『寝ているからこれは現実ではない』ツイステ:ジャック
「しっ、しんど…い。」
バルガス先生が声が遠くからでもよく響く。空を箒で飛ぶ同級生達はまるで獲物を狙う隼のようだった。となると私はなんだろう…。隼の食べるもの知らないなと思いながらただひたすら走っていた。絶対疲れたっていったら疲れるしなにか考えとかないとこの外周は終わりそうじゃない
飛行術の授業だけ唯一起きていると言われるがそりゃこんだけ走れば授業中に寝れない。逆に言えばこの後の授業はお昼寝タイムである。私は魔法が使えない。だからといって見学にするわけにはいかないから救済措置とかいうやつである。外周以外にも筋トレもしたしヘトヘトで空が滲んでみえた。額の汗が目にはいったのかもしれない。もう無理、と言いかける口も乾いている。あと一周、あと一周と心のなかでいいかけながら重い足を動かしていた
間違えでなければようやく終わったはず。バルガス先生もなんかいってるし多分大丈夫、これでこの授業も終わり。ぐるっと振り向こうとすると振り向いた方向に頭が揺れる、こんなに揺らしてるわけじゃないのになんかふらふらするのだ
ドンではなくかたくてなにかしっかり支えられたような気がする。でも頭がぐるぐるして回らないから私を呼ぶ声は聞こえないままだった。意識はあるがなにがなんだが…
「おい…なぁ、き…えてる…?」
聞いたことある声だ。あんまり仲のいい人は限られてるから
「顔真っ青じゃねぇか!?おい、ユウ…!」
あっ、多分ジャックくんだ。そうじゃんと合わなかったピントがあった後、安心したのか眠くなってきた
魔法が使えない同じクラスの同級生は今顔を青くしている。飛行術の授業終わりはいつもしんどいと愚痴をこぼしていたがまさかここまでとは…保健室でジャックは思った
「うーん…ネギ…。ネギを首にまかないで…」
「どういう寝言だよ…。」
授業はまだ終わってない。残り10分程度だが大丈夫だろう。顔が真っ青になったユウを保健室に連れていかない方が気が悪かった。徐々に顔色は良くなってきている。髪色と同じような肌にピンク色が戻ってきた
綺麗にまとめあげられた髪型は女の子らしいとジャックは思った。彼女は自分の性別を隠さずにこのナイトレイヴンカレッジに通っている。初めて会った時は危機感が無さすぎかと思っていた。その危機感が無さすぎるを通り越し図太すぎる性格が周りの話題になってしまうような異例の女子生徒になるなんて誰が想像しただろう。骨のあるというか図太いからだろうか。いくらどうからかわれたりしても馬鹿にされても前を向いて自分のしたいようにするその芯の強さには見習うところがあった
それこそ友達として同じクラスの同級生として
だが時々思う。彼女が異性であることを生物学上違う女であることを
まとめられた髪からとりこぼされた髪の毛に少し触れる。普段そんなことなんて一切しないが今起きていたらどんな反応をするのかと想像してしまう
予鈴がなる。次の授業に行かなければならないがベッドの上でぐっすり寝ている彼女は起きるわけがないだろう。ジャックはもう一度彼女の顔を確認してその場を去った
「ジャックくん…。」
小声で呟かれた彼女の寝言に気づかないふりをして部屋から出るのだ
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