『私とエンカクさん』
気まずい、その一言につきるなぁと思った。
ヴィグナちゃんがいない休憩室でギターの練習をする。私は特に特別な能力はない。でもロドスの人達の手伝いをしたりはできるし戦場の演習はかかさずみてる。そりゃ賢くなりたいもんね!戦場にはついていかせては貰えないがお荷物になるのはわかってる。しゃあないというよりは好きな専門の話とかきいて前よりよくなる方がずっといい
だからギターの練習もするという理由は1割で、9割方ヴィグナちゃんに憧れて頑張りたいという気持ちがかなりデカイ。努力という言葉をよく口にする彼女がかっこ良かった。めんどくさがりで参謀向きではないけども…ヴィグナちゃんが一緒に練習しようって言ってくれたのがさらに後押しになって目の前のことを頑張ろうという気持ちになった
だけども世の中にはまだ私が苦手なこととかできないことがたくさんあってそのうちの一つが男の人と話すことだった
エンカクさんがこっちを見ているのだ。めちゃくちゃ凝視されている…。
かっこいい人達はロドスでは性別問わずにたくさんいるし私は遠目からみてみんな美男美女だなぁと思う日々だ。実はヴィグナちゃんや特定の人達以外はあんまり話したことがない。勉強するのに話はするけどもなんかこう親しくするのはハードルが高い。
エンカクさんは…声聞いたことがあるけどもびっくりした。めちゃくちゃ耳に残る声だった。
エンカクさんのことはよくヴィグナちゃんから話を聞く。ドクターさんの編成でよく一緒になるらしい。同じサルカズという種族でサルカズという種族のことは聞いた限りだと角や耳の形とかしっぽに特徴がありアーツの適性が高く鉱石病にかかりやすいらしい
サルカズの人達みんな強いとは聞いたけども…
実際戦場に立って見てないので、なんとも言えない
エンカクさんが何でここにいるのかもよくわからないままだった。休んでるんだろうか…いや確かにここは休憩室である。最近は楽器が弾ける人達がここを使ってるけどもだ、エンカクさんもギターを弾きに来たんだろうか…。ちらっと横目で確認する。
「以前のように縦笛を鳴らしていると思っていたが…ギターに変えたのか。」
「あっ、えっと…ヴィグナちゃんに頑張るって言ったので…。」
目が合わせられない。信頼度ならぬ緊張度200%の状態だ。嘘ついてはないがこれじゃあ嘘ついてるみたいじゃんと自分に言う。そして除きこんでいるのだ、エンカクさんとの距離はかなり近かった
「信じられんくらいの要領の悪さだな。」
「ウッ」
「その調子ならこの戦いが終わる時まで震えた子鹿のような状態で上達しないだろう。」
要領が悪いのはよくわかってるけどもこの短時間で見抜かれてしまったのが何か恥ずかしい。
手もぶるぶるで安定してないし…いやまぁちょっとずつは上達してるぞ!!音を出す練習を頑張ってるのです。不安定だけども…
エンカクさんはあまりにも見かねたのかギターを貸せと手を差し出している。疑問はすぐに言うのよ、誰かに見てもらうのも上達のコツよとヴィグナちゃんが言っていたことを思い出し静かにそっとギターを渡す
サルカズの人達ってみんな器用なのか!?
エンカクさんもめちゃくちゃうまかった。慣れたようにギターを触るので凄い
「どうせできないのはわかっているなら完璧にしようとするな。細かいところの意識が足りてない、お前はまず弦をちゃんと押さえろ。」
「はい…」
完璧にしようとしてるところはあるというか前に似たようなことをヴィグナちゃんに言われたことがあるのを思い出した。図星である
「後、メトロノームでも用意してもらえ。」
「メトロノーム……?チカチカするやつです?」
呆れた目で見られる
「よくロドスに来れたな…。まぁ、いい。コードすらままならない状態で二の次の話だが、その様子を見るにリズムも取るのも苦手だろう。お前…。」
「えっ!?なんでわかったんです!!エンカクさん、心でも読めるんですか。」
「今のお前の様子を見ればここにいる連中全員が口を揃えて同じことを言うだろうな。」
見ればわかる、と呟くエンカクさん。全体的に呆れられている気がする。返してもらったギターを受け取り、自販機よりも高そうなエンカクさんを下から私は見た
お互い喋らない時間が少し続いた。エンカクさんは帰るらしい、私に背を向けて歩き出す
「あ、ありがとうございました!!」
お礼を言い忘れるところだった。聞いてるかはわからないけども言っておかないと。そういえば途中から普通に喋れてたけどもなんでだろう。目が合わせれてたのはびっくりだった。いや、あれかな…視線が鋭かったからのもあるのかな…逆に目を合わせないとみたいな
言われたことを忘れないようにポケットからメモを取り出して書き起こし、またギターの練習に戻った
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