。」
「そうだ、釘崎。話は移動中にするが…俺らが思ってるほどここはヤバいらしい。」
「わかったわ。話は移動のときに聞く。」
喫茶店から出ていく三人
「あっ、コーヒー美味しかったです!」
虎杖の声に反応した店長と店員の夫婦は多分笑っていたのだろう
「今月のクリームソーダまだのんでないのに。」
簡単にいえばそれは後悔だ
沈みこむ足をみてどうしようかと考えた。体勢を立て直すために地面が、土がないところに行く。それが形代白露が考えれる最大の答え
なるべく高い木にフックつきのロープを投げて体を引っ張りあげる。確かにそれは成功して今体を幹に近い場所の枝にのっけている。でも、それは逃げる行為であって目の前のお化けのような自分に初めて死を感じさせたものを殺すのとは反対のことだ
自分を追っかけているなら下には降りてはいけない。町に降りてこんな気持ち悪いのがいたら悲鳴ものである
お金はほしいけど、人を殺してまでには、思いとどまるくらいの常識はもっている
「さすがに届かないみたいだけど…」
寒気、嫌な汗。沈みこんだ足の感覚が忘れられない。あげた足が前に進んでない、普通じゃないもの
八乙女さんはこういってた、祠を壊したって。なら祠を直すのは?でも直すまえにあのお化けのようなやつに自分が殺される
時間稼ぎが充分できないことがわかった
「他の人に頼むのは気が引けるな。」
メキメキッ
「えっ!?」
嫌な音がする。体を寄せてるのは幹に太い方だ枝にはのっかってはない。だから考えられるとしたら下が折れている
下をみる
「土が木を折ってる!?いや、これって……土砂崩れなの…?」
上から土が流れている。降りたら確実に流れに巻き込まれて死ぬだろう
だからといってここにとどまるのは…
「ふしぎな力つかってもかえれるのはモノの向きだけだし……」
木がななめに傾いている。今の自分にできることはなにもなにもない
バキッ
完全に木は折れた。勢いよく折れた木は体を投げ出す
空中から勢いよく落下する感覚が気持ち悪くて目を閉じようとした。閉じる前に一瞬みたあのお化けのようなやつは私をみてただ嗤っていたようにしか見えなくて
「…最初からそうだったんだ。」
次に目をあけるときは天国か地獄かどっちかだろうなと思った
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